第45話・『soldier/Ⅹ』全機が
旦那様から、旦那様が固有スキル『thousand swords』で呼び出したデュラハン達が騎乗している8本脚の軍馬、スレイプニルに乗って、今回、私達が護衛依頼を受けているキャラバン隊の次の立ち寄り予定地である街、ブラストに到着したのは、天空の月が真上に差し掛かる少し前だった。
この街に到着した時には、既に外壁に作られている門は閉じられていたが、見張り櫓の上で外壁の外を警戒していた街の衛兵に事情を話し、どうにか街の中に入る事は出来たが、何度も衛兵の隊長らしき人物に話をしても、
「お嬢さん、急いでブラストまで山賊達の引き取りを要請しに来た様だが、良く女二人でこの街に来れたのう? しかし、折角ブラストまで来て悪いが、この時間だと、もう領主様はお休みになられている。
領主様への取次は早くても明日の朝になるのではないかな?
第一、その山賊達はもう捕らえておるのだろう? ならば、そんなに急がなくても良いのではないのかな? それに、このブラストを守っている兵士達も、ワイバーンやリザードマン達の襲撃騒ぎで、近隣の村々を巡回して回っているから、そのお嬢様達が言う山賊達を引き取りに行きたくとも、兵士の数が足りん、そこでじゃが、少々金は掛かるが冒険者ギルドに依頼を出して、このブラストまで山賊達を護送する依頼を出してみてはどうか? この街の冒険者ギルドは、この道を真っすぐ行った先に在る。
一人衛兵を案内に付けるから、冒険者ギルドに行ってみると良い、後、お嬢さん達は今夜の寝床はどうする? 何なら宿も案内させよう。
おいお前、このお嬢さん達を冒険者ギルドに案内した後は、俺達がこんな時にはいつもお世話になっている宿へ案内してやれ!」
「はい隊長、あの宿ですね?」
「ああ、あの宿だ」と言う事で、ポプラとラムネはブラストの街の冒険者ギルドまで案内されたのだが、
「お客様からの依頼は、明日の朝一番で掲示板へと掲示させて頂きますが、明日の昼までにお嬢さん達が望む人数の冒険者が集まるかどうか?・・・」
「たった10人程の冒険者が集まらない程に、この街に滞在している冒険者の数は少ないのですか?」
「え~っと、アルバ王国の王都であるトロの冒険者ギルドで、以前は受付嬢をされていたポプラさんでしたっけ? 正直に言ってこの街に滞在中の冒険者の数は決して少なくは無いです。
この街道沿いでは、この街、ブラストは歴史も古くて、交易の要所として栄えていましたし、街自体も一番大きい街ですから、そりゃあ多くの冒険者も集まって来ますからね、冒険者ギルトの受付嬢をされていたならば、貴女も冒険者が集まらない理由は分かるのでは? 正直な話し、冒険者は旨味の無い依頼は受けたがりません。
その位は貴女もご存じのハズでは? まあ私も仕事ですからお嬢さん達からの依頼表は明日の朝一番で掲示板には張り出しておきますが・・・」
「ポプラ、ココでの用はもう済んだ、早く今夜の宿に移動して、私達も休もう。
でないと明日が大変な事になる。」
「そうですねラムネさん、では依頼表の手続きをお願いします。」と言ってポプラは、夜勤番のギルド職員に依頼表を渡すと、受付カウンターから離れた。
「全く、あの夜勤番のギルド職員の対応って何なの? こっちは仕事を依頼しに来た客なのよ! そりゃあ夜中に依頼を出しに来た私達も私達だけれど、もう少し対応ってものがあるでしょ! 第一、夜中に依頼しに来るって、それだけ緊急性が有るから依頼に来る訳で・・・」
「まあまあポプラ、お上品なアルバ王国の王都のギルド本部と比べると、地方の冒険者ギルトの職員なんてあんなもんだよ! 逆に、私達を嫌らしい目付きで見たり、嫌らしい言動を取ったりしなかっただけで上等な部類の職員だよ、」と、いまだにブラストの冒険者ギルト職員の対応に納得の行かないポプラを宥めながら歩くラムネだったが、少し気に成る事が有ったので、自分達の前を歩く衛兵に聞いてみる事にした。
「なあ衛兵さん、あの隊長さんが紹介するって言ってた宿って、まだ着かないのかい?」
「ああ、もう少し先だよウサギ耳のお嬢さん♪ お嬢さんは、この寂しい場所を歩くのが怖いのかい? 宿が有る場所が場所だから、隊長もお嬢さん達だけで行かせるのを心配して俺を案内に付かせたんだ、まあ大人しく付いて来いよ♪」と言って再び案内役の衛兵が歩き始めたので、仕方なくポプラとラムネは衛兵の後を付いて歩く、じつは二人とも結構くたくたで、早く宿に入って休みたかったのだ、それから暫く歩くと、
「お嬢さん達、今夜の宿はあそこに見える宿だよ」と、ポプラ達を案内して来た衛兵が、少し先に見える宿を指差し、『先に行って宿の女将に話を通して来るから』と言って走って宿に入って行く、その後を追ってポプラ達が宿に入ったが、その場所はとても宿などと呼べる様な場所では無かった。
「ようお嬢さん達、俺はこの街の冒険者達を仕切っているザンギって者だ! この衛兵から聞いたが、お嬢さん達は捕らえた山賊をこの街まで護送する為に人手がほしいんだろう? 」
「いえ、結構です! それに私達は別の宿に泊まる事にしますので失礼します。」と、ポプラがザンギと言う男の顔を見た途端に厳しい表情となり、踵を返して外に出ようとしたら、別の冒険者達に入口のドアを塞がれてしまった。
「どうしたんだいお嬢さん、何故俺達から逃げようとする?」
「ザンギ、このお嬢さんは元トロの冒険者ギルトの職員で、ギルド本部の受付嬢をしてたらしいから、お前の悪事は色々と知っているんじゃあないのかい?」とここまでポプラとラムネを案内して来た衛兵が、嫌らしい顏をしながらザンギに話し掛ける。
「ポプラはこの男の事を知っているのかい?」
「ええ、元Aランク冒険者で、とある依頼で行った先の村で、その村に住む若い女性達以外の全員の腹を裂いて内臓を引きずり出して殺した後、女性のお腹にナイフを突き刺しながら犯した男が、今はザンギと名乗っている様だけれど、ラムネも名前ぐらいは知っているんじゃないかな『虎頭のザンギエフ』と言う名前は?」
「ああ、今でもトロの酒場で語り継がれているあのザンギエフだね!」と余裕が有る様な口振りのラムネだったが、内心では物凄く焦っていた。
今の自分が、元だとは言えAランク冒険者と互角に渡り合い、尚且つポプラまで守り切る自身が無かったのだ、
「おい、お前達! 俺はこのウサギ耳の女と楽しむことにするから、その女は好きに犯して良いぜ!」と言い、自分の獲物である巨大な戦斧を肩に担いでラムネに歩み寄るザンギエフ・・・ いや今はザンギと名乗っている虎頭の獣人が、これから始まる快楽に期待して口元から涎を垂らしながらラムネの前に立ち、戦斧を構える。
逆にラムネはポプラの事は気に成るが、目の前の虎頭の獣人から目が離せずにいた。
目を離した途端、ラムネの胴体はこの男に真っ二つにされそうで怖かったのだ、その間にもポプラが冒険者達に襲われて悲鳴を上げている・・・・
助けに行きたいのだが、動けない自分が恨めしかったが、次の瞬間、物凄い音と共に宿が半壊したと思ったら、ポプラは白髪の老紳士セバスの腕の中に居た。
衣服を剝ぎ取られて全裸にされていたポプラに、セバスが着ていたコートを羽織らせて高機動強襲型エアバイクまで連れて行くと、エアバイク後部のボックス内にポプラを避難させ、今度はザンギと対峙していたラムネに近付くと、
「さあラムネ様、ポプラ様は救護しましたので、ここは一時ジン様の所に帰りましょう。
ジン様もお二人の事をかなり心配しておいででしたので、早く帰って安心させてあげましょう。」
「横からしゃしゃり出て来て、俺の家を半壊させた上に、何を勝手に話を進めやがる爺! 俺様の戦斧で真っ二つにしてやるからそこで大人しくしてろや~!」と、ザンギが巨大な戦斧をセバスに向けて渾身の力で振り下ろしたが、肝心のセバスは涼しい顔でザンギの虎頭を見上げている。
「そんなに短気だと、女性に持てませんよ?」と言いながら、左手に持った仕込み杖でザンギの戦斧の重い一撃を、涼しい顔をして受けていた。
「じ・・・ 爺・・・ お前は化け物か?」
「失礼ですね貴方、私はジン様にお仕えする普通の執事です。」と言って、ラムネを抱き抱えて高機動強襲型エアバイクまで連れて行くと、ポプラの時と同じ様にエアバイク後部のボックス内に避難させ、自分はエアバイクのハンドルを握り、空高くエアバイクを上昇させると、ジン達が居る場所に向けて飛び去った。
ただ、ポプラとラムネをジンの所に連れ帰ってからが大変だった。
予め、山賊達に囚われて居た人達には話を聞いていはたが、ブラストの領主が行っている行為は残虐非道以外の何物でも無かったが、それ以上に、セバスが連れ帰って来たポプラの姿を見たジンが切れた。
ジンは黙って固有スキルである『thousand swords』で『soldier/Ⅹ』を呼び出し始めたが、500体呼び出しても1000体呼び出しても『soldier/Ⅹ』は出て来る。
しかも出て来る端から『soldier/Ⅹ』全機が、ブラストに向けて進軍している様にも見えた。




