第39話・商人の娘のメルクの〇〇が・・・
商人の娘のメルクがふと気付くと、何故かは知らないが彼女は地下の疑似闘技場に立っていた。
『確か、さっきまでジン君のクラウンの人で、確かポプラと言う名の女性の人と、ギルド本部の商談室を使って、今回の仕事の話を持ち掛けてたよね? あれ?! 目の前に居るのは、甘ちゃんのジン君じゃない・・・ これはラッキー? 今回も上手くジン君を使って儲けさせて貰うチャンスよね♪』とポジティブに思考を切り替えて、
「ジン君、会いたかったのよ~♪ 今回はジン君にも儲け話を持って来てあげたんだよ~♪ 今回はワイバーンを10体ほど納品するだけの仕事なんだよ♪ ジン君の固有スキルが有ればワイバーンの10体や20体なんて楽勝だよね? もう先方には話を付けて来ているから、早ければ早いほど良いんだよ、そうそう、ワイバーンの解体なんかをする手数料は発生するけど、それでも割の良い仕事だよ? 勿論受けるよね?」と話し掛けたが、
「・・・・」
「ねえジン君、私の話しを聞いてる?」
「良い所に現れたな商人の娘のメルク、余も其の方に聞きたい事が有ったのだ」
「えっ、もしかして私をココに呼んだのってジン君?」
「ああ、その認識で間違い無いぞ」
「ねえジン君、この前、アルバ王国のトロから、ココまで一緒に旅した時とは何故かは知らないけど、話し方が違わないかな? ちょっと一般市民が使う喋り方とは違う喋り方になってて、可笑しいよ??」
「セバス」
「ハッ! 何でございましょうジーンサイザー様」
「セバス、この者は余の喋り方が可笑しいと申しておるが、誠か?」
「いえ、何もジーンサイザー様の喋り方に可笑しい所は御座いません。」
「そうか?」
「はい、ジーンサイザー様」
「では娘よ、余の喋り方の何処が可笑しいと思うのか、余に説明してみるが良い」
「え~っとね、ジン君、ジン君の喋り方が、何と言えば良いかな? え~っと、貴族の偉い人の喋り方?みたいなんだけれど・・・ 例えば、前は自分の事を僕って言ってたけど、今は余って言ってるし、私の事も、さっきは其の方って呼んでたし・・・」
「セバス、やはりこの娘に可笑しいと言われてしまったぞ?」
「八ッ!ジーンサイザー様、娘、このお方に失礼な事を申すな! このお方は、ジーンサイザー・フォン・アルバトロス様、そしてアルバ王国の王位継承権3位のお方だ、例え知り合いだとしても、これ以上の無礼は即切り捨てるぞ、心してジーンサイザー様のご下問にお答えするが良い」
「はあ?! ジン君がアルバ王国の王位継承権3位? って事はアルバ王国の王族の人? えっ何で? 私、そんな事は聞いて無いし、知らないよ!?」
「娘、其の方が知らなくとも、其の方の父親である貿易都市国家フロト最高評議会理事のテラノ殿は、余の素性は知っておったぞ、其の方は父親から何も言われていなかったのか?」
確かに父からは『ジン君に対しては冒険者だからと言って、メトの冒険者達に対して、いつもお前が通している様な無茶な要求は、絶対にするな!』と釘を刺されていた気がする。
ただ、ジン君の喋り方と物腰が柔らかいものだから、ついつい調子に乗って、色々と無茶振りもしたし、酷い扱いもして、今の今まで都合の良い道具としてでしか見ていなかった・・・
「ジーンサイザー様、此れよりは、ジーンサイザー様の忠実な下僕である。このセバスにお任せ頂きたく」
「うむ、全てはセバスに任せる」
「八ッ! ではジーンサイザー様に成り代わりまして、娘よ、お前には色々と聞きたい事が有るのだが?」
「はい・・・」とこの時点で既に、メルクの顔からは血の気が引いて青くなって来ている。
「娘よ、お前はジーンサイザー様がお持ちの固有スキル『thousand swords』を、簡単に他の商人達に話して回ったな? 何故じゃ? あのお力は一部の王族にしか知られていなかった国家機密じゃ、それも大勢の商人達の前で使って見せさせたよな? 」
「そのスキルがそんなに大事だったら、使わなければ良かったじゃないですか」
「ああ、ジーンサイザー様も最初は固辞されていたが、娘、お前はジーンサイザー様に何と言ったかのう?」
「えっ? 覚えてない・・・(汗」
「覚えてないか? ならば、このセバスが教えてやろう。
確か『トロ冒険者は、自分のスキルを使って仕事をするのがそんなに嫌なの? だったら依頼料は払えないし、もしも被害がでたら全部弁償して貰う上に、貴方を紹介した上に、その保証人にまで成ったトロのギルド総長様にも、10倍ぐらいの損害賠償金を請求しないとね~♪』じゃったかのう?
娘よ! 忘れておる様じゃから、このセバスが教えてやろうぞ、例え父親が貿易都市国家フロト最高評議会理事のテラノ殿であろうと、お前の身分は『商人の娘』でしかない、その商人の娘が、我が主であるジーンサイザー様以外にも、その従兄弟であるジェスター様も愚弄するか? 今やアルバ王国の属国と成った国の商人の娘が、主国であるアルバ王国の王族を愚弄すればどうなるか?は、この国の子供でも分かる話しだぞ」と言ってセバスが合図すると、ピカピカに磨かれた銀のフルメタルアーマーを着込んだ兵士達が、あっと言う間にメルクを取り押さえたかと思えば、1体の兵士が長い長剣を腰からスラリと引き抜くと、メルクの首筋にその刃を当てて構えた。
・・・・ まあ今回の筋書きでは、此処で商人の娘であるメルクの父親のテラノ氏が、
『どうか娘の命だけは~~~~!』って感じて疑似闘技場に入って来て、当のメルクに色々と言って聞かせる予定で、当のテラノ氏も意外と乗り乗りで、疑似闘技場のドアの前で出番を待っていたのだが、肝心のメルクが、首筋に兵士が構えた長剣が触れた途端に、気絶してしまったのだった・・・
そうそう、今回、僕の執事として出て来たセバス!
実は、このセバスと呼ばれた白髪の老執事は、シオン経由で『月』のメイド達を統括している『00号』に頼んで特別に作って貰った執事タイプの機械人形で、元は顔も目の部分らしき場所と口らしき場所にスリットだけが入ったのっぺりとした顔だったのだが、この機械人形に特別製の仕込み杖を持たせてから、僕の空間収納魔法で収納して、再度『thousand swords』で召喚してみたら、超渋い白髪の老執事姿で出て来た時にはマジでビックリしたが、その性能は、さらに僕の予想を超えて半端では無かった。
あの、親父を一瞬でポリゴン姿にしてしまった背中に羽を生やした真っ白なフルアーマー姿のsoldierと、見た感じが完全にロボット兵にしか見えない黒いsoldierの2体と、全くの互角な戦闘を熟すのだ、しかも相手はフルアーマー姿だが、セバスと名付けた白髪の老執事は、甲冑姿に成る事も無く執事の正装である燕尾服に、白い手袋をはいた両手には、仕込み杖に偽装されていた特別製の細身の双剣を巧みに操って戦っていた。
そう言えば、2体のsoldierの額にも『Ⅱ』とマーキングされていたけれども、老執事姿のsoldierはに、白い手袋で隠れて見えないけれど、左手の甲に『∑/Ⅱ』とマーキングされていた。
そして、今後は本当に僕の執事として色々と手助けしてくれる事になった。
追伸・あの一件以来、メルクは自室に籠ってしまったらしいが、商売と旅の神のメルク曰く、
『あの子がそんなに長い時間落ち込んでいる訳が無いでしょ? もう少ししたら、またお金儲けの為に色々と動き始めるだろうから、そんなに心配しなくても大丈夫よ!』との事だったが、出来れば僕は二度と関わり合いには成りたくないと切に願っている。




