第33話・ペコのカエルパンチで、冒険者が・・・
シオンに『日が昇る3時間前に起こしてね』と頼んでいた僕が、既に朝食が並べられているテーブルに着くと、いつもなら最後までヒルドに抱き着かれてベッドの中に居るペコが、椅子の上でアノ肉屋の腸詰を美味そうに食べていた。
「おはようペコ」
「ゲコ、ゲコゲコ!(おう、おはよう!)」
「シオンから聞いたけど、夜はお疲れ様」
「ゲコ? ゲコゲコゲコ、ゲコゲコ(聞いたのか? でも大した事はしてないぜ、ただ様子を見に行っただけだ)」
「それでも、皆が安心して朝まで寝れたんだから、ありがとう。」
「ゲコ、ゲ~コゲコ♪(なに、俺は大した事はしてないぜ♪)」と言いながらもペコは、ジンが差し出した腸詰に嬉しそうに食い付いている。
あの集団がその後どうなったのか?と言うと、シオンから報告を受けたジェスターが、国境警備兵団に指示を出して、亜空間魔法を使える宮廷魔術師を同道させた上で確保させたが、ただ対外的には国境警備兵団が『報告を受けて怪しい集団を確保しに出向いた。』と言う事に成っていたので、その怪しい集団に対しては一応の事情聴取はしたものの、事情聴取が終わった者から順次解放する事には成ってしまったのだが、その集団の幹部らしき人物達には、情報を収集する目的で王宮の『暗部』を張り付けさせたが、意外とあっさりと怪しい集団の身元が割れてしまい、その不用心さに逆に心配に成ってジェスターが呆れてしまうほどだった。
その後はトラブルらしきトラブルも無く、貿易都市国家フロトの首都であるメトに在る冒険者ギルドで、依頼完遂の手続きを取った後、ジン達はメトで一番だと言われている宿に部屋を取ったのだが、親父のダンが一緒に行動していた事も有り、メトに住む市民達には恐々と距離を取られてしまっていたが、ダンがメトの最高議会でぶち上げた演説の内容を思い起こせば、当然と言えば当然の事なんだろうが、気軽にレストランすら入れないのには困った。
翌日は、メトの冒険者ギルドの様子も知りたいし、先ずどんな感じの依頼が有るのか?も知りたかったし、メルクに依頼完了時に確認書にサインをして貰った書類を、昨日のうちにメトのギルドに提出していたので、今日はその依頼料を受け取りに来たのだった。
ギルドの受付で依頼料を受け取った後、先ずはギルド内に常設している食堂で簡単な『依頼完了の祝杯』を挙げていると、
「よう、そこの女を大勢引き連れたチビ、」と、酒臭い匂いをさせた冒険者が声を掛けて来たが、幸いにして僕の名前は『チビ』と言う名前では無いので、その男の事は無視をする事にしたが、なおもしつこく絡んで来るが、僕はチビと言う名前では無いので、再び無視、無視!
「おい! お前! お前の事だよチビ! おい俺様が折角話し掛けてやったのに無視するたあ良い度胸だな! この辺じゃあ見ない顔だが、最近になってこのメトに来たのか? 」と僕が聞こえて無い振りをして無視し続けていると、その男は苛立ちながら僕が座っている椅子の脚を蹴って、なおも強引に話し掛けて来た。
まあ冒険者ギルドの食堂兼酒場で良く有る『恒例行事』と言うか? まあ『暇な冒険者の暇つぶし or 暇な冒険者達の娯楽』と言う名の恫喝&恐喝なのだが、こんな連中は相手にしないのが一番なので、一度はその冒険者の顔は見たが、再び無視すると案の定、
「おい! お前、俺様が親切にも声を掛けてやっているのに、無視するとは良い度胸だな!」と騒いでいるが、再び聞こえていない振りをしながら、取り敢えず殺気を放ち始めた彼女達に視線を向けると、
ポプラの蟀谷には『#マーク』が赤い文字で浮き上がっている幻影が見えている気がする。
トロのギルド本部で、何度か?マナーの悪い冒険者達にポプラが説教している所を見ているので、この酒臭い冒険者の末路を想像して、背筋に寒気が走って身震いしそうになる。
バーニャは、可愛い顔の眉間と鼻に皺を寄せて、鼻を摘まんで睨んでる。
うんうん、この冒険者、色々と臭いよね~ その気持ち分かるよ!
ラタニーとラムネは、面白そうな顔をしている。
ああ、貴女達は退屈してそうだもんね~ でも絶対に火に油を注ぐ様な真似をしないでね!
シオンは、完全に表情が無くなって、能面の様な顔になっている。
シオンもお願いだから暴れないでね! はっきり言ってシオンの戦闘能力って把握して無いから怖いんです・・・(汗
最後はヒルドだが、食堂で注文した軽食セットのスクランブルエッグを、5歳児の幼女モードで『我関せず』の体で食べている。
もしヒルドが切れたら、このメトの街は一瞬で火の海になるのは確実なので、出来るだけ大人しくしていて欲しいので、ヒルドはコレで良いと安心したが、そうは問屋が卸さなかった様で、僕に絡んで来た冒険者が、
「おいおい、ガキを連れて冒険者ギルドに来て、ここはガキの遊び場じゃあ無いんだ! お前達は冒険者の仕事を舐めてるのか?」と言いながらその冒険者がヒルドが持っていたフォークを叩き落とした瞬間、
酒臭い冒険者の男は、食堂の天井に張り付いていた。
ヒルドの手が叩かれた瞬間、ヒルドの膝の上で焼かれた腸詰を狙っていたペコが、その筋肉の塊だとも言えるソノ舌で、冒険者を殴り飛ばしていたのだ、
一瞬、食堂兼酒場内に居た冒険者達は何が起こったのか?が理解出来なかった様子だったが、天井に張り付いていた酒臭い冒険者が、ベタっと鈍い音を立てて落下して来たのを見て、状況を理解した様で、先ずは酒臭い冒険者の仲間らしき者達が、
「お前らッ! メトのギルド本部でこんな事して唯で済むと思うなよ! この仕打ちの代償は、お前達の体で払って貰おうかぁ?」
「おい小僧、お前はさっき受付で受け取った金貨を、全部俺達に寄越しなッ!」
やはりポプラ達女性陣と、先ほど僕が受付で受け取った金貨が目当てだった様で、誰もペコに天井まで殴り飛ばされた酒臭い冒険者の容態を気にする者も無く、逆に『金と女』に根が眩んだ男達が、嫌らしい顏をしながら席を立って近寄って来る。
「ほ~う、メトの冒険者達は、ギルドからの依頼も満足に熟す事も出来ない癖に、幼女には簡単に手を出すわ、恐喝や恫喝には簡単に手を出すんだ~ 屑の集まりしか居ないんだニャ~ あんた達なんて『家のジン』には絶対に勝てないのにニャ~ お前達はジンに負けて赤っ恥をかくだけなんだから、大人しくミルクでも飲んどくニャ♪」
あっ、ラタニーの語尾に『ニャ』が付き始めたよ! 完全にメトの冒険者相手に遊ぶ気だな・・・ 嬉しそうに悪い笑顔に成ってる。・・・(汗
「ラタニー、余りメトの冒険者を悪く言ってはダメよ! メトを拠点にして活動している優秀な冒険者さん達は、その全員が、貿易路の確保の為にワイバーンの脅威にも負けず、商人達のキャラバン隊の護衛依頼を『文字通り自分の達の命』を掛けて、必死に成って頑張ってるわよ、この酒場に残っている冒険者達みたいに『ワイバーンからの護衛依頼を受けるのが怖い』のを誤魔化す様に、朝からお金も無いのに酒盛している上に、明らかに他所から来たと分かる冒険者にウザい絡みして『憂さを晴らす』事しか出来ない、クズ冒険者さん達なんかと一緒にしたら、必死に成って頑張っている真面な冒険者さん達が可哀そうよ! それにクズ冒険者だと言う証拠に、幼い見た目の幼女にしか手が出せないクズ達なんですもの!」と、元ギルド本部の受付嬢・・・ いや、今もギルド本部の事務方の仕事をしているので、ギルド本部の職員として色々と思う事が有ったのだろうが、ポプラにとってはヒルドに対して暴力を振るわれた事に対して物凄く起こっている様に見えた。
バーニャとラムネなんか、僕の収納魔法の中に収納されている自分たちの得物を出せと、僕に向かって手をクイクイと動かしてゼスチャーしている。
シオンさん、完全に気配を消してしまってまよ? 何で、明らかに『月』で作った武器だと思える『重機関銃』を軽々とその手に持っているのですか? しかも何で脚を開いて重心を落として、射撃体勢を取って構えているのですか? そんなの撃ったら、ココに居るクズ冒険者達が一瞬で肉片になっちゃうからね? 絶対に撃たないでね? ねッ!?




