第32話・夜盗に偽装した者達の結末は・・・
大きな月が真上に3っ上がり、ジン達が野営している直ぐ横の『宿場町』に住む住人や、旅の宿泊客達の皆が寝静まった頃、その宿場町から少し距離を置いた場所に在る少し小高い丘の上では、様々な装備で身を包んだ夜盗らしき連中が集まり始めていた。
「隊長、5番隊全員が到着しました。」
「おい、今の俺は隊長ではない、夜盗の盗賊の頭だ! 絶対に俺を隊長などと呼ぶな! 良いな分ったな? 到着した5番隊の連中にも徹底させとけよ! それと、偵察に行った2番隊の連中からの報告はどうなっている?」
「八ッ! 2番隊からの報告に依りますと、目標で有る・・・」
と、丘の上に集結しつつある盗賊らしき連中の『頭』を自称している男が、部下らしき男からの報告を受けていた。
そして、その自称『頭』が、集結した仲間達に向かって、
「皆、そろそろ狩の刻限だ! 魔術師隊、全員に隠ぺい魔法と無音魔法を掛ける準備をしろ! それと、ターゲット達は全員確保、多少手足が無くても構わん、しかしくれぐれも殺すなよ! その他の連中は殺しても良し、荷には全て火を放て、良いな魔術師、では作戦行動に移る。 魔術師隊、隠ぺい魔法と続いて無音魔法を発動させろ! 作戦開始! 行くぞ~!」
「「「八ッ!」」」
この号令の数刻後、彼らは信じられない現実を突き付けられて怯える事になるのだが、まだ、その事を知る者は誰も居なかったが、彼らが目標に近づくに連れ、平原に生息しているカエル達が妙にゲロゲロと鳴き始めたが、そんな事で作戦に支障が出るとは思っも居なかった彼らは、カエルが鳴くのは普通の事だと考えて、目標の事だけに集中した結果、余りにも呆気なく全員が無傷で捕縛されてしまう事になる。
盗賊に偽装した者達が移動を開始した頃、宿場町のとある宿の一室でも動きは有った。
「おい、作戦は上手く行っているのだろうな?」
「はい、閣下、先ほど奴らが行動を開始したと『草』から報告が入りました。」
「それなら問題は無いが、判っているのだろな? もしこの作戦が失敗したり、万が一我らが関わっている事がバレでもしたら、我々はかなり不利な状況・・・ いや、下手したら破滅へと追いやられるかもしれんのだぞ!」
「ご心配なく閣下、この作戦はあくまでも『盗賊達がキャラバン隊を狙った襲撃』、しかも彼らには本当の襲撃の目的は知らせてはいませんし、いくらBランク冒険者や召喚士が居るパーティーだとしても『盗賊達』は戦闘経験豊富な一個中隊の集団、単調な動きしか出来ない100体程度のリビングアーマー程度、彼らにしてみれば大した障害も無いでしょうし、今回は魔術師隊も合流させて居ますので、あの程度の数で敵う訳も有りませんし、仮に宿場町の衛兵に応援を頼んだとしても、今夜は宿場町の衛兵達にたっぷりと酒を振舞っております。我々の邪魔をするであろう奴らも、襲撃の知らせが入った時には、既に後の祭りかと・・・」
「そうか・・・ お前がそう言うなら任せたぞ」
「はい、お任せを閣下」
そんな、如何にも怪しい連中の思惑の中、ジンは、シオンが準備した天幕の中のキングサイズの皆と一緒にベッドで爆睡していた。
そして、爆睡している皆の中で、微かな『不穏な気配』に気付いてベッドから這い出して来たのは、シオンでは無く、さっきまでヒルドに抱き枕にされて涎塗れになっていた『森ガエル』のペコだった。
因みに、シオンは既に起きていて天幕の竈でお湯を沸かしていました。
「あら? ペコではありませんか、もしかして貴方もコノ嫌な気配に気付きましたか?」
「ゲコ、ゲコゲコゲ~コ、ゲコゲコ・・・ ゲコ、ゲコ、ゲ~~~コ!(ああ、平原ガエル達が知らせてくれた・・・ 全く、あんまり騒がしくして、嬢ちゃんが起きたらどうするつもりだよ!)」
「そうですね、ヒルド様は寝起きが良いとは言えませんから・・・ 困りました。 この辺りが焼け野原に成らなければ良いのですが、朝食の準備が大変に成ってしまいます。」
「ゲコ・・・ ゲコゲコゲコゲ~コ、ゲコ、ゲコゲコ、ゲコ! (だな・・・ 俺も焼きガエルには成りたくは無いしな~ 仕方ない、嬢ちゃんが目を覚ます前にちょっと行って来て、奴らには静かにして貰って来るよ!)」
「はい、よろしくお願いします。アノ店の腸詰を用意して待ってますね。」
「ゲコ、ゲコゲコ!(ああ、行って来る!)」ってな感じで、ペコが草原に向かってペタペタと歩きだしたと思ったら、スンスンと辺りの匂いを嗅いで方向を確認すると、グッと身を縮め、ピョ~~~ン!と飛んで消えて行った。
ああ、我が家の可愛いペットのカエルさん、普段はピョンピョンと跳ねて移動するんでは無く、ペタペタと歩いて移動するんですよ~ でもカエルさんが本気でジャンプすると、軽く城壁を飛び越えたりする脚力を持ったりしてるんです。
その頃、少し離れた草原では、怪しい集団の一行が、何もない草原で転げ回って、何か?から必死に成って逃げていた。
何故、転げ回って逃げるなんて事に成っている状況なのか?と言うと・・・
突然、彼らが四方八方からネバネバした液体を大量に掛けられたと思ったら、目の前に、巨大な『草原ガエル』が出現したからだった。
この草原ガエル、通常サイズの『草原ガエル』ならば唯のカエルなのだが、時として異常進化する個体が出て来る事が有るのだが、この異常進化した個体が厄介で、過去に、とある戦場で双方が10万対10万の兵を動員した戦いが有ったのだが、その戦場に紛れ込んだ一匹の『平原ガエル』に依って、戦争どころでは無い状態に成った事がある。
何故?戦争どころでは無くなるのか?と言うと、理由は、その草原ガエルが吐き出す唾液に依って、全ての物質が『摩擦係数ゼロ』にされるからだ、装備している防具も衣服も、靴も靴下も下着まで全て『摩擦係数ゼロ』の唾液に依って脱がされてしまうのだ、まあ脱がされるだけならまだしも、立って歩く事も四つん這いに成って移動する事も出来なく成るのだ、しかも、この異常進化した個体の草原ガエルは、自分の身に危険を感じたり危害を加えられた場合、周囲に居る仲間を呼ぶ習性を持っている上に、摩擦係数ゼロの粘膜を身に纏ってしまうので物理攻撃が全く通用しない。
では、物理攻撃がダメなら『魔法で攻撃をすれば良いのでは?』と思うだろうが、この草原ガエルが厄介な点は、肝心な魔法攻撃に対して『魔法攻撃無効スキル』を持っている草原ガエルが一定数以上居ると言う事なんだが、この厄介な草原ガエルに対しても対処方が無い訳では無い、使用出来る魔術師は少ないが、生物も生きたまま収納する事が出来る空間魔法系の『亜空間収納魔法』で収納してしまうか? 上位転移魔法が使える魔術師が、何処か別の場所に草原ガエルを転移させるしか無いが、どちらにしても異常進化した草原ガエルを発見した場合は、静かにその場を離れるのが一番の対処方である。
もし、不幸にも2匹以上居た場合は、変に刺激しないで静かにその場に座り込むのが一番である。
彼ら『草原ガエル』は、基本的に静かに過ごすのが好きな連中で、攻撃を受けない限りは絶対に危害を加えては来ないからだ、では何故彼らが草原ガエルに襲われたのか?と言うと、魔術師が掛けた『隠ぺい魔法』と『無音魔法』で、気配を察知出来なかった通常種の草原ガエルが、周りに点在していた仲間達に危険を知らせる為のメッセージを発してゲロゲロと鳴き始めた事が切っ掛けだった。
そして、ペコが怪しい気配がする集団が居る場所に着いた時には、その場はカオスな空間に成っていた。
怪しい男達が全裸で転げ回っているのだ、これが若い女性達なら・・・ とも思ったが、取り敢えずペコは傍にいた同類の親戚に事情を聞いて見る事にした。
ああ、何故ペコが普通に動けるのか?と言うと、草原ガエルは森ガエルが森から草原に出て行ったカエルの子孫であり、近親種と言う事も有るが、ペコ自身が纏っている体液が草原ガエルの体液を弾いているので、摩擦係数ゼロ現象が発生しないのである。
早い話し、油が水を弾く現象と同じ事が起こっているのである。
「よう草原にすむ親戚」
「おお森の親戚なんだな~ 珍しい場所に居るんだな~ 」
「この騒ぎは何だ?」
「ああ俺達が『夜の散歩』を楽しんでたら、変な連中が現れてな~ 一応は『邪魔』って警告したんだな~ 」
「ああ、それでか・・・」
「そうなんだな~ 今夜は月が三つも出てる夜なんだな~ 散歩の夜なんだな~♪」と、ペコよりも少し大きな雄のカエルがのほほんと月を見上げながら言う。
ペコも釣られて月を見上げると、綺麗な黒と淡い青と赤い三つの月が夜空に浮かんでいた。
草原ガエル達にとっては、番を探すのに条件が良い夜だったのだ、そんな夜を無粋な連中が邪魔をしたのだから、当然の結果と言えば当然の結果なのだが、この惨状はペコからしても少し残酷な気もしない感じではあったが、状況が、無音魔法の効果で『大勢の男達が全裸で、只々のた打ち回っている事しか分からないカオスな状態』に成っている事と、取り敢えず自分達に被害は及びそうも無い事が分かったので、『嬢ちゃんが、寝起きで暴れる様な事態には成りそうもないな・・・ 』と独り言を零すと、
「またな草原にすむ親戚」
「森の親戚、またなんだな~ 」とお互いに軽く挨拶を済ませると、ペコは皆が居る場所に向けて鼻先を向けると、グッと身を縮めると、次の瞬間には物凄い勢いで跳躍して飛んで行く、その飛んで行くペコの姿を草原ガエルは静かに見送っていた。




