第26話・クロワッサンと、超弩級戦艦な女神
顔を洗ってテーブルに着くと、シオンが透かさず僕の前にカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグとサラダが乗った皿と、ジャガイモのスープとアルバ王国では珍しい『クロワッサン』が入ったバケットを並べたので、無言でシオンを見ると、小声で、
「旦那様がお好きだと伺いましたので、『月』から酵母を送って貰いました。 後、コレも。」と微笑むと、シオンがバターとベリージャムを差し出して来たのを見て、喜びと懐かしさが混じり合った複雑な感情になり、無意識のうちにシオンを抱きしめていた。
焼きたてのクロワッサンを手に取って、この世界では初めて嗅ぐ匂いだが、とても懐かしい匂いを胸いっぱいに吸い込んで、先ずはクロワッサンが温かいうちに少しちぎり、バターを塗って口に入れると、『ン〜〜〜〜〜!』声にならない歓喜の唸り声が出た。
僕が歓喜の唸り声をあげたのを見て、バーニャとラタニーが興味深々にバケットの中のクロワッサンを見つめる。
「「・・・・・・」」
二人からの無言の圧が強すぎる・・・(汗
「食べたいの?」
「私も食べて良いのかニャ?」
「・・・(食べたい、興味ある)」
「シオン?」
「はい、実は酵母自体の量が未だ少ないので、今日の所は、旦那様にお出ししている数だけしか作れませんでしたが、来週ぐらいには皆様がお腹いっぱい食べても残る程には作れるかと? 但し、バーニャ様はさほど心配は有りませんが、ラタニー様は色々と好奇心が刺激されるとは思いますが、貴女様はその『好奇心』を抑えられますか? それが無理なら、この先、旦那様とご一緒にお食事される事は無理だとお思い下さい。」
「そ・・・ それ程の事なの?・・・ 」とシオンの言葉にビビったラタニー猫耳がペタリと伏せられたが、
「・・・(私、心配無い、食べたい)」と、物凄い熱意でバーニャがシオンを見つめる。
「ではバーニャ様」と手渡されたクロワッサンの匂いを嗅いだ後、パクリとバーニャが一口齧ってモグモグと咀嚼した途端、
「ン 〜〜〜〜〜!!(!"#$%&')」と、やはりバーニャも声えに成らない叫び声をあげる。
それを見たラタニーが、ゴクリと喉を鳴らしてバーニャが恍惚とする顔を凝視して、目を離さなく成ったが、バーニャがクロワッサンの最後の一欠けらを口に入れ、ゆっくりと味わう様に咀嚼した後、両手を組んで、まるで天にでも祈るかの様に恍惚とした表情をしているのを見て、
「バーニャ・・・ それほどなの?・・・」とバーニャの顔を覗き込んで聞いていたが、未だに恍惚とした表情をしているバーニャの瞳を覗き込むと、意を決した様に徐にシオンに向かって手を差し出すと、
「シオン! 私は尻尾に掛けて誓う。『私は、シオンが出す料理に対して絶対に好奇心は持たない!』と誓う。 だから私にも・・・ 」とシオンに向かって宣言した。
しかも、ここまでラタニーの語尾に『ニャ』が付いて無いのだ! それだけでもラタニーの本気度が窺えたのだった。
その後、ラタニーはシオンとの約束道りに『クロワッサンの秘密』に関しては無関心を貫いたが、別の意味で『探求心』を発揮してしまった様で、シオンが作る料理の『探求者』となっシオンの料理が好き過ぎてしまい、結果として、そこまで料理には関心が無かったラタニーが、料理『ヲタク』と成った瞬間でも有った。
この日はポプラの勤務が早番だった事も有り、お昼過ぎにはアパートに帰って来れると言う事だったので、現状で足りない物が沢山有る事だし、ポプラが帰宅したら全員で一緒に買い物に行く事になり、それまでは各々が自由に自分の部屋を片付けたりして、好きに時間を潰す事にして、僕はラタニーの部屋の廊下を挟んで反対側の部屋を『書斎』にでもしようとしてドアを開けると、そこには安楽椅子に座ってホットウイスキーが入ったグラスを手にしたお爺ちゃんが居た。
「お爺ちゃん、今日は何の御用かな?」
「ジンや、そんな露骨に年寄りを邪険に扱うで無い、それに『昨夜はずいぶんとお楽しみ』だった様じゃからのう。 さすがの儂でもお主に声を掛ける様な無粋な真似は様せなんだわい・・・」と言いながら、両の眉をひくひくと上下に動かしながらジンを揶揄おうとする神、それに対して無言で部屋のドアを閉じようとしたジンだったが、静かに主神のに佇む女神に気付いて一応は頭を下げた。
「冗談は置いておいて、今日来たのは、この者がどうしてもジンに会いたいと申してな、それで此処に連れて来たと言う訳じゃ、すまぬがこの者の話しをちぃとばかし聞いてくれんかのぅ?」
「この人の話しをですか?」
「そうじゃ」
「私、貿易都市国家フロトで『商売と旅』の神として崇められている『副神のメルク』と申します。今回は私の信徒達がジン様に対して色々と粗相をしでかした様で、誠に申し訳ございませんでした。」と女神が頭を垂れると、その豊かな胸も一緒にユサリと揺れた。
その揺れに目を奪われて釘付けになってしまうのを我慢しながら、チラリと横を見ると、悪い笑みをしながらジンを見ていた主神と目が合う。
「えぇっと・・・ 商売と旅の神のメルク様と申されましたでしょうか? 何もメルク様が私に謝罪をしなければならない様な事では・・・」
「いえ、私が教会関係者や、信徒達に十分な指導をしていれば、今回の様な卑劣な手段を用いて『金儲け』などしようとは思わなかった筈、全ては私の不徳と致す所です。」と、いまだに頭を下げたまま、頭を上げようとはしないので、再度、そのたわわに実った胸が、ユサリと激しく揺れて目の毒であるし、女神メルクの服装自体がキジの薄いローブ姿なので、色々と体の線が透けて見えてて・・・
「分かりました! メルク様が謝罪したいと言うお気持ちは痛いほどに分かりましたので、どうか頭を上げて下さい。」と頼み込んで、ようやく頭を上げてくれた女神メルクだったが、その後も塩梅が良くなかった。
女神メルクが、両手の指を胸の前で組んで何度も何度も『ありがとう』を連呼して来るのだ、まあ何故こんなに女神メルクが必死なのか?と言うと、今回の貿易都市国家フロトの悪行のせいで、どうも下位の竜種であるワイバーンやリザードマン達が、故意的にフロトの商人が雇っているキャラバンや行商人達を集中的に狙っている様で、それ自体も下位の竜種達が『どうも俺達の上位にいる竜が貿易都市国家を嫌っている様だ!』との集団認識が働いている様で、その事を知ったメルクは『数日前に、ブリュンヒルドがフロトの首都で騒いだのが原因のではないか?』との結論に達したらしく、主神にジンに会いたいと頼み込んだらしい、因みに、それまでのメルクの容姿は男性とも女性とも言えない、中性的な姿だつだが、今回、主神のアドバイスで今の姿に固定した様だった。
後々、厄介事の香りしかして来ないが・・・ この一件以来、女神メルクはジンの事を気に入ったのか?このアパートに良く遊びに来る様になる。
因みに、余談ではあるが女神メルクは、他の女性陣と比べても超弩級戦艦なバストを誇り、重力に負けて無い『Iカップ級』だと言う事が判明した。
昨日、この『アルバ・トロ物語』を読んで下さっている方が、PV集計で三桁を越えました!
皆様、本当にありがとうごさいます。
しかも、初のブックマークまで付いており、物凄く感激しました。
これを励みにして『1日1話更新』を継続出来ればと思っていますので、是非応援の程、宜しくお願いします。
by.八葉門希




