第24話・嗤うギルド総長、カエルを見て笑うヒルド
「さて、オオベン、貴様は今日は何用でギルド本部に来た?」
「いや、誤解だギルド総長・・・」
「オオベン、今の私は王族のジェスター・フォン・アルバトロスとして話しておる。立場を弁えよ!」
「ははあ・・・ 」
「喋らぬのか?オオベン、余は、何用で来たのか?と聞いておる。」
「ではそこの者に問おう。 貴様は何用でギルド本部に来て、如何なる権限で余の従兄弟であるジーンサイザーを愚弄した? ・・・ 暗部、この男は気絶してしまった様だ・・・ 手間だが王宮の地下牢にでも放り込んで置いてくれ、後でもう一度詰問するとしよう。 で、オオベン・・・ オオベン?・・・・ ダメだ、オオベンも気絶してしまったか? 魔法学園時代から、色々と威張っている割には根性の無い奴だったからな~ 」と、最初は物凄い勢いで『王者の気迫』スキルを全身に纏っていたジェス兄さんだったが、二人の情けない姿を見て、そのスキルも自然と解除されてしまった様だった。
ジェス兄さんが使った『王者の気迫』スキル、実はこのスキルが使えるのは、王族内でも現国王とジェス兄さんの二人だけだったりする。
邪魔な部外者が、暗部の者達に連れ行かれると、今度は控えめに談話室のドアがノックされ、ジン達が待っていた待ち人が姿を表した。
「ギルド総長様から、直々のお呼び出しとの事で参上しました。 奴隷商人のアントンです。本日はこのアントンに一体どの様なご用件でしょうか?」
「いや、アントン殿をお呼び出しした以上は、『奴隷契約』以外に用件は無いと思うが?」
「だとは思いましたが、やはり確認は必要かと思いまして」
「ああそうだな、確認は必要だな! で、本題だが、このギルド本部受付のポプラと、冒険者ジンとの奴隷契約を頼みたい。」
「承りました。ポプラ様と冒険者さんの奴隷契約ですね? それで、契約内容の方はどう成っていますでしょうか?」
「ああ、契約内容の証明書はコレだ、」と、ジェス兄さんが奴隷商人に契約書を手渡す。
「・・・ ギルド総長様、この契約内容は?・・・ この契約者様は本気なんですか?」
「どうも契約者本人は、大真面目に本気でそう考えいる様だな」
「では、このアントン、契約の神様から頂いたスキルで、目の前の若い2人を祝福させて頂きます。」
奴隷商人のアントンがそう言って、両手の手のひらに契約書を乗せ、上に向けて持ち上げてると、アントンの手の中で契約書が光り、小さなリングに姿を変えた。
そして、それを見たポプラが思いっきり慌てて
「ち、ちょっと待った〜〜〜! 聞いてない!聞いてない!! 何でソレなの? アントンさん、いつものゴツくてデカい首輪は?」と、ポプラが真っ赤な顔して奴隷商人に詰め寄る。
「おや? このアントン、困ってしまいましたよ〜! コレは確かに間違い無く『借金奴隷の契約者用の首輪』ですよ! 何か?私は間違いましたでしょうか? しかもコノ『薬指の首輪』は、間違いなく神様から祝福されてますし、第一に、この契約書もポプラさんの同意がない以上は、契約書としては機能しませんしねぇ〜 困りましたねぇ〜 」
「諦めて大人しく付けて貰え、ポプラ主席受付官」
「そうよ、ポプラちゃん! 羨ましいわ〜! 私も早く欲しいわ〜♫ 」と、ポプラは2人の上司と奴隷商人に冷やかされてしまう。
そして、暫くして談話室から出てきたポプラの右手の薬指に、契約の神の加護付きの『薬指の首輪』が嵌っているのを、他の受付嬢が発見して大騒ぎに成った。
余談だが、この『薬指の首輪』は確かに『借金奴隷』の証しではあるが、少し前からの風習で少しだけ意味合いが変わってしまい、最近では、恋人にプロポーズされた女性が結納を交わした後に、自分は『既婚予定者』だと言う事を回りの人達、特に男性達に証明する為に嵌めている事が多く、意外と独身女性達には憧れの『薬指の首輪』だったりもする。
そして、当のポプラはと言うと・・・
「ああポプラの事? ポプラったら『薬指の首輪』を眺めては、ポォーッとしてて、この数日は仕事に成って無かったわ〜 」と同僚の受付嬢達に言われて、ずいぶんと冷やかされた様だった。
その数日後、ヒルドがアパートに帰って来たのだが、知らない女性が四人とカエルが1匹増えている事に関して、一悶着あるか?とも思っていたが、当のヒルドは・・・
「はて? 旦那様は妾が『旦那様の側に人族の『雌』が増えた』ぐらいの事で簡単に怒るとでも? 妾は旦那様が『妾を正妻』だと認めて大切にして下さる限り、『人族の雌』が何匹増えても問題はありません。」と、大人モードで『本妻』の風格を醸し出していたが、ちょうど僕の足下近くを歩いていたペコを捕まえて、ヒルドに見せたら、
「旦那様!旦那様! こっ、コレは何んんんと言う生き物なのじゃ♫」とヒルドがペコを見た瞬間、大人モードから姿を解いて5歳児モードへと移行してしまうぐらいに、テンションが爆上がりだった様で、ヒルドに捕まってしまったペコも、猫のお嬢さんが遊びに来た時と、夕陽が落ちる間際のほんのひと時の時間さえ解放されれば、ヒルドのペットとして扱われても気にして無い様子だった。
そして、このお話しの時間軸が、貿易都市国家フロト最高議会の理事と理事長の7人を、アルバ王国へと呼び出した日の、ジンのアパートの庭での話しへと繋がります。
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「もう例の会議は始まっているのかな~?」とジンが王宮が在る方角の空を眺めながら呟くと、
「多分、時間的には始まっている頃かニャ~?」と猫族と人族のハーフで、Cランク冒険者で魔法使いのラタニーの言葉に続いて、
「・・・(ウンウン) 」と無言で頷き、同意の意思を示す銀髪の鬼人族とエルフのハーフで、Dランク冒険者で剣士のバーニャ、
「でも、良く貿易都市国家フロトの理事会の理事と理事長が全員揃ってトロまで来ましたよね?」と元冒険者ギルドの受付嬢で、今はギルド本部の受付業務と事務のも担当しているポプラ、
「まあフルサイズのヒルドが、貿易都市国家フロトの首都上空で、『貿易都市国家フロトの最高議会の理事と理事長に告げる! 今回の件の出来事を釈明しにトロまで出向いて来い! 返答は後日改めて来る使者に伝えよ! 因みに、否の場合は無条件で、私が貿易都市国家フロトの全てを劫火の炎で焼き尽くす事となるだろう。 既に神にも了承済である! 繰り返す・・・ 』なんて繰り返し宣言されたらね~ 僕なら大人しく従うか?地中深くに穴でも掘って、怖くて一生地上には出て来ないね、まあ今回の会談はヒルドの功績が一番だね!」とジンが、自分の膝の上に座る5歳児ぐらいの幼女の姿をしたヒルドの頭を撫でながら言うと、
「妾の功績が一番? 一番?」と、カエルのペコを抱えたヒルドが、満面の笑みでジンの顔を見上げ、
「旦那様、旦那様と皆様の分のお茶とお茶菓子の準備が出来ましたので、こちらのテーブルにお越し下さい。」と、庭にセットされているテーブルへとジン達を誘うシオン、
今日までジンのアパートをリノベーションする為に必要な資材を調達したり、折角リノベーションするなら少し増築して、大人数でも余裕がある間取りにしたいと、全員で色々な意見を出しあっていたのだった。
結果として、アパートの間取り自体は大きくは変更される事は無かったが、全体的に庭に向かってアパートを伸ばすと言うか?増築と言うか? とにかく全体的に部屋を広くする事が決まった。
間取りとして、1階は相変わらず風呂場の隣にダイニングキッチン、そしてその隣にリビングルーム、玄関を入って直ぐの右手側、トイレとお風呂場に続く部屋は、防具を脱いだり、脱いだ防具なんかを置いておくスペース、そして玄関を入って左側の部屋はメイド姿のシオンの部屋、2階は、玄関のエントランス横の階段を上って左手一番奥の、一番陽当りの良い部屋がジン、その隣の部屋はポプラとバーニャとラタニーが熾烈な獲得競争を繰り広げていたが、結果は鬼神化したバーニャの圧勝だったらしい(立ち会っていたヒルドのプレッシャーで、暴走しなかった・・・ いえ、暴走出来なかった様です。)、後で聞いた話しだと、大人バージョンのヒルドの立ち合いで、ギルド本部の地下訓練場を使用しての大バトルが繰り広げられたと、噂で聞いたが、その後は四人で仲良くウサギ茶屋にお茶しに行ったらしい。
その当日は、僕はシオンと一緒に新しい部屋に入れる予定の家具を見に行ってました。
そして、2階の階段を上がって右側の一番奥、バーニャの部屋の隣はラタニー、そして廊下を挟んて僕の部屋の前の部屋はポプラと決まったようだった。
意外だったのが、この3人で争った場合、鬼神化したバーニャの圧勝は理解出来るが、普段は研究者として魔術に関する研究を専門にしているラタニーだが、それでもCランク冒険者としての実力は持っているハズなのに、そのラタニーがポプラには勝てなかった事と、鬼神化したバーニャ相手に善戦したと言う話しには、後で聞いてかなり驚いた。




