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 第23話・ポプラさんが奴隷になると言い出すもんだから、バーニャさんもが・・・

 

 ポプラさんの絶叫で、シーンと静まった個室の中に居た全員の視線が、僕に集まる。



「ポプラさん・・・ 今、何と仰ったのでしょうか?・・・」


()()()、私はジンさんの()()()()()!って言ったのよ!」


「イヤ、ちょっと待って下さい! いきなりそんな事を言われても困るのですが・・・ (汗 」


「だって、家の馬鹿親父、ジンさんに対して高額な工賃を請求した上に、高価な素材まで要求した挙句、全部ネコババして姿を晦ませたんですよ!詐欺です!犯罪なんです!しかも・・・ どう安く見積もっても・・・ 白金貨50枚は下らない程の金額なんですよ! どうやって返せって話しです!」


「いや・・・ それはホビイさんとの話しで、ポプラさんとは関係の無い話し・・・」


「それ!本気で言ってます? このままだと、憲兵さんがこの件に関しては、上役に『横領又は窃盗、若しくは詐欺に該当する案件』だと報告する事になります。

 そうなれば、父は間違いなく有罪となるでしょう。

 これまでにも何件も訴えられていますから・・・ 良くて犯罪者奴隷として鉱山送りでしょう。

 額が額ですから、今回は間違いなく『中央の処刑場で縛り首』でしょう・・・」


「いやいや、そんな事には・・・」


「ジンさんは無いと仰るのですか? そんな事はあり得ない・・・ 第一、もし今回の事が許されたならば、今後は同じ様な犯罪を犯した者も許されてしまうって事ですよ? それに、例えジンさんが許すと言っても、ジンさんの回りの人達が許すとは思えませんし、私自身が許しません!」


「だからって、ポプラさんが奴隷になんて・・・」


「ジンさん、今回の件が有罪になれば、誰が?その金をジンさんにお返しするのでしょうか? 当然、父に賠償金も含めた額の支払い命令が出るでしょう。

 そうなったら父が全額支払えるでしょうか? この王国では、犯罪者に対しての罰は非常に重く、そして無情です。

 父親が一人で背負う事が出来ない罪は、さらには家族や親戚縁者にまで及びます。

 そして、父親が一人で背負えない借金も、家族や親戚縁者にまで及ぶ事になります。

 そして私の言い分ですが、このままだと間違い無く、私は奴隷商人の所に連れて行かれて売られてしまうでしょう。

 そう成った場合、私は、ジンさんへの賠償金と奴隷商人の利益を含めた額、多分、白金貨で130枚前後でのオークションの始まりに成ると思います。

 結果、私を競り落とせるのは、新しい性奴隷が欲しいと思っている金持ちの商人か?貴族か?それ以外は、死ぬまでこき使って金を稼ごうと考える娼館の主人ぐらいでしょう。

 どちらにしても、そう成った場合、私は二度と陽の下を歩く事は死ぬまで無いでしょう・・・

 私、考えたんです『今しか、私が私を救うチャンスは無いのでは?』と・・・  

 だから、そんな自分勝手な私は『自分のエゴ』でジンさんの奴隷に成りたいと言っているんです。」



 正直な話し、ポプラさんの申し出に僕は困惑した。


 まあそうだろう? 突起、自分を奴隷にしろと言われたのだ・・・ ポプラさんに、父親のホビイさんに依頼した際の詳細を話しを話した事が始まりだったとしても、その話しを聞いた結果、ポプラさんが奴隷堕ちする決心をしたのだ、憲兵隊の捜査が入っている以上、遅かれ早かれポプラさんは奴隷堕ちする事に成ったのだろう・・・

 それほどに王国の犯罪者に対しての処罰は厳しい、例えば、盗賊は発見次第に切り捨てても良いし、捉えて犯罪者奴隷として売り払っても良い、泥棒や詐欺師などの犯罪者達に対しても刑は重い、その犯罪者の家族や親類縁者にまで累が及ぶのだ、この措置は、犯罪を犯そうとしている者に対しての抑制措置として効力を発揮している事もあり、今の世界では必要な措置なのだが、ポプラさんには嫁に行った二人の姉が居り、しかも、どちらの姉達の子供達は未だ幼なく、ポプラさんがその姪や甥達を物凄く可愛がっている事は有名な話しで、僕ですら知っている話しだ、その可愛い姪や甥に、父親のホビイが犯した罪の累が及ぶのをどうしても阻止したいと考え、自分の身が奴隷堕ちするしか無い運命ならば、せめて姉達を守れないか?可愛い姪や甥を守れないか?と考え、結論を出したのだろうと僕は思う。

 そして間違い無く、ポプラさんは『自分自身の未来が、少しでも明るく成る方法を選んだ』んだと僕は思う事にした。



「分かりました。」


「では、私をジンさんの奴隷にして貰えるんですね!」


「いえ、申し訳ありませんが、僕に一日考える時間を下さい。 そうですね、明日、ギルド本部の談話室でもう一度お会いして、その時に僕がポプラさんにお答えする事にします。」と伝えると、最初は花が咲く様な笑顔を見せたポプラさんの顔が、一瞬にして曇ってしまった。




 その後、僕はウサギ茶屋を出ると、冒険者ギルド本部の執務室で仕事中のジェス兄さんを訪ねて、相談事とお願い事をしてアパートに帰った。





 その日のアフタータイムは、アパートの修理と言うか?リフォーム計画すら出来て無いので、勿論、アパートの風呂場も使えない訳で、シオンと一緒に公衆浴場に行ったのだが、シオンはその道すがら僕の手を取って上機嫌で歩いているので、


「何がそんなに楽しいの?」と聞いたら、


「旦那様と一緒に歩けるだけで楽しいんです♫」と言われ、公衆浴場では『家族は家族風呂を選ぶのが普通です!」と言われ、強引に家族風呂の中で・・・なのを良い事に、シオンに全身を()()()洗われてしまったし・・・

 帰りに立ち寄った食堂でも、終始ニコニコと笑顔だったが、何処にでも居るガラの悪い冒険者に対しては、テーブルに置いて有った予備の食事用ナイフで脅していしたりした。



 そして、僕がアパートに帰った時には、姿が見え無かったカエルのペコも、庭の端の煉瓦の上で、夕陽が沈む直前のオレンジ色に染まった空を、以前から庭に良く遊びに来ていた真っ白い猫と一緒に眺めていた。








 そして翌日、ギルド本部の談話室でポプラさんと話し合いをしていると、何やら外からギルド本部の職員と誰かが口論している声が聞こえたと思ったら、談話室のドアが荒々しく開けられた。



「お前がギルド本部受付のポプラか? お前には『お前の父親が犯した犯罪の手助け』をした疑惑が掛かっている件で、色々と話を聞く必要が有る! 大人しく付いて来い!」


「ちょっと待って下さい! 突然、部屋に入って来た上に、何を強引にポプラさんを連れて行こうとしているのですか? それに貴方は誰なんですか?」とジンは冷静に目の前の小太りな男に問い質したが、


「何だ貴様! 王宮調査室、調査官補佐代理のワシに逆らうのか? その様な事をすると貴様も牢獄に入れるぞ! それが嫌なら大人しくしとれ!」と小太りの男が脅しを掛けて来た。


 まあ、このぐらいの暴言ならば別にジンは気にしなかったが・・・



「早く来い女! 伯爵様がご厚意でお前を助けてやると言っておられるんだ! 素直に従え!」と言ってポプラさんに暴力を振るおうとしたのだ、


「ちょっと待って下さい。 今の話しはどういう事なんでしょうか? 貴方は、今、何と言いました? 第一、貴方は王宮調査室の仕事で来たのですよね? そこで何故『伯爵様』と言う方が出て来るのですか?」


「うるさいぞ貴様! 貴様の様な小僧が大人の世界の話しに口を出して良いと思っているのか? 貴様は王宮の意向を無視するのか? 貴様も王宮に逆らった罰として牢獄送りにするぞ!」と小太りの男はイキがったが、次に部屋に入って来た人物の顔を見て青くなる。


「いつまで儂を待たせるつもりだキモロ! 早くポプラと言う小娘を連れて来んかッ! ほう、この娘がポプラと申す女か? お前が申した通りに良い乳をしている。」と、次に入室して来た貴族風の男が小太りした男、キモロと呼んだ男に確認すると、ポプラの体を上から下まで嘗め回す様に確認した後、当然の様にポプラの胸に手を伸ばそうとしたので、ジンがすかさずポプラの手を引いて庇と、



「何をする小僧、事と次第では小僧の首なんぞ、儂には簡単に跳ね飛ばせるんだぞ!」


「貴方達は、私とポプラさんが話しをしている最中の部屋に入って来たと思ったら、一体何をしようとするのですか?」


「先程も、申したであろう! 王宮の要件だ、貴様は王宮の要件を無視するのか? 貴様も牢に入る事に成るが良いのか?」


「では、私も王宮の関係者に知人が居ますから、問い合わせした後にもう一度・・・」


「ほう! どうせ、王宮に努める職員相手に、御用聞き程度の用向きで出入りしているだけの冒険者風情が、貴族で伯爵家の儂に盾突くと言うのだな!? 良かろう、今直ぐにその『王宮の知り合い』と言う者を連れて来い! 不敬罪でその者も一緒に首を跳ねてやるわッ!」


「本当に良いの?」


「諄い! 早く儂の目の前にお前の知り合いを連れて来い!」


「後ろに居るけど・・・」とジンが談話室の入口を指差すと、そこには美人秘書で婚約者であるメイヤーさんを従えたジェス兄さんが立つていた。



「これはオオベン殿、本日は一体どの様な要件でギルド本部まで?」


「いや、儂の知り合いの役人の付き添いで、少々な! 要件は直ぐに済む」


「ほう、どの様な要件ですかな? 私が手助け出来る様な要件ですかな?」


「いやいや、ギルト総長殿のお手を煩わせるような・・・」


「先程、そこの冒険者の関係者を連れて来いと、大きな声で叫んでいたのが聞こえましたが? 何なら私とそこの冒険者は知り合いですが?」と、


 知っている者が聞くと『意地が悪いとしか言い様の無い事を言うジェス兄さん』だったが、それがメイヤーさんのツボに入ったのか? 書類の束で顔を隠して笑ってしまっている。




「そこの冒険者が、ギルト総長殿と知り合いと言うのは、少々無理がある! ギルド総長ならば冒険者を見知っていたとしても当然、儂が言っているのはただの顔見知りの事を言っているのではない! 関係の無いギルド総長殿は遠慮して欲しい!」


「えっ!? ジン・・・ いえ、ジーンサイザーは、私の従兄弟ですが?」とジェス兄さんが指を鳴らしながら、そう言った。


「はっ!? じょ・・・ 冗談だよな?」


「事実だが? 暗部!」とジェス兄さんが『暗部』と呼ぶと、どこからともなく黒い影が四人現れ、膝を着いて瞠目しながら、静かにジェス兄さんからの次の指示を待つ、




 その際、ジェス兄さんが『暗部』と影の者を呼んだ時の顔は、怒りで歪んで嗤っていたという。









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