第21話・カエルはペットとなり、陰の子守り役はメイドになった
カエルは運が良かったのかもしれない、今のアパートの住人である青年は、ダイニングキッチンに夕陽が差し込み始めて、庭の方が少し眩しかった事、そして、荒らされた状態でオレンジ色に染まっていたダイニングキッチンに、オレンジ色したカエルの姿が溶け込んで見えなかった事、そして青年が別の事に気を取られていた事等々の幸運がカエルの背中を押して、カエルはアノ『肉屋の腸詰』を口にする事が出来た。
そして、再び鮮やかに色彩を放つ幻影の中で、今度は彼女の笑顔が鮮明に・・・・
しかし、世の中は中々上手くは行かない様だった。・・・
カエルが『肉屋の腸詰』を加えた瞬間、青年がそれを取り返そうとしてカエルを持ち上げたら、青年がバランスを崩して暖炉の残骸に追突、そして、どうにか形を保っていた暖炉の残骸がバランスを崩してしまい、カエルと青年の上に降り注いで・・・ 来なかった!
突然目の前に現れたメイド?が、物凄い轟音と共に暖炉の残骸を全て、蹴り飛ばしてしまっていたのだ!
咥えていた腸詰ウインナーを落として、限界まで一杯に口を開いて放心状態になっているカエルを、両手で抱えるジンの目の前で、長いスカートのメイド服に、真っ白なエプロンを着けたメイドさんが、片足を真横に高く上げたまま固まっていたが、静かにその足を下すと、そのまま回れ右して歩き去ろうとしたので、
「あの・・・ 今、貴方が誰か?なのかは聞きませんが、僕を助けて頂いた事には感謝しています。
ありがとうございました。」
「・・・・ ジン様、いえ、ジーンサイザー様、私は貴方様が産まれた瞬間から、貴方様の『子守り役』として陰から貴方様を見守らせて頂いていたSDF-40号と申します。
ジーンサイザー様、40号は最後に貴方様とお言葉を交わすことが出来て幸せです。」と、最初は歩き去ろうとして後ろを向き、僕の感謝の言葉で足を止め、再び振り向いて逆に感謝の言葉を言われ、そして再び去ろうとしたメイドさんの姿の彼女の頭に結んである物を見て、再び声を掛けた。
まあ分からない事だらけだったので、もう一度メイド姿をした彼女と話がしたかったのもある。
「ちょっと待って! 貴女が髪を結んでいるリボンって、昔・・・僕があげたリボンだよね?」
「はい、ジーンサイザー様、このリボンは40号が初めてジーンサイザー様から頂いた。40号の大切な大切な宝物です。」
「やっぱり・・・ あの時の人だったんだね!」
「はい、あの時の陰が私です。 ジーンサイザー様、」
「少し気になった事が有るから、ちょっとだけ話をさせて欲しいんだ! 先ず『最後』ってどいう意味での最後なの?」
「言葉通りの意味での『最後』です。ジーンサイザー様、」
「えっ!? 『陰から』って言っていたよね? それなら爺ちゃんに話して、城の暗部には・・・」
「私が属している場所は、ジーンサイザー様が仰っておられる王宮の暗部では無く、別の組織です。 ですから、ジーンサイザー様がいくら国王様にお願いされても、私の処遇が変わる事はありません、私は唯々この世界の何処かで静かに消えるのみ・・・ 」
「ちょつと待って! じゃあ君は他国の指示で・・・」
「いえ、ジーンサイザー様、それも違います。私が属している・・・ いいえ、それももう違いますね、私が属していた場所は・・・」と、彼女は静かに指先で上を指さした。
この後、メイドの姿をした彼女が話した内容は、余りにも荒唐無稽な話しだった上に、彼女の話しの途中で神様から、
「その話しはココまでじゃ、お主しとカエルもコノ話しは忘れる様に、良いな!
そしてジンに追伸じゃ! 良いか? 良く聞いておくんじゃぞジン、お前さんは前に『美人で!優しくて!料理と掃除と洗濯が上手で、愛嬌が有って!巨乳でエロい!メイドさんが欲しい』と言っておらんかったかのう? 今、お前さんの目の前のメイドさんなんか条件がピッタリじゃと儂は思うがのう? 後、ヒルドの嬢ちゃんがのう『丸っこくて、抱き心地が良いペットが欲しい』と言っておったぞ!」と、今まさに真横で見ているとしか思えない伝言と、それに対して、物凄く長文な追伸を書いた神様からの手紙を、黄金色した神々しい姿のフクロウが届けに来てくれた。
その神様からの手紙を、メイドさんとカエルに見せたら、メイドさんは両目をウルウルさせながら僕を見ているし、カエルは何処かに逃げようとしたが、お駄賃代わりのミノタリウスのステーキ肉を、その鋭い嘴で引き裂いて食べていた黄金のフクロウと、目をキラキラさせているメイドさんに阻止されて何故か?ダラダラと全身に汗を掻いていた。
そうそう、神様の使者として手紙を持って来てくれたフクロウさん、黄金色した神々しい光が収まったら、普通の大ミミズクに戻って、それ以来、庭に生えている木に住み着いて、時々おやつを貰いに僕の所に遊びに来たりしてます。
「さて、今後の話しをしようか? 先ずはSDF-40号さんで良かったんだっけ? 」
「はい」
「先ずは、貴女の意思確認なんだけど、本当にココでメイドとして働くの? 多分、ココは王国の暗部関係の人達に見張られていると思うけれど大丈夫なの? 特に貴女の身元とか?所属してた場所の事とか?」
「はい、詳しい事は話せませんが、先ず私がココでメイドとして働く事は問題が無いかと思われます。」
「次に、名前の事なんだけど… ちょっとこの王国じゃあSDF-40号なんて名前は馴染みが無いし、絶対に周りか不信がられるから、何か別の名前が良いと思うんだけど、貴女が望む呼び名や名前の候補が無いかな?」
「その事で、ジーンサイザー様にお願いがあります。 私に名前を頂けませんでしょうか?」
「えっ!名前を?・・・」
「はい、私が新しい道を進むなら、新しい名前をジーンサイザー様に付けて頂きたいと思います。」
「う~ん、名前か~・・・ SDF-40号さん・・・ 40号・・・・ 40号から取って 40号なんてどうかな?」
「ありがとうございます。 今から私は『シオン』と名乗らせて頂きます。」と僕に深々と頭を下げたSDF-40号さん、いやシオンが、眉間に皺を寄せて、顎先に指を当てながら小首を傾げた後、
「ジーンサイザー様、いえ、今からは『旦那様』とお呼びさせて頂きます。 それで旦那様、今、先ほどもご説明させて頂いた『月』から、コード番号・・・ いえ、私の新しい名前『シオン』が『月』に仮称として登録された様です。
しかも、私の任務が『陰からの子守り』から、『旦那様のメイド』に変更され、メイドとしての任務続行の指示が届きました。」と報告して来た。
神様からの説明のお陰で、目の前にいるメイドさん・・・ いやシオンが、別の世界からの来訪者であり、シオン達が居た世界は、僕たちが住む世界とは違って魔法が使えない代わりに、技術が進んだ結果、化学技術などが進んだ超文明世界として発展したと言う話しだった。
しかも、シオン達は作られた人間、いわゆる『人造人間』や『アンドロイド』に等しい存在だと言う事らしい、まあ僕の前世の記憶でも『AI』技術が発達した結果、生活の多くの場でAIが活躍していたのを覚えていたので、意外とすんなりと受け入れる事が出来た。
まあ、この世界にも魔法生物やキメラ、そして様々な武器や道具に、知性や疑似人格を定着させた『インテリジェンスウェポン』なんて物も存在している。
まあシオンが、別の世界から来た『人造人間』だとかそんな事は全く気になる事は無かった。
「で、後はこのカエルの名前なんだが・・・ 」
「ゲコ! ゲコゲコゲコ!(えっ! 本当に俺はペットとして飼われるのか!?)」
「う~ん・・・」
「ゲコ!ゲコゲ~コ!(お前!俺の話しを聞けよ~!)」
「カエル如きが、旦那様から名前を頂けるなんて・・・」
「う~ん・・・ オレンジ色のカエル・・・ オレンジ・・・ オレンジのゲコ?・・・ いや、オレンジペコ?・・・ ペコ! そうだ! 今からカエルさんの名前は『ペコ』にしよう♪」
「ペコですか?」
「ゲコ・・・ (好きにして・・・)」
カエル改め『ペコ』の、色々と諦めた感が有る鳴き声に合わせて、ジンのお腹が鳴った事も有り、料理関係の情報をアップデートしたシオンが簡単な料理を作り、その日は取り敢えず庭で食事を取って、野営用のテントでジン達は休む事にした。




