第20話・幼女と猫と、カエルの記憶
今回は、ちょっと長い文章となってしまいましたが、最後まで読んで頂ければ幸いです。
文章が読みづらかったり、誤字脱字もあるとは思いますが、よろしくお願いします。m(._.)m
俺は、この世界ではカエルと呼ばれる生き物らしい、そして俺は他の仲間達とは考えが違う様だ、仲間や兄弟達は心地良い水辺で微睡ながら、その日のエサの事やメスの事ばかりを話しているが、俺は時々水辺に来る人間達に興味があった。
そしてある日、とうとう俺は行動に出る事にした。
人間達が話していた王都と言う場所に、行ってみる事にしたのだが・・・
失敗した! 荷馬車と言う物に紛れ込んで、王都と言う場所には入る事は出来たのは良いが! 俺の食糧となる物が無い! 荷馬車を引いてた『獣』達は、王都に着いたら沢山食べれて、沢山水が飲めると言っていたのに・・・
ココは、何処を見ても石!石!石!石〜〜〜! 石だらけ、水の匂いを頼りにペタペタ歩いて辿り着いた場所も、高い場所にある石から、強烈な水の匂いと水の音をさせて噴き出しているだけで、いくら俺が口を開けて待っていても、水は落ちては来なかった。
まあ、俺がこれまで見て来た『冒険者』と言う人間より、かなり小さな人間が『カエルさんは、お水が欲しいの?』などと言いながら、何度も俺に水を掛けてくれたから良かったものの、そんな事でも無ければ、今頃は『カエルの干物』になってしまった俺は、魔女の大甕の中でグツグツと煮られていたかもしれない、後、俺の気のせいかも知れないが、この人間達が王都と呼んでいる場所を知っているかもしれない・・・
でもまあ、それも俺の気のせいかもしれない、第一に『カエルの俺』が初めて来た場所なのだから。
その後、俺が王都と呼ばれている場所に来て、かなりの日数が過ぎたと思う。
まあ俺が『運が良かった』と言う事もあるかもしれないが、どうも俺は仲間以外の動物?魔物?と、意思の疎通が出来る様で、特に俺が王都に来た初日に、人間達が『噴水』と呼んでいる場所で出会った小さな人間とは、その後も何回か出会ったが、その日は、水が欲しくなった俺が『噴水』を見上げていると、
「あー!あのカエルさんだ〜♫ 今日もお水が欲しいの?」と例の小さな人間が、俺の正面にしゃがみ込んで話しかけて来た。
「ゲコ!ゲコゲコ?ゲ〜コ、ゲコゲコゲコ!(ああ、この前の嬢ちゃんか? 今日の俺は存分に水を浴びたい気分なんだよ!)」
「うぅ〜ん・・・? あッ! 今日は水浴びをしに来たんだ〜! それなら、ヨイショ! それからのエイッ!」と最初は小首を傾げていた嬢ちゃんが、俺を『ヨイショ!』と言いながら持ち上げて、噴水のなかにドブンと派手な音をさせて投げ入れた。
噴水の中に投げ入れられた事で、久しぶりに全身で感じる水の感触に、言い切れない心地よさを感じながら、水の中を縦横無尽に泳ぎ回って水の感触を堪能する俺に、
「カエルさんって凄~い♪ ララもお母さんとお風呂に行った時に、お湯の中で泳ぐけど、カエルさんみたいに上手に泳げないや~」
「ゲコ? ゲコゲコ?ゲ〜コ、ゲコゲコゲコ!(えっ? 嬢ちゃんは泳げないのかい? 仕方ないから、俺が泳ぎ方を教えてやるよ!)」と、噴水の中を泳ぎ回って水の感触を堪能するのを中断して、自分の事を『ララ』と呼んでいた小さな人間の目の前に、目と口だけを浮上させて言う。
「本当? カエルさんがララに泳ぎ方を教えてくれるの?」
「ゲコ!ゲコ、ゲコゲコゲコ!(良いぜ! 俺様が、嬢ちゃんに泳ぎ方を教えてやるぜ!)」と、そんな会話をしていると、
「あの女の子とカエルが、まるで会話してるみたい♪」
「あのカエル、この辺ではあまり見かけないけど、あの草原の外れの森まで行った時に、水場の小川で良く見かけるカエルじゃないの?」
「ああ、いつも日向ぼっこしながら平和な顔して、まったりと過ごしているオレンジ色に、縞々模様が入ったカエルだよね?」
「確か『森カエル』って名前だったっけ?」
「そうそう! この前、冒険者の男達と一緒に、森林組合からの依頼で受けた『護衛&ゴブリン退治』のクエストで森に行った時に、男達が小川の河原でまったりとしてたカエルさん達をみて『運が森カエル』とか?『無事帰る?家買える?』ってダジャレを言いながら見てたし、同道してた木こりさん達には『森が蘇る』とか言われてたし」
「あの緩い感じの表情が可愛いんだけど、見てたら意外と俊敏に泳いでたからビックリした~♪」
「でも、あの可愛い女の子とカエルさんのツーショット、見ててなんか癒される~♪」
「私もわかる~♪」などと言いながら、人間の冒険者風の女達が、俺と小さな人間に手を振りながら去っていく、それから暫くして、
「ララちゃん返る~♪」
「ゲコ!ゲココ~♪(おう!気を付けて帰れよ~♪)」と言って見送り、その後も俺が久しぶりに感じる水の感触を大いに楽しんでいると、
「あら? こんな所に珍しい生き物がいる!」と声が聞こえたので、声がした方を見てみると、噴水の淵に一匹の猫らしき生き物がいた。
俺が『猫らしき生き物』と言ったのは、小川の河原で俺達が昼寝をしていると、俺達をエサにしようと襲って来る森の猫が居たのだが、俺に声を掛けて来た猫は、その森の猫とは違いかなり小さな猫だった。
「あらどうしたの? もしかして私の言っている言葉を理解しているの?」
「分かるぞ!」
「そうなの? 不思議ね~ 私、貴方の様な派手なカエルさんを見るのも、ましてや会話する事が出来るカエルさんに出会ったのも初めてだわ♫ 貴方、この街に来たばかりなの?」
「ああ、この街と言うか? 一応は王都だよな? ココに来たのはつい最近だ、それに、俺も君みたいに小さな猫を見るのは初めてだ!」
「あら? 見掛けに似合わずに『小さな猫』って呼んでくれるなんて、お上手ね♫ 貴方、何処から来た?」
「ああ、人間達には『森』と呼ばれてる場所から来たんだ!お嬢さん♫ 」
「貴方、気に入ったわ! この噴水って、冒険者ギルドって人間達が沢山出入りしている場所に近いって事も有って、冒険者になったばかりの子供達が良く来て掃除して行くから、以外と私達には危ない場所なのよ! 良かったら私が安全そうな場所と、餌場を紹介するわよ?」
「おっ、それは助かるよ! お嬢さん♫」と言う事で、真っ白でふわっふわな毛並みをしていて、俺と同じサイズぐらいの猫の後を付いて行く事となり、安全な寝床としてこのアパートの庭を紹介して貰ったのだった。
アパートに行く道すがら、猫の嬢さんは、最近の王都で自分が見聞きした色々な出来事と、目的地であるアパートに住む住人の話しをしていた。
そして、この猫のお嬢さん曰く
「このアパートの庭ならオススメよ! ココの住人の男の子なら、多分、貴方を追い出したりしないと思うわ♫ この前も、私が庭のベンチでお昼寝してたら、柔らかなクッションを用意してくれたし、時々だけどオヤツも有るし♫ とにかく居心地が良い場所なのよ! 私も時々遊びに行くからオススメよ♫ 」と猫のお嬢さんは俺を案内しながら、石畳の古い城壁跡に出来た突起や、石が欠けて出来た足場を器用に利用して、10mぐらいの高さがある壁を容易に登ってしまい『貴方もおいでよ♫』と、上から俺を見下ろして呼んでいる。
あの猫のお嬢さんは『俺も猫だと勘違いして無いか?』などと思いながらも、上を見上げて後足に力を込めて全身に『風』を纏うと、一気に猫のお嬢さんの横に飛び上がった。
「貴方って凄いのね〜♫ カエルがこの高さをひとっ飛びなんて、信じられないわッ! この街に住むカエルじゃあまず無理、それに今の私じゃあこの高さを一気に飛ぶなんて無理だしね・・・ あっ、ココの庭が貴方にオススメしたい安全な寝床よ、それと、私もそろそろ家に帰る刻限だから帰るわね、また明日貴方の様子を見に来るわね♫ 」と、猫のお嬢さんは一気に喋ると帰って行く、しかし、俺はそれどころじゃ無かった。
「おう、ありがとうな・・・ 」と、気もそぞろな返事しか出来なかった。
猫のお嬢さんが『この高さを一気に飛ぶなんて無理』と言う言葉に釣られて、俺が後ろを振り返った瞬間、俺が知らない筈の景色に重なって、微かに見覚えのある気がする光景が蘇る。
その光景と、知らない筈の記憶に、突然フラッシュバックを起こして硬直している俺、そんな俺をその場に残して猫のお嬢さんは家へと帰って行く、そして俺は猫のお嬢さんに礼すら言う事も出来ずに、目に映る光景と記憶に混乱していた。
王都の旧城壁南門跡地に建てられた一軒のアパート、彼はこのアパートの庭の端から、陽が沈んでいく光景を静かに眺めるのが好きだった。
庭先に置いたお気に入りベンチで、沈む夕陽を眺めている彼に『また夕陽を眺めているの?』と、彼に声を掛けてくる彼女の顔は優しい微笑みを浮かべていた。
彼女が『貴方、夕陽ばかり眺めてて目が悪くなったらどうするの? 私の顔も見えなくなるんだよ?』と言いながら彼の目を覗き込む。
彼は『僕の目が悪くなっても心配無いよ、物凄く大きな目を手に入れて君の顔を見るよ!』と言って笑う。
そして、しばらく彼は彼女と一緒にベンチに座って夕陽が落ちるのを眺めて、空の色が鮮やかなオレンジ色からパープル色した空に変わる頃、彼女が『今夜の夕食は、貴方の好きな腸詰が入ったスープよ』と彼の手を取って、既に温かな明かりが灯っている『帰る場所』へと、優しく微笑みながら彼の手を引っ張って連れて行く・・・
カエルはその幻影を追うかの様に、硬直していた前足を一歩前にだすと、必死に足を動かして幻影の後を追う。
幻影の彼女は嬉しそうに微笑みながら、彼をテーブルに着かせると、暖炉に掛けていた大鍋を覗き込んで頷き、鼻歌交じりでスープを皿に盛っていた。
その幻影を凝視しているカエルには、幻影の中の彼女が笑顔でスープを盛っていたのは知っていた。
しかし、カエルにはどうしても幻影の中ので笑っている彼女の笑顔が見えなかった。
いや、本当は『見えない』のでは無く、カエルが『思い出せない』のである。
それまでカエルが見ていた幻影は、彼の魂に刻まれていた『記憶の残滓』で、神様の悪戯か?神様の慈悲か?は、神様にでも聞いて見ないと分からないが、夕日でオレンジ色に染まった懐かしい場所で、カエルが見ている幻影の色が消えかけていた時、また『神様の悪戯』の様な事が起きる。
少し形は変わっている気はするが、アノ暖炉の前に置かれた紙袋から、彼が好きだった『肉屋の腸詰』が顔を出していた。
あの懐かしい肉屋の腸詰を食べたら、きっと俺は彼女の顔を思い出せるかもしれない、あの時、彼は彼女に、
『僕の目が悪くなっても心配無いよ、物凄く大きな目を手に入れて君の顔を見るよ!』と約束したのだから、少し違う形での帰宅だけれど、彼は約束を守って『大きくて性能の良い特大の目』で返って来たのだから・・・
いつもは17時前後で投稿してますが、今日はいつもの時間での投稿が無理そうなので、予定よりも半日早く投稿させて頂きます。
by,八葉門希




