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 第2話・銀の荒ぶる鬼神との戦い

 

 彼らは、地下30階層のとある部屋に居た。


 見た感じでは彼達5人でオーク狩りをしていたのだろう・・・


 部屋の床には3体のオークの死体が転がっており、それに加えてハイオークの死体も転がっていた。



 これは私の予想だが、彼ら5人で3体のオークを倒した後に、突然、ハイオークが姿を現したんだろう。


 5人のDランクパーティならば3体のオークを討伐するのはそんなに難しい事では無いハズだけれども、それがハイオークともなれば話は少々変わってくる。


 上位のDランクパーティならば兎も角、下位のDランクパーティではハイオークの討伐は難しい・・・


 しかも、地下30階層にハイオークが出現する事自体がまずあり得ない事なのだ、実際ならハイオークは地下35階層から下の階層から出現し始めるのだ、一瞬『今回は偶然にもレアな出没ケースに当たってしまったのだろうか?』とも考えたが、直感的に『この状況下で余計な事を考えていたら、自分の身が危険だ!』と認識して目の前の銀髪の女性に意識を集中する。




 一人でダンジョンを攻略している私と違い、パーティを組んだ上でのダンジョン攻略ならば、パーティメンバーの全員がDランク冒険者である必要は無い、冒険者ギルトでDランクパーティの申請をした上で、冒険者ギルトが指定するクエストを5回ほど達成出来れば、そのパーティはDランクパーティとして認められ、この王都に存在する地下ダンジョン、トロへの入場を認められるのだった。


 無論、各ランクへのランクアップには、各階層主の討伐証明となる魔石の提出が必須である。


 因みに、私がDランクへと昇格する際に討伐した地下29階層の階層主は、ゴブリンキングだった。

 しかも、嫁のゴブリンクイーンまで参戦して来たので大変苦労してこの2体を討伐した上に、私が持っていた虎の子のハイポーション(上位回復薬)とメインウェポンである両手剣2本と、装具が全損とはなったが、キングとクイーンから取れた魔石でかなり儲ける事が出来た。


 各階層への入場資格は下記の通りである。

 地下1階層 ~ 地下9階層 ・ 初心冒険者

 地下10階層 ~ 地下19階層 ・ Fランク

 地下20階層 ~ 地下29階層 ・ Eランク

 地下30階層 ~ 地下39階層 ・ Dランク

 地下40階層 ~ 地下49階層 ・ Cランク

 地下50階層 ~ 地下59階層 ・ Bランク

 地下60階層 ~ 地下69階層 ・ Aランク

 地下70階層 ~ 地下79階層 ・ Sランク

 地下80階層 ~ 地下89階層 ・ SSランク

 地下90階層 ~ 地下99階層 ・ SSSランク




 さて、そろそろ話を元に戻そう。


 剣鉈を両手に装備した私は、若い剣士の横に並びながら目の前のバーニャと呼ばれていたバーサーカー状態の女性を観察する。


 彼女は長い銀髪を後ろで三つ編みにして纏め、瞳はルビーの様に真っ赤な瞳を持つ美人さんであった。


 しかし、その双眸からはバーサーカー状態の影響であろうか?真っ赤な血涙を流し、額からは禍々しい形をした赤黒い角が3本ほど生えていた・・・ 


 以前、冒険者ギルトに併設されている居酒屋で食事を取っている彼女を一度見掛けた際、あの特徴的な赤い瞳は印象的だったので私も覚えていたが、しかし額に生えた3本の禍々しい角は記憶になかった。



「それで、彼女をバーサーカー状態から戻すにはどうすれば?」と若い剣士に聞いてみると、


「彼女をバーサーカー状態から解放するには、あの大剣の嵐の様な攻撃をくぐり抜けて、次に彼女の額に生えた角を折るしか方法が無いらしい・・・ 」


「らしい・・・?」


「ああ、彼女とパーティを組んだ際に彼女本人から聞いた『バーサーカー状態からの解除方法』だそうだ・・・ 」


「これまでにその方法を実践した事は?」


「幸いな事に今回が初めて・・・ 」


「仕方ない、取り敢えず彼女の角を折ってみるしか確認する方法が無い様だね!」


「すみません私達のパーティーのトラブルに付き合わせてしまって・・・ 」


「良いよ!冒険者は助け合いだしね!・・・ さあ始めようか?」


「はい・・・ 」



 私は、腰に装備したポシェットから3本のポーションを取り出すと、盗賊か?アサシンであろう女性に対して懸命に回復魔法を掛けている女性に向かって投げると、目の前で荒ぶる銀髪の鬼神の角を折る為に戦いを挑んで行った。



 それから約小一時間が経過した頃、激しい攻防戦の末に私達は彼女の額に生える左右の角を砕き折る事には成功はしたが、額の中央に鎮座する角を砕き折る事は出来ずにいた。


 そして今、私は荒ぶる鬼神と一対一で対峙している。


 若い剣士の方はと言うと、彼女の額の中央から伸びた赤い角に大きなヒビを入れる事には成功したものの、その代償として、彼女が持つ大きな大剣によって、この部屋の壁に体を半分めり込ませた状態で動かなくなっている。



 そして私は彼女への決定打を撃てなくなってしまい焦っていた。


 まだ、壁まで吹き飛ばされた若い剣士の剣が彼女の大剣で破壊されずに残っていたか?重戦士の太った男が、女性の魔法使いからポーションを奪い取って飲み干した後にこの部屋から逃亡さえしなければ、まだ状況は違ったかもしれない、しかも重戦士の太った男が飲み干したポーションは、ノーマルポーションの方ではなくハイポーションの方だった。


 しかも、しっかりと両方のポーションの瓶を確認して、ハイポーションの方を選んでいる。


 それを見た瞬間、『あの男は後でしっかりと落とし前をつけてやる!』と心に誓った瞬間でもあった。






 ただ、約小一時間の激闘の成果か?彼女の斬撃の威力は幾分かは威力が落ちて来ているものの、同じく疲労が蓄積して来た私もその分動きは悪くなってしまっている事が残念でならなかった。



 しかし、最後には私はどうにか彼女の額に生えた角を折る事に成功した。


 彼女が、私に対して右下方から左上方への回転切りを仕掛けて来た際、一本だけ残ったボロボロになってしまった剣鉈を、右手で逆手に持って斬撃を逸らそうとしたのだが、彼女の剣圧に剣鉈がとうとう折れてしまった。


 結果として、彼女に右下方から左上方へと逆袈裟掛け切りにされたのだが、剣鉈のおかげで致命傷にならなかった事と、私の返り血が彼女が持つ大剣の柄に飛び散ったせいで、彼女の左手がすっぽ抜け、そのまま大剣の遠心力で彼女の右手が大きく後方へと引っ張られて大きな隙が出来た瞬間、私は右手を彼女の後頭部へと伸ばし、彼女の後頭部を左胸へときつく抱きしめて、


「これで君が正気に戻ると良いんだけど・・・ 」と言いながら彼女の額に生えた最後の角を私の左胸へと深く突き刺すと、身体を捻った。


 

 そして、自分の身体の中で彼女の角がボキリと音を立てて折れる音を感じた瞬間、私は意識を手放していた・・・





















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