第17話・王宮の大会議場は大混乱した
ギルド本部二階の第3会議室の中は、会議室と言うよりも応接室に近い感じで、会議室に入ると、女性職員の方がお茶とお菓子を出してくれたので、お茶を飲みながら下の受付で伝えられた『上役担当者』らしき人物が来るのを、ノンビリと待つ事にした。
それからティーカップのお茶を二度飲み干した頃、会議室のドアがコンコンと叩かれて入って来たのが、メイヤーさんと、その後に続いてギルド本部総長のジェス兄さんが会議室の中に入って来た。
まあジェス兄さんが来るだろうとは予想してはいたけれど・・・ メイヤーさんが付いて来たのは少々この話が真面目な話かな?と思ってしまった。
「本日、Dランク冒険者であるジン様にお越し頂いたのは、先日、某貿易都市国家の謀略に因り発生した事態に関するご報告と、この王都トロの地下ダンジョン30階層で発生した事件の顛末とその対応及び、ジン様が被った被害に関するアレコレの賠償に関するお話しと成ります。」と、予想道理りにメイヤーさんが書類の束を手に持って説明を始めたので、
「はい、宜しくお願いします。」と、取り敢えずは真面目に答えておいたが、ジェス兄さんが顔は真面目な表情をしたまま、目が思いっきり笑っていたのは見逃さなかった。
心の中では『この話が終わったら、絶対にメイヤーさんとの事で弄り倒してやるからな~♪』と思いつつ、メイヤーさんからの説明に耳を傾けた。
「以上で冒険者ギルド本部から、Dランク冒険者ジン様へのご説明は終了となりますが、何かご不明な点は御座いますでしょうか?」
「はい、問題はありません。」
『まあ、例え問題や疑問が有っても、この後ジェス兄さんが説明してくれるだろうし・・・ 』と思いながらメイヤーさんに対しては、丁寧に対応しておいた。
「さてジン、イヤ・・・ ジーンサイザー・フォン・アルバトロス、今回の本当の顛末をジェスター・フォン・アルバトロスとして話したいと思うが、如何だろうか?」と、予想外にジェス兄さんが静かに話し始めると、一瞬で第3会議室と呼ばれている部屋の室内の空気が変わった。
ジェス兄さんが空間魔法を使って、この部屋と外部の空間を隔てた様で、そして、メイヤーさんの前で僕の本名を喋ったと言う事は、多分、そう言う話しなのだろうと理解した。
先ほど有ったメイヤーさんからの説明で、ドルフ商会から慰謝料と迷惑料込みで金貨100枚(約一億近い金額)もの大金が、僕が持っている冒険者ギルドの口座へと振り込まれると聞いたばかりで、結構マジで驚いたのだが、ジェス兄さんから聞いた話しはそれどころではなかった。
「この話しは、王室に属している暗部からの報告と、現場で目撃した目撃者達からの供述を元に、王室諜報部が纏めた情報と、関係者から聞いた上での話しだと理解して欲しい・・・
あの日怒り狂ったブリュンヒルド様が王都上空に姿を現した後、先ず憂さ晴らしで激しい咆哮を一発挙げた後、
真っ先に向かった先は、ヒキ男爵が王都で所有していた屋敷だった。
そこでブリュンヒルド様は、屋敷内に居た関係者全員を転移魔法で屋敷の外に移動させると、その体を最大級のゴーレム兵と同等ぐらいの全長に再縮小して、ヒキ男爵の屋敷と離れを破壊した。
目撃者の話では、それはもう凄まじいもので、全身を使って滅茶苦茶に破壊していたらしいが、暗部の者からの報告でも、ブリュンヒルド様はもう何と表現して良いか分からない程に、無茶苦茶暴れたらしい・・・
その後は、バラスト子爵所有の王都の屋敷にも強襲して、ヒキ男爵の屋敷と同様に破壊の限りを尽くした後、何処かに飛び去ったらしいのだが、実は、今朝一番に報告が入ったと言うか?関係者本人が知らせに来たと言うか・・・(汗 」と、おかしな事に、ここに来てジェス兄さんの口が少し重くなった。
「実はなジン、先日の件で国王様が激怒してな~ 軍務大臣と第一師団長から、第五師団長までの全師団長を呼び出して『1週間以内に軍備を整えよ! 10日後には貿易都市国家『フロト』に向かって全軍で進軍を開始する! 尚、全軍侵攻する際には、我が親衛隊が儂と共に先頭を駆けよ!』なんて宣言しちゃうもんだから・・・ はあぁ~・・・ 」と深いため息を吐いている。
どうもジェス兄さんはその場に居た様子と言うよりも、まあ考えてみれば一応は王国の要職に就いている身分な訳で、重要な会議の場に居ること自体は当たり前の事なのだろうし、貿易都市国家と戦争するとなると冒険者ギルトも色々と忙しくなるんだろうし、国王様が『某貿易都市国家』と表現せずに『貿易都市国家フロト』と宣言した以上は、本当に戦争をするのだろう。
ただ、ちょっとジェス兄さんの様子がおかしい、戦争が始まるのが本当なら、ジェス兄さん自身がこんなにのんびりと僕と話しをしている訳がないと思って、ジェス兄さんをジ~~~っと見つめていると、とんでもない事を語り出した。
「それでな~ 王宮の大会議室に各大臣や閣僚達が集って話し合っている場に、来ちゃったのよ~~~!
あの肩が重くなると言うか? 全身が重くなって身動きが出来なくなる方というか? ぶっちゃけ神様が降臨されちゃつたのよ・・・で! 神様が言うには・・・」とジェス兄さんは神様が降臨した際の出来事を語りだした。
「エドガードよ、ちょっと邪魔するぞ・・・ 」とアルバ王国の重鎮たちが集う大会議室に突然現れた老人が、この国の国王に対してして『今回の用向きじゃがのう』と話し始める。
「まずエドガードよ! お主が直々にフロトなんぞに行く必要は無い、儂がヒルド嬢ちゃんにお使いを頼んで、フロトの首都上空で
『貿易都市国家フロトの理事と理事長に告げる! 今回の件の出来事を釈明しにアルバ王国の王都で在るトロまで出向いて来い! 返答は後日改めて来る使者に伝えよ! 因みに、否の場合は無条件で、私、黒竜王が娘のブリュンヒルドが貿易都市国家フロトの全てを劫火の炎で焼き尽くす事となるだろう。 既に神にも了承済である! 』と言いに行ってくれと頼んだからのう。
後はフロトに行く使者じゃが、儂は『光の戦士』殿が適任じゃと思うが、お主はどう思う?」
「はっ! 御心のままに!」
「うんうん、では邪魔したのう。 ああそうじゃった! ヒルド嬢ちゃんじゃがのう。使者が来るまではフロトの首都から動く気が無いそうじゃ、何でも『使者への返答次第では、フロトは妾が焼き尽くす!』って言ってフロトの首都に居座っておるから、使者殿を早めにのう。」
「ってな感じに話が纏まってね・・・ もしかしてジン、君、今回の腹いせに神様やブリュンヒルド様に何か言って無いよね? ね?」としつこくジェス兄さんが聞いて来たけど、
「あの日は、父さんと母さんが現れてヒキ男爵達を締め上げた途端に、ヒルドは物凄い咆哮を挙げて何処かに飛んで行っちゃうし、神様なんていつの間にか姿が見えなくなっているし・・・ まあヒルドが何処で何をしているか?が分かったから良かったけどね」
「まあ、そうだろうとは思っていたけど・・・ 」
「でも、フロトのお偉いさん達、トロに来るかな?」
「もし来なかったり、要求を拒否する様なら、本当に貿易都市国家トロは数日で滅亡する事になると思うよ・・・ この部屋に来る前に聞いた話だと、ダンおじさん、嬉々として宮殿の宝物庫から、現役時代に愛用していたフルメタルアーマーを持ち出して磨き始めたって、暗部の連絡員が報告して来たぞ・・・」
「ああ・・・ 父さんならワザと交渉を決裂させた上で、ヒルドに頼んでフロトの首都に住んでる住民全員を転移させてから、首都の街並みを一瞬で蒸発させてそう・・・ 」
「ああ、ダンおじさんならあり得る話しだ・・・(汗 」
そんな事を二人で話し合いながら、この日の要件は終わりと成り、取り敢えずメイヤーさんに付き添われてと言うか? 冒険者ギルドの口座残高の確認作業を見届けて貰って、アパートへの帰路についた。




