第15話・ラタニーが・・・
「じゃあ、ラタニーさんが今日此処に訪れたのは、僕と話がしたかったって事で良いかな?」
「はい、殿下」
「では、先ずはさっきもお願いしたと思うけれど、僕の事は殿下呼びではなく、友達を呼ぶ様に『ジン』と呼んで貰えるかな?」
「はい、で・・・ ジン様」
「様も無しで、僕も友達を呼ぶ時の様にラタニーと呼ばせて貰うから♪」
「はい、ジン・・・ これで良いかニャ? ・・・? どうしたニャ? ジン!」
「ラタニー ・・・・ ちょっと質問なんだけど、語尾の『ニャ!』は、僕と早く打ち解けようとしてワザと付けているのかな? (笑 」
「ワザとじゃないニャ~ 昔から気を抜いて喋ると出て来るニャ、ジンは猫族の特徴的な喋り方は嫌いニャ?」
「いや、嫌いじゃあないよ、逆に可愛いと思うよ、でも、ラタニーの容姿から推測すると、ラタニーの中に流れている猫族の血はクオーター程度だと思うけど、それでも種族的要素が濃く出たりするんだと思ってね! それに、普通の猫族の魔法使いと比べても5~6倍は魔法容量は大きいと思うけれど違うかな?」
「正解ニャ~ 私の母親が猫族と人族のハーフで、私の父親がハイエルフとローランドドワーフのハーフなんだニャ~ だから私は猫族の耳と尻尾を持ってて、ローランドドワーフの女性特有のナイスバディなスタイルな上に、ハイエルフの様に魔法に対しての感応能力が抜群に高いニャ~ もしかしてだけど、ジンは猫族は苦手なのかニャ? 」
「いや、逆!逆! 僕は猫族は好きだし、僕が住んでた村の近くに大きな森が在って、その森には大山猫の魔物が住んでいるんだけど、その大山猫が子猫の頃に怪我して鳴いているのを親父が発見して、家に連れ帰って看病した事が有って、元気になった大山猫の子供には稲妻の様な模様が有ったんで、名前をライって付けて子供の頃は毎日一緒に遊んでたんだ♪ だから王都で猫を見たり、猫族の人と話すと思わず嬉しくて」
「あぁ~ だからさっきからジンの視線が・・・ てっきり私の事をエロい視線で見ているんだと思ってたニャ~ ちょっと残念だニャ~♪」
「いや・・・ そう言いながら胸を持ち上げないで欲しいのだけど・・・ 」
「おっ!? ジンはオッパイは嫌いなのかニャ? 嫌いなら止めるニャ? どうするニャ?」
「いえ、僕も健全な男の子なんでオッパイは好きです・・・ なので、ラタニーの胸に自然と目が行ってて見ていたのは謝りますから、胸を強調するのは止めて下さい・・・ 」
「うん! ジンは正直なスケベだから許すニャ~♪ 」
その後、ラタニーとはお互いに色々な事を自然に話すことが出来たと思う、子供時代に何をして遊んだとか、家族との面白い出来事の話しとか、やはり一番盛り上がったのは、お互いが冒険者だからなのか?これまでに受けたクエストの苦労話し話がやはり盛り上がったが、次に盛り上がったのが『クエストに出掛ける際に持って行く物は何か?』だった。
ラタニーは流石に有能な魔法使いなだけあって、空間魔法系の『収納魔法』で収納する事が出来る容量も多くて、仲間達と初めて野営した際に、収納魔法で収納していた空間から天蓋付きのベッドを取り出したら、仲間達に大笑いされたらしくて、それ以来『ベッドは持って行ってない』とは言っていたが、スプリングの具合の良いマットとフカフカの布団はどうしても外せないらしくて、今でも収納空間には収納してあるそうで、それ以外にも様々な便利グッズがラタニーの収納空間には収納してあった。
あの日、怒り狂ったヒルドが王都の上空で物凄い咆哮を挙げながら飛び去って以来、ヒルドがアパートに帰って来る気配も無いので、陽が落ち始める前にラタニーと一緒に近所の大衆浴場に行き、帰りには肉料理が売りの食堂で肉がたっぷりと入ったシチューとワインを飲んで帰ったが、食堂でもワインを2本も一人で飲んでいたラタニーが『ジン! 私はまだ飲み足りないニャ~~~! 』とか言って、帰り道の露店でツマミ用にと色々と食材を仕入れた挙句、酒屋ではワインを6本も買ってアパートまで一緒に付いて来た。
「ラタニー、もう今夜は宿に帰って寝たら?」と提案したのだが、
「何を言っているのかニャ~ジンは? 今夜は二人で楽しく飲み明かすニャ~♪」と完全に酔っ払い状態のラタニーが、廃墟と化したアパートのリビングで収納空間からソファーやテーブルを取り出すと、テーブルの上に広げたツマミを肴にしてワインをラッパ飲みし始める。
どうも彼女は飲み足らない様子な上に、今更、自分の寝床に帰って大人しく寝る気は無い様で、散々飲み食いして潰れる寸前になったラタニーは、荒れた状態のリビングに例の天蓋付きベッドまで取り出してしまう始末、それを見て
「まあ確かに、夜営の時にコノ馬鹿でかいサイズのベッドを取り出されたら・・・ ラタニーの冒険者仲間達が大爆笑したって話も良く分かるわ〜〜〜!」と零すと、
「何々? ジンはこのベッドの快適さを知らないから、そんな事を言うのニヤ! 一度体験してみると、このベッドの良さをジンも知る事になるニヤ〜〜〜♫」と、まるでワインを飲んで猫族から虎族へと進化?したかの様なラタニーに、ソファーからベッドまでズルズルと強引に引っ張って行かれてしまう。
「どうせ今夜のジンはマトモな寝床が確保出来て無いんだニャ〜! だから今夜は特別にジンも私のベッドで寝るのを許すニャ〜♫ 今ならジンがチョットぐらいエッチな事しても・・・ 許すニャ・・・ Zzzzz・・・ 」
猫がワインを飲んで虎になって騒いだと思ったら、今度は仔猫の様にベッドの上でベタベタとじゃれて来たかと思っていたら、僕に覆いかぶさったまま電池が切れたかの様に寝落ちしてしまった。
特に、突然寝落ちしてしまった今のラタニーの格好と体制は良くない・・・
今のラタニーの格好は、王都で暮らす多くの下級冒険者や一般市民達が、家族と一緒にアフタータイムを過ごす際に好んで着られている事が多い『ポロ』と呼ばれる服を着ているのだが、貫頭衣と言えば良いのか?ワンピースと言った方が良いのか?この王都で暮らす庶民達にはお馴染みの格好なのだが・・・(汗
少し話が横に逸れるけど、この王都では、日没の約4時間ぐらい前にもなると、下町の各所から『ポロ』に着替えた庶民達が、それぞれが馴染みにしている大衆浴場『スパ』へと向かい、その日の汚れと疲れを落とすのが日課なのだが、この『スパ』こそが王都で暮らす一般庶民達には憩いの場だったりする。
かって僕が暮らしていた前世の世界でも、僕が生まれる100年ほど前には『銭湯』と云う呼び名の大衆浴場が、この王都の『スパ』と同じ様な感じだったと、学校と云う名の場所で習った記憶があった。
そして、スパで汗を流した一般庶民達の多くが大衆食堂で食事した後は、各自のアパートに帰って家族と過ごす者や、居酒屋で飲んで食べた後に夜の店に消えていく者、それぞれだったりする。
ああ、この大衆浴場『スパ』は基本的には混浴だったりするので・・・ そうでなくても・・・(汗
まあそんな訳で、風呂上がりに『ポロ』を着ただけの格好事態は、家族や恋人同士で有るなら普通なのだが・・・ 因みに、何故か?5歳児バージョンのヒルドは常時この『ポロ』を着たままだったりするのだが、今はラタニーが『ポロ』を着たままでベッドの上で酔って電池が切れた様に爆睡している。
そして、ラタニーは寝相が良くない様で僕に絡み付いたまま寝ているので、『ポロ』越しに感じる柔らかいラタニーの体の感触が気持ち良くて、健全な男の子にとっては嬉しいやら困ってしまうやらで、
『まあ実際には、お姉さんバージョンのヒルドと寝る時も似た様な感じなんだけど・・・ 流石にヒルド以外の女性と同じベッドで・・・ しかもこんなに密着した状態で寝るなんて・・・ 今夜はなかなか眠れない夜になりそう・・・ 』と呟いていた割には、意外とジンもアルコールの助けも有ってか?早々に寝てしまっていた。
そして、ジンが深い眠りについた頃、つい先日までは居心地の良いリビングだったハズの部屋の隅に、影が集まって形を作ったと言われても疑われない程に真っ黒な何か?が、人らしき姿を形どると、スッと静かにベッドの横に近づき、ラタニーの顔を覗き込んで射殺すかの様に睨んでいたかと思えば、一転して聖母の様に慈愛に満ちた表情でジンにそっと優しくシーツを掛けて、また影の中に滲んで消えた。
ただ、この影に住んでいるかの様に決して表に姿を現さない存在は、ヒルドには認知されている様で、ヒルドもジンにはその存在を伝えた事も無ければ、伝えようとも思っていない存在だった。




