第13話・ジェス兄さん焦って走る。そして国王と宰相が絶望を感じる・・・
その後、バラスト子爵の代理人だと言う小太りした禿げオヤジと、ガラの悪い冒険者達の集団は、家具はひっくり返すわ、アパートの壁や床を剥がして回るわで大惨事! 挙げ句の果てにバラスト子爵の代理人は、
「貴様! 貴様がアノ魔石を隠し持っているのは明白なんじゃ! 隠し場を大人しく白状しろ〜!」と言いながら、手に持っていた乗馬用の鞭で私を激しく殴打し始める始末、それを目にしたヒルドは、神様に口を押さえられて喋れない上に、神様に抱き締められて拘束されているので暴れる事も出来ずに、顔を真っ赤に激昂させて神様を睨み付けながら講義する事しか出来なかったが、
「ヒキ男爵! 貴方は一体何をしているのですかっ!?」とアパート内に慌てて飛び込んで来たジェス兄さんの姿を見て、とりあえずは静観して様子を見る事にしたのか?大人しく神様に抱かれたままになった。
「コレはコレはギルド本部のギルド総長殿、私が何をしてるのかですか? 見れば分かる様に悪質な冒険者の犯罪に対しての調査ですよ!」
「男爵には悪質な冒険者や、冒険者の犯罪に対しての捜査権や逮捕権は無かった筈だ! 第一、男爵が冒険者ギルド本部内で『突然、女性冒険者を拘束して連れ去った!』と聞いて、私が直々に出て来たんです! 男爵はどの様な権限を持って女性冒険者に奴隷の首輪を嵌めて拘束した上、目の前の冒険者にも奴隷の首輪を掛けた上に、その様な暴力を振るったのか? 私に説明してもらいたい!」
「はあぁ? 貴方ともあろう方が、何を言っているのか?私には理解し兼ねますな〜 私達貴族から見れば平民達なんぞ糞虫も同然です。 貴族の私が平民を奴隷として扱う事に何の問題が? しかも、貴族の私をコノ薄汚れた馬屋の様な場所にまで足を運ばせたのですから、奴隷の首輪を嵌められただけで済んだのです。 逆に首を刎ねられなかった事に感謝して貰わないとねぇ〜 まあこの後、私の用事さえ済めば、コノ薄汚れた冒険者の首は私が直々に刎ねてあげましょう♫ それとも、自分で自分の首を刎ねる様に命令して見ましょうか? 泣き叫んで命乞いする姿は見ものですよ〜 ああ、今からコノ薄汚れた冒険者に命令してみましょうか? 私はコノ冒険者の命なんぞには興味などありませんが、総長様はコノ冒険者の命は大切なご様子、まあ仕事とは言え糞虫の命なんぞ守ってやらないといけないなんて・・・ 私には無理ですがね〜 まあコノ冒険者も、自分を平民に産んだ母親を恨んで、貴族である私に逆らった事を後悔して死ねばいいんです。」
「ヒキ男爵!今の言葉は聞き捨てなりません! 」
「聞き捨てならなければどうするのですか?」
「仕方ありません、実力行使しをしてでも貴殿を拘束させて・・・ 」と言い掛けて、ジェスはそれ以上喋る事は出来なかった・・・
目の前に突然現れた鬼女が、・・・ いえ、全身に怒りのオーラを纏って現れたジンの母親であるプラウが、ヒキ男爵の頭を片手で持ち上げ嗤う姿に、ジェス自身も体が硬直して動けなくなってしまったのだった。
「だ、誰だ!・・・ 」と足掻くが、プラウのアイアンクローが簡単に外れる訳も無く、
「私の可愛い息子を虐めているのは、貴方かしら?・・・ 」
「だ、誰だか知らないが! 貴族であり、男爵家当主の私に無礼を働くとは只では済まんぞ! 貴族に手を出した貴様の一族全員!死罪にしてやる!」
「そう? 私の家族や一族全員を死罪にすると言うのね? 困ったわね〜 では『私達を全員死罪にするの?』ってお父様に聞きに行かないとダメですね〜 」とプラウは思案顔をしたが、
「はあぁッ! この薄汚れた冒険者の母親らしいが! 平民の母親なら貴様も平民だろうがッ! 貴族様に逆らったらどうなるかも分からんのかッ! 貴様の親兄弟、親戚一同! 全員死罪にしてやる〜!」とヒキ男爵はプラウに頭を掴まれたまま吠えていたが、自分が奴隷の首輪を嵌めて強引に連れて来た高レベルの鑑定スキルを持っていた女性冒険者に、
「男爵様、不敬にもこのお方を鑑定させて頂きましたが、この方は、現国王様の四女、プラウ様です。」
「はああぁ〜〜〜〜〜〜!? そっ、そんな馬鹿なっ!? この薄汚れた冒険者を、わざわざ連れて来た貴様の鑑定スキルで鑑定した時に、貴様は『普通に平民の冒険者』だと言っていたでわ無いかッ!」
「それが・・・ 再鑑定しますと『現国王の孫』と・・・ 」
「あり得ん!あり得ん! 嘘だ・・・ 嘘だ、嘘だ、嘘だ〜〜〜!」と叫び、ヒキ男爵が意識を手離すと同時に、
「コッチは済んだぞ〜 で、ヒルド嬢だが? 今、物凄い勢いで飛んで何処かに向かって飛んで行ったが、大丈夫なのか?」と言いながら、ガラの悪い冒険者達が破壊の限りを尽くしたアパートの中を見回して『何処から片付けてたら良いんだ?』と呟いていた。
「それ!マジですか?」
「おお,久しぶりだなジェス、マジもマジ!大マジ!」
「!!!」
それを確認したジェス兄さんは、全速力で何処か?に走り去って行ったけど・・・ まあ、ジェス兄さんが何処に慌てて向かったか?は、大方予想が出来るけど・・・ アパートの庭で親父にボコボコにされて縛られているガラの悪い冒険者達も一緒に連れて行って欲しかったな〜
「で、父さんと母さん達は良いタイミングで現れたみたいだけど・・・ どうしたの? 後、妹達は村に置いて来たの?」
「何を言ってるの? 貴方が大怪我して、三日も寝込んでたって聞いて、心配して村から王都の冒険者ギルド本部にゲートを使って飛んで来たら、ジェス君が慌てて出て行くのが見えたから、私達を迎えに来てたジェス君の秘書さんに、
『ジェス君も、大変ね〜、嫌々ながらギルド総長を押し付けられた挙句、総長自ら、あんなに慌てて走り回っているなんて』って言ったら、
『とある貴族が高位鑑定スキルを持った冒険者を違法に拘束して、ジン様のお宅に押し入ったと報告が入りまして、しかもその貴族が、奴隷の首輪を悪用して違法に冒険者を拘束した上に、死ぬまで酷使するとの黒い噂が立っている貴族で・・・』って聞いて、母さん心配して来たんたからッ!」とヒキ男爵の頭を鷲掴みにしたまま、真顔で答えられてしまった。
眉間に皺を寄せて可愛くプンスカと怒っている母親のプラウを宥めて、父親のダンにヒキ男爵を縛り上げて貰った後、ヒキ男爵に騙し討ちで強引に嵌められた奴隷の首輪を外せないか?と聞いみたら、私の首に嵌まった奴隷の首輪を繁々と眺めた後、
「ああ、この程度の呪縛なら簡単だよ」と言った。
「え〜〜〜ッ!本当ですか? 私の鑑定だとこの奴隷の首輪は、帝国で作られた物で、契約者は貿易都市国家の奴隷商人となっています。 この奴隷の首輪を外そうと思ったら、持ち主の奴隷商人を連れて来ないと・・・ 」
「何、心配する事は無い、先ずはそのフードを脱いで首を晒して貰えるかな?」
「はい・・・ 」と言いながら女性冒険者がフードを脱ぐと、あどけない顔をした彼女の頭の上には、可愛い三角形の耳がぴょこぴょこと動いてた。 彼女は猫種の獣人には珍しい魔法使いの冒険者だった。
因みに、彼女はCランク冒険者で魔法使いのラタニーと名乗った。
「さて、二人とも庭に出ようか?」と、父親のダンに言われて大人しく庭に出ると、ガラの悪い冒険者達がオヤジの顔を見てビビっていたが、そんな事は無視して親父に庭に立たされると、親父の右手から伸びた光の剣が、私とラタニーの首を通過した。
その光景を見ていたガラの悪い冒険者達から、一斉に『『『ええ〜〜〜ッ!?』』』と言う驚きの声が上がったが、ポトリと音を立てて落ちたのは首では無く、奴隷の首輪だけだったので、更に驚いたガラの悪い冒険者達は目を白黒させていたし、ある者は泡を噴いて失神してしまった。
その頃、国王と宰相の二人で某貿易都市国家に組した国内の貴族達の対応を協議していた所に、ジェスからの急報が届いた。
「失礼します。 国王様、只今、冒険者ギルド本部ギルド総長のジェスター様が『火急の要件有り』とお越しになられていますが、いかがいたしましょう?」と王宮内の執務室の入口に立つ衛兵が報告して来た。
「通せ!」と許可したものの、国王は『ジェスター本人が来るのは珍しいな!? 悪い知らせでないと良いが・・・ 』と思ったが、国王の予感は当たっており、ジェスターの報告を聞いて思わず天井を見上げると『もしかして今日が王国最後の日となるやもしれぬな!』と呟き、その顔を青くして固まってしまい、
宰相は、ジェスターからの報告を聞き、自分達が待ち受けている未来を想像して、背中に冷たい汗が流れるのを感じて、ただ、自身の両腕を抱いて『ジェスター、して神はいかがしたのか?』と聞く事しか出来なかった。
そして、アルバ王国が建国されて初めて、王国の王都に怒り狂った黒竜の咆哮が、響き渡った瞬間でもあった。




