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 プロローグ 第1話・荒ぶる銀の鬼神との出会い



 

 今朝も、夜が明ける前からその掲示板の前には仕事を求め大勢の人達で賑わっていた。


 ただ、この世界の人達が特別勤勉な訳ではなく、少しでも他の人達よりも楽で賃金の良い仕事を求めて、今朝もこの掲示板の前に我先にと集まって来るのだった。


 その証拠に、掲示板の前に来ると、前日の酒が抜けてないのか?それとも先程まで居酒屋ででも飲んで居たのだろうか?酒の匂いをプンプンさせた者達も一定数以上いたりする。


 ただ、その他大勢の人達はそんな酒臭い連中を無視して掲示板と睨めっこしながら自分に合った仕事の依頼を吟味している。


 私もそんな集団の一人なのだが・・・


 私が『今日はどんな依頼が出ているだろうか?』と、掲示板を見上げていると、チョンチョンと軽く肩が叩かれる。


 後ろを振り返ってみるが、私の肩を叩いたと思しき人物の姿は見えない・・・


『はて?誰かの悪戯か?』などと思いつつも視線を下げると、そこには腰まで届く長いストレートな銀髪を後ろで三つ編みにして纏め、前髪を眉毛のラインでバッサリと切り揃えた背の低い女性が、彼女が装備するには余りにも不釣り合いな大きな両手剣を背負って立っていた。


「おはようバーニャ」

「・・・」バーニャと呼ばれた女性は元気よくコクンと頷く、


「何か良い依頼でも見つかったかな?」

「・・・」つまらなさそうに首を横にフルフルと振る彼女、


「まあ仕方ないか〜 僕達のランクだと中途半端な依頼しか出てないし、それに対して此処は同じランクの冒険者が多いし・・・ 仕方ないから今日も常設依頼になるけど・・・ バーニャはそれでも大丈夫かな?」

「・・・」私の提案にバーニャはコクコクと頷いて同意の意思を表明すると、私が装備するローブを掴んで売店の方に引っ張って連れて行くと、ニコニコとしながらその日足りてない備品を物色し始める。


 彼女と出会ったのはつい3ヶ月前の事なのだが、自分でも『良くもこんなに懐かれたものだ・・・』と不思議に思う、出会いはこのアルバ王国の王都『トロ』に存在するダンジョンの地下30階層に初めて降りた時だった。





 私は、15歳の時に神託の儀を受けると、あらかじめ準備していた事も有り、その3日後には生まれ故郷である村を旅立ち、約半年以上を掛けてアルバ王国の王都であり、王国最大級の巨大ダンジョンが在る王都『トロ』に到着していた。


 その後は冒険者ギルドに登録して、初心者ランク・Fランク冒険者として冒険者生活をスタート、その2年後にはDランクに昇格して、その日初めての地下30階層に挑戦した日だった。





 あらかじめ入手していた地図を頼りにして、地下30階層を探索し始めて早くも5時間が経過した頃だっただろうか?


「そろそろ地上に戻って冒険者ギルドで今日の成果を精算したら、あの屋台とこの屋台で買い物をして、ああ・・・ あの店で注文した例の物は少しは出来ているのだろうか?・・・ 


『全額前払いだ!じゃ無いと仕事はしない!』と言われ、Aランク冒険者ならばまだしも、稼ぎが悪いBランク冒険者ならば支払いを躊躇する様な高い代金を、昇格したばかりのDランク冒険者に請求して来た上に、その金を受け取ったその足で酒場へ直行し、呑んだくれた日々を何日も続けた挙句、その商品の納期期日を守れないなんて! 本当なら新しい装備を身に着けて地下30階層を探索する予定だったのに・・・


 あの怠け者の呑兵衛鍛冶屋め〜!  


 出来上がるのは来週末との事だったが、本当に大丈夫かな〜?・・・


『大丈夫だ!大丈夫だ!ワシを誰だと思っているんだ!そんな注文、後数日で終わらせてやるわあ〜!』と、大声で笑ってはいた・・・ しかも酒瓶を片手に持ったままで・・・


 そもそも、『注文した客としては数日で完成するなら先に仕上げてから呑みに行って欲しいよな〜! しかも本当に後数日で仕上がるのだろうか? 』と心配になるよな〜 」と、そんな独り言を呟きながら地下30階層の通路を何回か曲がった頃、他の冒険者達の怒声が聞こえて来た。




「なにやってるんだバーニャ! もうオークは倒したんだ落ち着け!バーニャ〜!!!」と叫ぶ若い剣士、 


「やめてバーニャ〜!」と泣き叫ぶ、回復系の魔道士だと直ぐに分かる白い魔道服を着た若い女性、


「キャァ〜〜!!」と叫んで、アサシンか?盗賊系だろうか?肌の露出が多い若い女性が、バーニャと呼ばれていた女性に切られて倒れる、


「おい!?・・・」と、それを見てビビる様に一歩後ずさった太った若い男、両手にハンマーと盾を装備しているから重戦士だろうが・・・ 


 詳しい事情は分からないが、私が見ている通りの状況ならば、先ずはコノ重戦士が前に出て仲間達を守ってやるべき状況なのだが・・・


 率先して仲間を守ってやるべき重戦士が、率先して仲間の影に隠れてビビっていた。


 その状況を見て私は思わず彼ら達に声を掛けてしまう。



「おい!大丈夫か? 何か手助けは必要か?」


 何故?私が彼らに声を掛けたか?と言うと、冒険者ギルドに初登録した初心冒険者全員に対して、期間は約2週間ほどのだが、冒険者ギルドが主催する『初心冒険者講習会』と言う名の地獄の講習会が開催されるのだが、その際にキッチリと冒険者としての最低限のマナーと言うか?ルールと言うか?以下の内容が冒険者の最低限の心得として初心冒険者に叩き込まれる。


 ・他の冒険者の獲物を横取りしてはならない!

 ・他の冒険者の狩りを邪魔してはならない!

 ・他の冒険者の生命を脅かしてはならない!

 ・冒険者は助け合わなければならない!


 まあ現実はそんなにも甘くないのだが・・・




「誰だか知らないが助かる! 仲間がスキルを使いすぎて暴走し始めたんだ! スキルは狂戦士!・・・ 彼女は今!バーサーカー状態だッ!!」


「!!!・・・ 」


『クソッ!聞くんじゃあなかった・・・ 稀少なレアスキルな上に、この状況ではメチャクチャ危険なスキルじゃあないか~! しかも暴走中のバーサーカーだなんて・・・ 』とは内心思ったが、彼女の姿を見た時点で何となく『そうではないか?』とも思っていた私は、腰の後ろに挿した2本の剣鉈を引き抜くと両手に構え、若い剣士の横に並んだ。







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