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異世界駅員何でも屋  作者: 六条界
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プロローグ1

 ガタンっ、ゴトンッ!

 そんな音で僕は目を覚ました。どうやら列車に乗っている間に眠ってしまったようだ。     

 列車の揺れ方「おいっ」ってゆすられている感じがして嫌なんだよな。まあ鉄道自体は好きだけど…。

 「まもなく、井河、井河。ご乗車ありがとうございました。次は、終点、秋月に止まります。」

 そんなことを考えていると運転士の間延びしたアナウンスが流れてくる。


 静岡から乗車して三時間半。もはや乗客は僕だけになっていた。

 すぐに井河に到着したがもちろん乗る人一人もいない。列車はすぐに出発した。定刻通りだ。こんな田舎でも列車は定刻通りに出発する。それが感慨深いようにもシステム化された現代社会に対して嫌気がさしたようにも感じられた。


 古びた一両のディーゼル車は、エンジン音をガンガン鳴らして山の中を奥へ奥へと進んでいく。スマホでマップを開くともう県境のあたりまで来ていた。Lineの通知が来ていたので、開いてしばらくいじっていたら、通信環境が徐々に悪くなり、ついに圏外になってしまった。

 スマホから目を離して窓の外を見ようとしたが、トンネルに入ってしまう。これが秋月トンネルか。3,5kmもあるこの路線最長のトンネルだ。

 これを抜けるとやっと終点、秋月につく。

 トンネルの天井から水が漏れだしているのだろうか、窓に水が走っている。

 やがて前方から光があふれてきて、列車はトンネルを抜けた。


 そこで僕は異変に気付いた。

 外が、空が赤いのだ。

 さっき井河を出たのが、午前11時42分だ。まだ12時にもなっていないのに夕暮れとは明らかにおかしいだろう。

 時間を確認しようと、スマホを取り出すが、電源が一向につかない。充電、70%はあったはずなのに。次に腕時計を見るが、針が永遠にぐるぐる回り続けていて意味をなしていない。

 ああ、そうか。これは、幻覚、或いは夢なのか。つい先ほど眠ったばっかりなのに僕は何をしているんだ。そうして、僕は頬をつねるが全く風景は変わらない。どうやらこれは現実のようだ。どうすればいいのだろう。

 「まもなく、秋月、秋月です。ご乗車ありがとうございました。お忘れ物のないように、ご注意ください。」

 そうだ。運転士がいる。そう思い、カーテンで中の見えない運転席のドアをノックする。返事は返ってこなかった。

 ドアノブに手をかけてみると、鍵がかかっているような抵抗感がなかった。思い切ってドアを押してみた。ドアは、ギギギィと音を立てゆっくりと開いた。

 しかし、中を覗いてみても誰もいない。

 ただ時計がチック、タックと鳴っているだけだ。!?時計が、動いている…。

 時計には、1時7分を指していた。なんだこの微妙な時間は…。正しいようで一時間くらいずれているぞ。というか、仮にこの時計が正しいとしたら、この空は一体何なんだ?そして運転士はどこにいるんだよ。


 あきれて、再び窓の外を眺めると、そこには一面の夜空が広がっていた。ど、どういうことだ?まさか、今は、昼の1時じゃなくて深夜の1時だっていうのか。様々な感情が頭の中で渦を巻くが、今は、外の夜空の美しさに目が奪われてしまう。天の川があんなにくっきりと見える。あれは、北斗七星だろうか。都会ではこんな夜空なんて見られない。

「きれい。」思わずそうつぶやいた。


 すると、

 「お気に召されましたか。」

 という声が聞こえるのだった。

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