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後編②

〜シスリーサイド〜


首輪には絶対遵守の力が備わっていた。


だが、それはあくまで肉体的なものであり、精神には影響を及ぼさない。


それ故に、シスリーは堕ちても自我を失うことはなかった。


「なんで……」


――なんでこんな事をするのですか? 


口に出すことさえ許されなかった言葉。


身体は動かない。


手も足も瞬き一つさえ、ままならない。


「貴方のような平民風情が私の邪魔をするなんて許されない事。これは罰よ。罪は償わないと。今日から貴方は私の奴隷。私のために尽くし、私のために動きなさい。分かったら、返事しなさい」


「………ハイ」


愉悦に浸りきった表情を浮かべて。命令を下す王女に、シスリーは首を縦に振って、無機質に返事した。


その胸の内は如何なるものか。


☆★☆


基本的に王女はずっとシスリーを傍に置き、身の回りの世話をさせていた。


平民の彼女に城での立ち振る舞いなど赤子同然。

そのような役割を務めることは、うまく行くはずもなく、手助けしてくれる者もいなかった。


『王女の毒殺を企んだ悪女』としてのレッテルを貼られているシスリーへの周囲の視線は冷ややかだった。


裏で影口を叩く者、中には直接面と向かって暴言を吐く者もいたが、いくら言われても無反応で素っ気ないシスリーの態度は、さらに怒りを買った。


――私が何をしたって言うの? グレン……助けて……


心が捻じ切れそうで、発狂しかけていたシスリーが、ギリギリ持ちこたえていたのは、心の拠り所があったから。


毎日、毎日。


勇者の名前を念仏のように唱えて、救いを求めていた。


そんな日々を過ごす中で、シスリーは王女が最近どうも様子がおかしいのを何となく感じ始めていた。


ソワソワしていて落ち着きがない。


そしてその訳は王女自身が自慢げにシスリーに話した。


「これが何か分かるかしら? シスリー」


見せられたのは、二つの指輪。

片方は真紅に染まりきり、片方はどす黒く漆黒に染まっていた。


王女曰く、この指輪は二つで一セットであり、何よりもその特徴はーー。


「想いを伝え合う素晴らしい指輪! 指輪をつけてもらえば、互いの気持ちを! 私の愛を! 誰よりも理解してもらえる。まさに私にうってつけの宝石だわ。共鳴! コレこそ私が求めたもの! あの方に……あぁ彼が私の所有物(モノ)になる事を想像しただけで、胸が高鳴るわ!」





(………悪魔)





狂っている。


シスリーはこの時、王女が()()に見えなくなった。















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