小さな勇気と優しさ
6人の従者がいた。
あの暴徒の群れに家を焼かれた時も、狼の群れに襲われた時も、寒さと飢えに苦しんでいた時も彼らは強靭に生き延び、僕の事を守ってくれる勇敢で優しい六人。
でも今は…
悔しくて、悲しくて、怖くて、冷たい。
剣のおじいちゃんは絶対に目をそらしちゃダメだって教えてくれたけど、涙が抑えきれずに目の前がユラユラして目が勝手に閉じちゃう。
不意に胸に抱いていたはずの彼女の重さが消える。慌てて辺りを見るけど、代わりに膝にあったのはグリップの木目美しい拳銃が一つ。
なんでこの武器は目の前のアンデッド達に使わなかったんだろう。考えても分からなかった。でも、僕も彼女たちの為に戦わなくちゃいけない。どんなに怖くても、倒せなくても、勇気は大事なんだ。
拳銃を曖昧な知識で構えると不思議と何かが聞こえる。まるで後ろから抱きしめられているような温もりや、周りには優しい気配。ちょうど六人いる。
耳元で囁かれた。
「さぁ坊ちゃん、あたしが補助してあげよう」
涙で前が見えなかったのに声が聞こえてから周りが見えるようになった。怖くてよく見てなかったけど、アンデッドも皆姿が違う。そして…アンデッド達が皆何かと戦ってる?
「八ッハッハ!そんな盾の使い方で疲れていない俺に勝てると思っているのか!」
体が大きくて鎧を着たアンデッドには、衛兵隊長って呼ばれてたハンスおじさんが攻撃を躱しつつ斧を叩きつけていた。
「さぁ坊主!やっちまえ!この場所は俺の陣地だ!」
言われるがままおじさんが鍔迫り合いを始めたアンデッドに向けて銃を向ける。
「ハンス!坊ちゃんが怖がってんだろうが!…ほら、坊ちゃん」
震える手にそっと狩人頭である彼女の手が添えられ、ピタリとアンデッドに狙いが定まる。
「今だよ」
僕は引き金を引いた。
放たれた弾丸は真っすぐにアンデッドの背中に近い脇腹へ吸い込まれ、アンデッドが石のように固くなった。
「流石坊ちゃんだ。今みたいにいい位置なら一撃で倒せる」
頭をなでられた気がする。