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転生古龍の遊者道  作者: 茜雲
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第6話 前世では少年漫画が大好きな色羽です

「どこなのっ!」


 駆ける。駆け抜ける。


 森の中を縦横無尽に駆け抜けていく。


「所々に馬車の幌の切れ端が付いてたから何とかここまで来れたけど……視界が悪い。せめてなんか音でも立ててくれたらなぁ」


 一向に馬車を捕まえられず、思わず愚痴る。早くしないと御者さんたちが危険だ。


 そこで、私の願いが届いたのか、森の奥から巨大な音が響いてきた。


「え、爆発!? 森の中で? ……いや、魔法か。護衛さんは魔法を使えなかったはずだけど……。いや、とにかく行ってみよう!」


 森が揺れるほどの爆発。ただ事ではないのは確かだ。今はそれに望みを賭けるしかない。


 再び森を駆ける。今、私は全力で駆けている。その速度は人間の比ではない。直ぐに、音の聞こえた辺りに辿り着く。


「あの音の大きさからすると、多分そろそろ……いたッ!」


 視界に入ったのは数十以上の魔物の群れ。ミシェルに聞いた話ではここ地域で魔物は珍しいはずなのに。いや、今はそれはいい。


 私は群れの向こうに視線を投げる。そこには御者さんと護衛さんがいた。確かに生きている。


(良かった、間に合った。けど、あの爆発はいったい……)


 見れば、魔物の一角が消し飛んでいる。おそらくはあそこが爆心地。そして目についたのはそのそばに立つ、黒ずめのローブを着た少女……少女だよね? 顔見えないけど。


「き……君は……いったい」


 お、御者さんが私も知りたかったことを聞いてくれた。少女(仮)の答えを聞き逃さない為に、耳を澄ませる。


「私? 私は……通りすがりの魔法少女よ」


 あ、少女で合ってた。いや、それはどうでもよくって……。


「「――は?」」


 御者さんと護衛さんがそんな反応を返す。いや、私も同じ気持ちだよ……。


「ギシャァ!」


 我を取り戻したゴブリンやオークが自称魔法少女へと向かう。仲間をやられたからか、その眼は怒りに満ちている。


 咄嗟に助けようと構えるが、それは無用な心配だった。


「炎の華よ、咲き散れ。ブレイズショット」


 少女が構えた杖の先が光り、そこからいくつもの火球が飛び出した。それは迫っていた魔物に吸い込まれるように命中する。


「ギャァ!」


「ガァアッ!」


 それを受けた魔物は瞬く間に火に包まれた。そうなれば、死ぬまでのた打ち回るくらいしか出来ない。


(へぇ……)


 体格的にはまだ幼さすら感じる魔法少女だが、その魔法の練度はかなりのものに思える。ますますその正体が気になるところだ。


「うわっ!」


 ハッとして声の方を見れば、御者さんたちの方へも魔物が迫る。護衛さんは見た限り満身創痍だ。御者さんでは抵抗する間もなく殺されるだろう。魔法少女は魔物に囲まれており、2人を助ける余裕はなさそうだ。


 そこまで考えた、いや、考える前に私は跳んでいた。


裂空雷弾(れっくうらいだん)! インパルスブライトッ!」


 空中から魔法を放つ。右手から放たれた雷弾は護衛さんたちに迫っていたオークの腹に巨大な穴をあけ、威力を落とすことなく後方の魔物も容赦なく貫いていく。


 貫かれた魔物達は、常に弾丸から放たれる圧倒的な熱量と雷撃に、明らかに弾丸よりも大きな穴を開けて即座に絶命した。


 スタッとおじさんたちと魔物の間に着地する。透過魔法は跳んだ時に解いた。


「おじさん! 大丈夫!?」


「イロハちゃんっ!? どうしてここに……。それに今のは」


「……フィレットのとこの嬢ちゃんか?」


 どうしてここに、か。まぁ当然の疑問だよね。なんて答えよう……。


「んーと、あれだよ。通りすがりの仮面少女だよ」


 仮面着けてないけど。


「お前もかよ……。流行ってんのか? それ」


「ふざけてないで、イロハちゃん、ここは危険だから早く――」


「ゴアアアッ!」


 私を心配するおじさんの声が、目の前に迫ったオークの叫び声でかき消される。ちょうどいい(・・・・・・)


旋風衝脚(せんぷうしょうきゃく)! ストームファング!」


 右足全体に風を、嵐を纏った回し蹴り。蹴りの衝撃と、爆発の様な旋風がオークを吹き飛ばした。周囲の魔物や木を巻き込みながら茂みの向こうまで飛んでいき、やがて見えなくなった。


 ……ちょっとやり過ぎたかも。まぁ仕方ない。


 振り返る。流石にアレを見せられればもう、逃げろ、なんて言えないでしょう。


「癒しの光よ、ヒーリング」


 護衛さんの方に手を翳しながら唱える。すると淡い光が護衛さんを包み込み、数瞬後に消えた。腕の傷は深いものではなかったのだろう、あっさりと治ったようだ。


 ちなみにさっきから魔法の前に唱えてるのが呪文だよ。かっこいいでしょ。夜なべして考えたんだよ。


 え、もはや呪文じゃないって? まぁ呪文って大事なのは言葉よりイメージだし……細かいことは気にしない!


「回復魔法まで……お前、いったい」


「だから通りすがりの……それはもういいか。とにかく、治ったのならおじさんを守ってあげて」


 言いながら剣を抜いて魔物の方へと向かう。念のために剣を持ってきておいてよかった。


 急ごう。魔法少女も、流石にこの数相手ではどれほど持つかわからない。


「おい! 無茶すんな! ここは一点突破か、固まって守りに入るのが定石だろ!」


「ガアッ!」


 突如横から飛びかかってくるウルフ型の魔物。私はそれをあっさり避け、そのまま体を回転させて剣を振るう。


 私としては少し力を込めて、他の人から見れば豪速で振るわれた剣は、ウルフを実にあっさりと2分して見せた。


「大丈夫だよ。じゃ、危なくなったら声かけてね」


 それだけ言って、魔法少女の方へと向かう。もう後ろから制止の声は掛からなかった。






「ぐっ……咲き貫け! ファイアランス!」


 少女が杖を振るえば、細く整えられた火の槍が魔物を貫き、黒炭に変えた。


「キリがない……」


 そう呟く。だがまだ終わらない。そう考えてか、杖をより強く握りしめる。が、その瞬間が隙となった。


「グオアッ!!」


 背後から迫るウルフ。少女は咄嗟に杖を構えようとするが、間に合いそうもない。


「てりゃあッ!」


 そこに割って入って思いっきりウルフを蹴り飛ばした。ウルフはそのまま木に激突し、動かなくなる。


「大丈夫? 魔法少女さんっ♪」


「あなた……確か仮面少女?」


 聞こえてたんだ……。悪ノリだから忘れて欲しいのだけど。


「私はイロハ。貴方は?」


 言いながら迫ってくる魔物を次々に斬り伏せる。


「咲き散れ、ブレイズショット! ……セリナ」


「よろしくっ! セリナ!」


 迫ってきた魔物を一通り蹴散らし、少しの間が出来た。


 どちらからともなく、示し合わせたように、私とセリナは背中をくっつける。


「色々と、話したいことや聞きたいことはあるんだけど……」


「うん、まずはこいつらを……」


「「黙らせる……!」」


 そして、私達は再び武器を構えた。


ここまでお読みいただき、恐悦至極。


魔法少女=イロハだと思っていた方も多いのではないでしょうかw

自分的にはそんなつもりは全くなかったのですが、読み返してみるとまたイロハがバカなことを始めたようにしか見えないですね…。まぁそれがミスリード(んな高尚なもんじゃない)になったのなら結果オーライ。

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