第48話 テンプレ男
「おー! アレが王城か~、中はどうなってんだろ?」
前方に見える王城に感嘆の声を上げる。
周囲を囲う堅牢な城壁と、天を突く様に聳える2つの塔。そしてそれらに護られるように中央に座する天守。
その荘厳な佇まいは、別に王様を崇めていない私でも思わず平伏してしまいそうだ。
「忍び込んじゃ駄目よ? イロハ」
「……流石に見つかるとイロハでも危ない」
後ろから声を掛けられて振り向く。
「いやいや、なんで私ならやりかねないって言い方なのさ」
「「だってやりかねないし……」」
綺麗にハモりやがって……この2人とは1度よく話し合った方がいいだろうか。
「もうっ! ほら、王城は見たし、次行くよ!」
そう言ってさっさと歩き出す。
今、私達は王都のあちこちを歩き回っている。ようは王都観光だ。
私達がティラネルを出たのが9日前。徒歩で10日を見込んでいた王都への行程は、馬車に便乗したことによって8日まで短縮できた。
それ故、闘技大会までは後6日。現状、手が空いてしまっている。
と言っても時間が空くのは予想通り。事前に3人で話し合い、空いた時間で王都観光をすることになったのだ。
そして、その先導は唯一王都に来た経験のあるセリナに任せている。
「セリナ、次は?」
「……確か、この道の向こうに自由市がある」
「自由市?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「……自由に商売が出来る区画。書類さえ提出すれば誰でも店を出せる。1週間ごとに切り替わるから簡単な屋台ぐらいしかないけど、その分飽きないから年中賑わってる」
ふむ。バザーや、祭りの夜店みたいなものかな。
「へぇ……そんなやり方もあるんだ」
ミシェルが商売人の眼をして呟く。
確かに良いやり方だとは思うけど、相応の土地と住民の数があってこその手法だからね? ティラネルで同じことやるのは難しいんじゃないかなぁ。
日本でも、人口の少ない町でこの手のを開催しても、切ないくらい過疎るからね。まぁそれは置いといて……
「面白そうだね。じゃ、そこに行こっか!」
実際面白そうだし、暇潰しにはこれ以上ない場所だ。
それにまだ王都に来たばかりで、何かと必要な物は多い。必需品を適当に見繕いながら歩くのも悪くない。
そうして3人で市場に向かっていると、微かな物音が響いてきた。
「――――っ!」
「……? ねぇ、今何か聞こえなかった?」
「……ん。聞こえた」
「多分そこの路地からだね。……やだなぁ、めんどくさい未来しか見えないよ」
王都観光でいい気分だったところに水を差され、思わず顔をしかめる。
これはあれだろう。多分、私が引き寄せたアレだ。何とは言わないけど。
「……流石、トラブル誘引体質」
何とは言わないけどッ!
「馬鹿なこと言ってる場合じゃない気がするんだけど……」
ミシェルが路地の向こうを心配そうに見つめながら呟く。
……まぁ、そうだね。トラブルだろうがなんだろうが、無視するわけにもいかないか。
それを証明するように、路地の奥から今度は叫び声が響く。
「――いやッ! 放しなさいッ!」
「っ! ああもうっ……!」
半ば自棄気味に、路地の奥に駆け込む。そこで見たものは1人の女の子にたかる男3匹。
「痛いですわ! 触らないでくださいっ!」
「ってぇな。暴れんじゃねぇよ!」
「別に無理なことは言ってねぇだろ? ちょっと俺らに付き合って欲しいって言ってんだよ」
「そうそう、大人しくしてりゃあ何も――」
「――テンプレにも程があるわぁああっ!!」
「げぼはっ!?」
「「ラ、ライナアアアっ!?」」
制止も名乗りも何もなく、勢いそのままに先頭の男を蹴り抜いた。
仲間からライナーと呼ばれたその男は、逆さジョ〇ョ立ちの様な芸術的ポーズを決めながら顔面で地面を滑り、失速したところで、ぱたりと倒れ伏した。
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