第2話
勉強も1位とまではいかなかったが、そこそこ上位だった。自分で言うのも気が引けるが、運動神経も抜群で僕達は優等生だった。もちろんそんな僕たちを妬ましく思う人も居た。
遠足などの行事も入ってくる5月。僕達の笑いポイント獲得数は4月の獲得数を大幅に上回った。
僕の獲得ポイントは4026p。学校・学年・クラス共に1位。
達樹くんは4003p。学校・学年・クラス共に2位。
たった2ヶ月で学校の1位、2位を取ってしまった。この結果には流石の先生方も黙っていなかった。
「1年2組、波多純くん、守谷達樹くん、職員室まで来てください」
校内放送で職員室に呼び出された。全校生徒が僕たちの今後を気にしていた。
『失礼します』
「おお、来た来た。こっちに入ってきてくれ」
僕達を呼び出したのは担任の香坂先生だ。先生の席まで行き、何を言われるのかドキドキしていた。
「君達はコミュニケーション能力が格段に高い。もちろんクラスのムードメーカー的存在になっているのは俺も気付いていた。しかし、まさか学校内で1位と2位を取るほどとは思わなかった。そこでだ。強制はしないが、やる気があるのなら君達に特別授業を受けてもらいたい」
「特別授業?」
「これは他の生徒には秘密にしてもらいたいのだが、放課後、家に帰る前に学校と提携している塾のようなところへ行ってプラスで勉強をしてもらいたいんだ」
「学校の授業以上に勉強するってこと?」
「そうだ。やはり嫌か?」
「僕はいいよ! 成績はそこそこだけど、別に勉強は嫌いじゃないし」
僕は急な話に迷っていた。しかし、達樹くんが行くなら一人じゃない分安心だ。
「達樹くんが行くなら僕も行く。特別授業、何だか楽しそう」
「受けてくれるか! それは良かった。1年生でこの授業を勧めるのは初めてのことだ。授業内容は少し難しいかもしれないが、頑張ってくれ」
『はい!』
先生は安堵の表情で僕たちの返事に喜んでいた。
「あと、教室に戻ったら皆から何を言われたのか質問されるだろう。その時は、初めてTOP3に入った人の証であるバッチをもらったと言っておいてくれ。この授業のことは誰にも言うんじゃないぞ。親には伝えておくから君達の口から言う必要は無い。分かったな?」
「分かりました」
そう言って先生は校章に1と書かれたマークのピンバッチをくれた。
『失礼します』
廊下を歩きながら2人でバッチを眺めていた。すると知らない生徒から声をかけられた。
「君達、波多くんと守谷くんだよね?」
「そうですけど」
「今職員室に呼ばれてたよね? あの話は受けたのかい?」
「え?」
この人の言う“あの話”とは今先生に言われた“特別授業”のことだというのは理解できた。
「ああ、ごめんごめん。僕は6年1組の利賀雪斗。先月まで5ヶ月連続で校内1位だったんだ」
「あ、今月3位だった人」
「アハハ、君達に王座を取られたからね」
僕たちが突然1位、2位を取ったものだからすっかり王座転落といった形になったが、さすが5ヶ月連続で1位をとっていただけある。話しているだけで安心感を与える人だ。
「すみません。で、あの話とは……」
「そうか、口外するなって言われてるもんな。大丈夫、僕もあそこに行ってるんだ。今日も行くから見学に来るかい? っていうお誘いだったんだけど、もしかしたら受けないって断っている可能性もあるから」
この人も特別授業へ通っている人か。だったら話しても問題ないだろう。僕たちは利賀先輩を信用した。
「そうだったんですね。一応10日から行く予定なのですが見学に行っていいのなら行きたいです」
「僕も行ってみたい!」
「そうかそうか! それじゃ、先生に見学のこと伝えておくよ。初の1年生だから皆ビックリするだろうな。じゃ、放課後に校門前で待ち合わせしよう」
「分かりました! お願いします」
そう言って利賀先輩は去っていった。凄く接しやすくて優しい人だった。このことは担任の香坂先生にも伝えた。もちろん快諾してくれて、親にも連絡しておくと言ってくれた。
この特別授業が本当のスパイ養育学校と僕達は知らず。