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ボクがウサギで異世界転生  作者: 似星
1章:洞窟脱出編
6/30

【第四羽】

 分割分の投稿になります。次話は恐らく2日以内に更新されるでしょう。

 今は説明セリフ多めで文字数が稼ぎやすいのですが、それがなくなったらどうなることやら。

 どのくらいの時間横穴を進んだだろう。


 『1時間54分32秒でございます。マスター』 


 ありがとうナビ。大体2時間くらい進んだらしい。基本的に下り坂で非常に歩きづらい。洞窟全体が湿ってて滑るし。何度か転んでナビを悶えさせたのは内緒だ。

 それと横穴の大きさがだんだん狭まってきており、それでもウサギ(プティス)が通り抜けるには余裕なくらい広いけど、人間が通るには一人でもやや窮屈な道である。

 途中でたまに地面や壁を這っているワームをもぐもぐしながら進んでいるのでお腹の減り具合は問題ない。強いて挙げるなら水飲みたい。酸液で喉の渇きが癒えるものか。


 5日間食べ続けたワームなぞ危機にもならず、延々と続く一本道を進むのみ。ようするに飽きてきたんです、すいません。

 そんなボクの気持ちに応えてくれたのか、硬い岩壁が崩れた感じの場所にたどり着いたようだ。小動物が抜けられる程度の小さな穴が空いていて、かすかに空気の流れを感じる。


 『マスター。ここから別の空洞に繋がって……あら?この感じは【瘴気しょうき】でしょうか?』


 ……えっと、ナビ先生?今【瘴気】がどうとかっていうあまりよろしくない発言が聞こえたんですけど?

 前世のファンタジー知識から考えて、どう転んでもいい印象は持てないよね瘴気って。あー、嫌な確信(よかん)がするなー。


 『はい、瘴気です。瘴気自体は最下級の魔物でも認識しづらい程度には放っているものですが、はっきりと感じるほどとなると中級以上の魔物がいるということです』


 ナビの姉御、それは死刑宣告ってもんですぜ?こちとらようやく最下級レベルのステータスなんですぜ?

 へ、へへへっ、ち、ちなみに中級のステータスってどんなものなんですかい?


 『マスター、口調が……えぇと、中級になってくると一概には言えないのですが、数値で表すと中級最下位ほうでも特化した個体は最低能力が2000前後、特化した能力が10000以上と言ったところでしょうか?

 汎用的なステータスの個体になると能力の平均値は6500前後かと。上級寄りになるとそこからさらに5倍以上といったものも存在します』


 ようするに最低でもボクの10倍どころじゃなく強いってことですね、わかります。この先からそんなやつの気配がするのか~。

 見つかったらまず間違いなく死ぬな。うん、絶対に見つからないようにしよう。


 『そうでございますね。強い瘴気は魔物を引き寄せる効果もありますので、ここからはより一層気を引き締めたほうがよいと思います』


 ボス以外にも気をつけなきゃいけないか……まったく、死亡フラグのオンパレードだねこりゃ。



 まずはこの壁の向こうがどうなってるか知る必要がある。気配察知をはじめとした感覚を全開にした状態で息を殺して覗き込む。

 どうやら地面のほうには何もいないようだけど、天井のほうから複数の気配と熱源を感じる。入っていきなりとか流石ルナティック。


 洞窟の天井に張り付いてるものといえば、得体の知れない虫か蝙蝠と相場は決まってるものだけど、異世界だから何がいても不思議じゃない。はてさて。

 落ちてくるワームならボーナスゲームだけど、問題は蝙蝠のように飛行できる奴だった場合だ。飛んでる生き物が相手だと何も出来ずにやられる可能性が高い。

 人間ならなにかしらの遠距離を攻撃する手段が使えるのだろうが、こちとら見た目ラヴリーなウサちゃんだ。遠距離攻撃など持ち合わせていない。


 ともあれ、まずは予想通りに蝙蝠的な生き物かどうか確認しなければ。気配を殺しつつ、熱源感知のサーモグラフィーを視覚で捉えられるように意識して……チラッチラッ

 んー、変な発熱してる虫の巣とかじゃなければ、あの独特なぶらさがりシルエットは蝙蝠だと思う。ナビが言うには下級クラスの瘴気が感じられる魔物らしい。

 数は見えるだけで4体か。蝙蝠として考えれば少ないけど、ボクからすれば多勢に無勢には変わり無いね。さらに制空権もあっちにある状況だ。

 せめて何か遠くに飛ばせる攻撃手段があれば勝利へのきっかけができるかもしれないけど……何かないか。何か――


 『えっと、口から酸液でも飛ばしてみるとか……でしょうか?』


 そ れ だ !


 どうか色んな意味で汚いとか言わないでほしい。今のボクにはどう考えても現状での遠距離手段はそれしかないのだ。

 他に有効的な選択肢があるのならばボクだってこんなお茶の間とウサギ愛好家を敵に回すようなことはしない。……しないはず。しないったら!

 どうでもいいけど、ウサギって大口開けると怖いよね。ウサギのあくびを見て思わず「怖っ」とか口走っちゃったのはボクだけじゃないと信じたい。


 一度引き返して射撃訓練してみた結果、酸の飛距離はいいとこ5m前後といったところだった。前世のテッポウウオの水鉄砲の飛距離が2mくらいなので十分規格外なほうだと思う。

 そんなことを考えながら練習してる最中に【水鉄砲】Lv1を取得してしまったのは笑えばいいのだろうか?


 とはいえ、相手との距離は軽く見積もっても50m以上、中に入ってかなり引きつけてから酸を吐き掛けなければならない。他の3匹を避けながら1匹狙うのはかなり難易度が高いだろう。

 一度発射したら酸液の再装填に10秒くらい掛かる。まず1匹を確実にゲットするまではヒット&アウェイに徹しようかな。


 ――さぁ、ナビ観測手。狩りの時間だ。


 『了解しましたマスター。観測(サポート)を開始いたします』


 狙撃手と観測手によるペアハントという前世の概念――うろ覚えで曖昧ななんちゃって知識だけどね――から意図を読み取ったナビが、ボクの脳裏に戦場となるフロアの仮想マップと敵対勢力のアイコン(軌道予測付き)を送り込んでくる。

 何この子、超有能なんですけど。流石スライムを神様にだってしてみせると豪語するだけのことはある。


 『こちらのマップは現在のマスターの感覚と技能を組み合わせて得られる情報を視覚化したものでございます。力の使い方に慣れればマスターお一人でも同様のことができます』


 なるほど、力を使いこなしたらこれが自力で得られるのか。そんな最上級のサポートをしてもらったらなお負けられないね。

 これで失敗したりなんかしたらスライム以下のレッテルを貼られてしまう。なんとなくそれは嫌だなぁ。

 自力が低いので油断は出来ないけど、彼女のサポートによる安心感がハンパじゃない。これならやれる。やってやる!


 口内で今のレベルで出来る限界濃度の酸を精製する。酸耐性のレベルのほうが高いので最高濃度でもボク自身には影響がない。

 飛ばすのに十分な量が溜まったのを確認してから壁穴に飛び込む。ちょっと開けたフロアまで前進した途端。一番手前の蝙蝠が天井から足を離して凄い勢いで飛んでくる。飢え過ぎだろこいつ。

 最初の1匹を皮切りに他の3匹も続く。狙うは一番手前の蝙蝠だ。絶対外さないという意思を込め、集中力を高めていく。 コオオオォォォォォッ


 彼我の距離はあっという間に10mを切る。9、8、7……ペッ! よし撤退!

 一瞬の静寂の後に液体が何かにぶつかるベシャッという音。直後、洞窟内にジュウウッという何かを溶かす音と「ギイィッ!?」という甲高い悲鳴が同時に響いた。どうやらちゃんと命中したみたいだ。

 こんな洞窟内で水鉄砲を撃ってくる獲物なんて会ったことは無いのだろう。もしくはボクの【美味しそう】で我を忘れていたのかもしれない。特に避ける素振りもみせず正面から酸液を浴びたっぽい。


 急に暴れだして墜落した先頭の同胞に驚いたのか、追随してきていた蝙蝠は散開して離れていく。酸を浴びた蝙蝠は全身ヤケドのような状態になってのた打ち回っているようだ。薄い羽の皮膜はボロボロでもう飛べないだろう。

 無事な蝙蝠達は美味しい獲物だと思ってたボクが得体の知れない攻撃を繰り出したことで、警戒を強めてかなり離れた場所に止まり事のなりゆきを見守る体勢のようだ。ならばありがたくあの死に損ないはいただいてしまおう。


 今できる最高速度で未だ地面をのたうつ蝙蝠の元に突撃をかける。近寄ってみるとこいつボクより一回り大きいんですけど。本当に蝙蝠かこれ?

 っと、アホなこと考えてる場合じゃない。思い切って背中に飛びつき、気持ち鋭くなった気がする歯を思いっきり巨大蝙蝠の首元に突きたてる。がぶりっ!


 グジュリという生々しい肉の感触と血の臭みが口の中一杯に広がってかなり気持ち悪い。そういえばナビのサポートマップの関係で【強嗅覚】全力全開だった……ウエッ

 いやいや、今までに狼やら虫まで生でもぐもぐしてきたんだ。ちょっと血の味が酷いくらいなんだ!もういっちょがぶりっ!ついでに――腹いせともいう――傷口に酸も流してやる!


 「ギキイイィッ!!?」


 という一際大きな断末魔の声。直後に一気に抵抗が弱くなる。よし、これなら引きずって壁穴まで運べるかな?

 羽の骨っぽいところを咥えて壁穴まで引きずる。見た目に反して結構軽いな。やっぱり飛ぶために骨とかスカスカなんだろうか?


 ある程度引きずったところで3匹の蝙蝠が動きだした。隙をつこうと飛び回ったり威嚇するように近づいたり離れたりを繰り返してる。

 いつ飛び掛ってきてもいいように口内に酸を精製しておくが、蝙蝠の羽を咥えているためあまり溜め込めない。

 できればいっぺんに飛び掛っては来ないでほしいなぁ……って思ったら来るのはなんなんだろうねまったく!

 落ち着いて感覚を強めると、蝙蝠達の口元からよだれがだらだら垂れているのを感じ取る。【美味しそう】のこうかはばつぐんだ!チクショウ!


 一旦蝙蝠から口を離して距離を取る。幸い脳裏マップがあるので視界に入れなくても相手の位置はバレバレだ。

 先ほどのように酸を吐きかけるが今回は相手も警戒していたのか避けられたようだ。だけどそれでもいい、今回はこの蝙蝠を壁の向こうに運び込めれば勝ちだから。


 いくら精巧なマップのサポートがあるといっても制空権を握られた多対一というのは超絶不利な状況だ。

 さらに周囲に超音波が飛び交う状況に良すぎる耳が悪影響を受けたのか頭がくらくらしてくる。

 致命的な一撃は全霊をかけて回避できたけど何度か避けきれずに鋭い爪で引っ掻かれた。超痛い。

 それでも蝙蝠達の攻撃の合間を縫ってちょっとずつ獲物を運んでいく。間違いなくナビのサポートがあったから出来た芸当である。


 繰り返される一進一退の攻防だったが、今回はボクの勝利のようだ。辛勝にも程があるけどね。体がズキズキする……


 こうして壁の穴まで戻ってこれた頃には蝙蝠にもつはピクリとも動かなくなっていた。おかげでペースアップできて助かった。

 それでは君の魂はボクが生きるために有効活用させてもらうよ。手と手を合わせて――


 "いただきます"



【基本情報】

 名前:なし 年齢:0歳(生後40日)

 種族:プティス(ローシス・プティス種) 性別:オス


【基本能力値】

 筋力:   203(+31)

 耐久:   190(+35)

 魔導:    98(+47)

 精神:   147(+41)

 器用:   116(+34)

 敏捷:   773(+88)

 感覚:   421(+80)

 幸運:530982


【特殊技能】

 もふもふ:Lv12

 かみつき:Lv5(Lv1UP)

 ひっかき:Lv3

 うさうさ拳法:Lv1(New)

 酸精製:Lv3(Lv1UP)

 水鉄砲:Lv1(New)

 超音波:Lv1(New)


【特殊能力】

 美味しそう:Lv23(Lv1UP)

 雑食:Lv4

 体温調節:Lv2

 健脚:Lv1

 夜目:Lv3

 強聴覚:Lv3(Lv1UP)

 強嗅覚:Lv3(Lv1UP)

 熱源感知:Lv3(Lv1UP)

 音波感知:Lv1(New)

 気配察知:Lv4(Lv2UP)

 抗菌:Lv1(New)

 酸耐性:Lv3

 斬撃耐性:Lv1(New)

 音波耐性:Lv1(New)

 魂核吸収:Lv3

 神の英知:Lv‐Ex

 適応進化:Lv‐Ex


 コウモリは実は1000種類以上存在していて、全哺乳類の4分の1くらいを占めているらしいです。

 ちなみにゲーム等の影響か吸血のイメージが強いコウモリですが、動物の肉を主食にするコウモリは1000種の中のたった3種。さらに血を吸う(正確には皮膚に噛み付きにじんだ血を舐める)コウモリはたった1種類しか存在しないんだとか。魚肉を好んで食べるユニークなコウモリも1種類だけいるそうです。

 基本的な主食は昆虫。主人公とおそろいですね!(ぉぃ)

 次いで果物だったり花だったりの草食コウモリが大多数を占めています。


 あれ、あとがきがコウモリ豆知識のコーナーになってる……

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