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ボクがウサギで異世界転生  作者: 似星
3章:プティスの村興し編
25/30

【第二十三羽】

3章開始です!

あいかわらず不定期更新ですが……

今回はプロローグ的なアレで短めなので手早く書けました。

 ん……んぅー……


 くぁ…………はふ。


 心地いいまどろみを振り払うように小さくあくび――ウサギの大口はちょっと怖いからね!――をしてから前足を思いっきり突き出して体を伸ばす。

 いやー、周囲を警戒しないで熟睡することができるって幸せだな。やっぱり睡眠っていうのはこうでなくっちゃね。


 一連の目覚めの行動をあらかたとり終えてから、傍らで添い寝してくれていた可愛い相棒に挨拶をする。


 『んしょっと、おはようナティ』


 『可愛い……はぅ。ハッ!?こほん、おはようございます。マティアス様』


 ボクとお揃いのロイヤルミルクティ色のゆったりとしたロングヘアにウサ耳を生やした美少女がとろけた表情を取り直してやんわりとした笑顔で挨拶を返してくれる。

 うん、今日もナティの微笑みは目が覚めるくらいに眩しい。


 そういえば、洞窟で人の姿を得てすぐの頃はボクが寝る際、彼女は姿を消したり傍らで立ったまま控えようとしてたんだよね。

 真っ暗な洞窟の中で姿を消されると不安になったり、かといって寝ている側でずっと立ったままでいられる状況が落ち着かなかったりしたもんだ。

 それから自然と寝る前のお喋り(ピロートーク)をするようになって、目線を合わせやすいようにとだんだん添い寝するような形を取ってくれるようになった。

 ナティは眠る必要が無いからボクに合わせてくれてる形だけの添い寝だ。いつか本当にしたいという野望に燃えている。


 「きゅっきゅゆー」


 「クルルル、キュルル」


 続いて部屋の隅に設置された止まり木で休んでいた愛娘、シュノワにおはようの挨拶。

 最近、鳴き声によく「キュ」が混ざるようになってきた。周りできゅゆきゅゆ言ってるから影響を受けだしたのかな?


 この子は全身が艶のある濡羽色の羽毛に覆われている珍しいメラニズムのフクロウで、ウサギの耳のような羽角がチャームポイントだ。

 そういえば、名付けの際にフォレストキングアウルから進化して今の姿になったわけだけど、種族名も変わったりしてるのかな?


 『シュノワちゃんは新種に進化したようで、種族名は存在しないようでございます』


 なんと、シュノワは完全無欠の唯一種になってしまったらしい。

 でも見た目は前世でいう【ウサギフクロウ】っぽいよね。ってことはこっちの世界だと【プティスアウル】って感じになるのかな?うん、我ながら安直すぎる。


 『あ、たった今シュノワちゃんの種族名が【プティスアウル】と認定されたようです』


 『うん――ん?……んんん?』


 ……えっと、なんか某なんちゃって拳法以来のやらかした感が……


 確かにボクとナティの名付けが原因で進化したわけだから新種に名前をつける権利があるっていうのは理解できるけど……

 ごめんねシュノワ、こんなことならもうちょっと真面目にカッコいい種族名を考えてあげればよかった。

 フォレストキングアウルからプティスアウルって……逆に退化しちゃってないか?でも家族としての繋がりが増えたみたいでお父さんちょっと嬉しい。


 耳をぴこぴこ振ってやるとシュノワもウサ羽――羽角のことだけど、もうウサ羽でいいよね?――をぴこぴこ振り返してくれた。

 ここ数日、シュノワはウサ羽でコミュニケーションを取るのがお気に入りなのだ。

 さらにナティも混ざってウサ耳をぴこぴこしだしてって、なんだろうこのメルヘンな状況。でも思いのほか楽しいからしばらくやめる予定はない。


 それから――


 「きゅゆー」


 「「「きゅゆー!」」」


 帰郷してから、ボクの一日はこうやって家族や仲間達と挨拶することから始まるのであった。

 うん、やっぱり朝の挨拶は大事だよね。清々しい気分になれる。


 無事に弟妹達と再会できたのは本当に喜ばしいことだ。

 それもこれも弟達と一緒にやってきたプティス達のおかげだよ。彼等は家族の命の恩人――恩プティス?――だし、しっかり恩返ししないとね。


 プティスは危機感知と逃げ足以外はほぼ動物界最底辺と言っても過言じゃない。流石にアンダーワーム1匹よりは強いけど。

 狙う難易度や危険度の割に毛皮は比較的綺麗で柔らかく、肉も美味しいというのだから人・人外を問わず様々な生き物から狩りの標的にされるんだとか。

 それが生後1ヶ月ちょっとの仔プティスとなればなおさらだ。なのにほぼ欠けることなく弟妹達と再会を果たせたのはまさしく奇跡と言っていいんじゃないかな?


 その奇跡はみんなが逃げた先とプティスのちょっとした習性が(もたら)したものだ。

 プティスは天敵が多い生態だからこそ、逃げ延びた者を仲間として自分達のなわばりに受け入れることがあるらしい。弟妹達が子供だったというのも受け入れられた一つの要因だろう。

 特に過去になわばりの仲間を失った経験があるプティスほどその傾向が強いんだとか。


 ただ、この習性は確実なものじゃない。

 例えば、餌場が少なかったり最低限の生活も困難な環境で育ったプティスは生き延びるためかなわばり意識が強い。

 環境が人を作るという格言はプティスの生態にも当てはまるみたいだ。


 つまり、天敵は多いけど餌場が豊富で比較的生活水準の高いこの草原には弟妹達が受け入れられる土壌があったというわけだ。


 弟妹達は3箇所ほど別々の場所で受け入れられていたんだけど、ある日ボクが進化したことで【領主の庇護】が作用して急激に力を身につけた。

 その力が時に事前に察知してみんなで避難することができたり、弟達の力に気づいて魔物のほうが逃げ出したりといった結果に繋がったようだ。


 うん、弟達はボクと違って【美味しそう】も普通のレベルだからね。そりゃ普通自分より強い力を感じ取ったら逃げるものだよね。うん。


 閑話休題(それはさておき)、先日【領主の庇護】で繋がった影響かボクの強い悲しみの感情を感じ取って駆けつけてきた。ということみたい。

 【領主の庇護】で力を借りられる分、主の危機や激しい感情が伝わったりすることもあるってことかな?

 まあ、これはあくまで個人的な仮説の域だけど、あながち間違いでもないんじゃないかと思ってる。


 ……さっき「ほぼ欠けることなく」って言ったと思うけど、実は1匹だけここにいない子がいる。

 それは銀雪のような鮮やかな白い毛並みの一番ボクに懐いていた妹……そう、別れる直前まで一緒に遊んでいたあの妹ちゃんがいなかったんだ。


 でも、安心してね。ナティの過去を見る力を借りて草原中を駆けずり回って妹ちゃん捜索をした結果、安易に帰ってこれない場所にいるだけで無事だってことは判明したから。

 あの襲撃のあと、妹ちゃんだけは他のプティスに遭遇できず、別の肉食獣に追われることになってしまった。でも体力も尽きて絶体絶命というところで助けられたんだ。――人間に。


 そう、彼女を助けたのは人族の少年だった。

 エルフ……エフェルト族以外の人種族は初めて見るからボクには基準がわからないけど、身なりも乗ってた馬車も上質だったらしい――安心のナティ情報だ――から、もしかしたら貴族のお坊ちゃんなのかもしれない。

 助けられたあと、妹ちゃんはこの少年は安心できると判断したのか、重なる逃走劇による疲労で力尽きたのか気を失ってしまった。

 少年はその場で従者――護衛?――らしき人間に頼んで妹ちゃんに治療を施し、周囲に彼女の家族らしきプティスがいないか探索しだした。なんだこの少年、聖人か。


 結局家族らしきプティスは見当たらず、妹ちゃんみたいな仔プティスを一匹残して行くのは危険だと判断したのか、少年は妹ちゃんを保護することにしたらしい。

 妹ちゃんを乗せた馬車は森に向かって動き出した。うん、ボクが抜けてきた森だね。ナティが言うには森の向こうに人族の町があるんだとか。


 実は森の中には最低限とはいえ馬車が抜けられる程度に道が整備されてる箇所があったらしい。ボクが通ったルートは良くて獣道くらいしかなかったけど。

 ちなみに時系列から推測した結果、馬車が何事もなく森を抜けたすぐあとにボクが洞窟からの脱出に成功して森に入ったという、ミラクルなすれ違いが起こっていたことが判明した。

 いやまぁ、ボクが入った場所から馬車道は遠かったからどっちにしろすれ違ってたんだろうけど。


 妹ちゃんやその少年本人を直接見ていないからこれ以上詳細な情報はわからなかったけど、一連のやりとりから悪い人間ってわけでもなさそうだ。

 とはいえ、心配なものは心配なので、この場にいる家族の安全を確保したら一度様子を見にその町まで行ってみようと思ってる。

 うーん、エルフの集落の時みたいに夜の闇に紛れてこっそり行動すれば大丈夫なんじゃないかな?……多分。


 んー……なんかあれ以来、家族の安全に対して過敏になりすぎてる気がする。

 とはいえ、プティスにとっては石橋を叩いて渡るくらいの慎重さを持ってしても一瞬の油断が命取りになる世界だから、きっとボクの行動は普通だ。うん普通普通。



 あ。どうも、マティアスです。

 プティスのリーダーっぽいこと始めることになりました。

 現在は穴掘り建築研究中のため、全員で一つ屋根の下ならぬ一つ穴の中で暮らしてます。

知られざるプティスの生態の1つが明らかに!(笑)


何か白い妹ちゃんルートが外伝になりそうな雰囲気になりましたが、今のところ予定はありません。ご了承ください。

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