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ボクがウサギで異世界転生  作者: 似星
2章:森を駆け抜け帰宅編
22/30

【第二十羽】

 更新がかなり遅くなってしまい申し訳ありません!(土下座)

 累計100万PVを達成しました!本当にありがとうございます★

 どうも、マティアスです。

 蛇使いの男とやらは全身タイツの変態野郎でした。


 ボクとナティの精神衛生上あまり見たくないし、シュノワの教育上あまり見せたくない。

 けど、こいつから感じる強烈な瘴気は間違いなく強敵だとわかるから、そういうわけにもいかないのが辛いところ。


 長く緩いウェーブの入った髪をオールバックにして背中に流し、ヘビとかワニみたいな爬虫類っぽい瞳をギラつかせている。

 そんな目でこっちを凝視しながら舌なめずりするサマは非常に気持ち悪い。……あ、舌が二股に割れてる。


 その全身は何度もいうように、妙に体の線が強調されるような蛇柄のぴっちりタイツみたいな物に覆われている。

 両腕は非常に……というか異常に長い。しかも普通の人間なら手指がありそうな場所には蛇の尻尾のような物がひょろりと伸びている。


 ああ、うん。なんかもう蛇使いっていうか怪人蛇男って感じだ。


 『マティアス様、この男……獣人族でございます』


 そういつものように告げるナティも気持ち引き気味に見えるのは気のせいだろうか?


 『獣人族……動物から人化した種族の総称だよね?』


 『はい。あの男はまだ人化が半端なので、完全な獣人とは言えませんが』


 『見た目はどちらかと言えば魔物って感じだよね』


 獣人族は長い歴史の中でゆっくり進化していった獣達が、弱体化した魔物や人族との実力差を逆転させはじめたことによって人化した種族だ。


 そんな背景から獣人族は基本的に肉食獣から人化した、狩りと戦いに重きを置くような奴等ばっかりらしい。戦闘民族ってやつだ。

 元が野生動物だからか魔法を扱う個体はほとんどいないみたいだけど、身体能力が非常に高くて特に日光で弱体化することもない。魔法が衰えた現在ではかなり戦闘能力の高い部類に入る。


 余談だけど、人族達は獣人族と魔族の区別がついていないので適当に見た目で魔族と獣人族を分類してて、両種族がごっちゃになってるとか。

 まぁ、獣っぽい見た目の魔物から人型になった魔人もいるから仕方がないと思う。ボクだってナティがいなかったらわからないと思うし。


 それはともかく、目の前のこいつはヘビの獣人ということになる。

 顔以外は人の体の形をとったヘビって感じで、それが逆に変態感を助長している。顔もヘビだったらまだ怪人で済まされてたのに。


 「聞いてるゼェ……テメェは俺様の食いモンを横取りしやがったんだってナァ?だったら、俺様がテメェを喰うのは当然だよナァ。ヘヒヒヒッ」


 はい?こいつの食料を奪った覚えなんかないんだけど。んー、返り討ちにして食べた動物のことか?

 ……なんてね。エルフの集落からずっと蛇がボク達を監視してたんだ。なら、こいつの言ってる食いモンってのは蛮族の群れのことなんだろう。

 前世だって大きな蛇が人間を丸呑みにすることがあったんだから、こいつが人喰いしたとしても驚くに値しない。


 『……マティアス様』


 『ん、どうしたナティ?』


 『この男……シュノちゃんの――』


 「ああ?なんだその黒いのハヨ?」


 ナティが喋ろうとしたところで蛇男が言葉を重ねてくる。ナティの美声を遮るとか、死にたいんだろうか?

 こいつにはナティの姿も見えないし声も聞こえないんだから仕方ないんだけど。腹に据えかねる事実は変わらない。


 「コイツ、あのクソドリに似ててムカついてくるぜ――先に喰っちまうカ」


 「クイィッ!?」


 そう言った途端、蛇男の殺気が膨れ上がる。それと同時にシュノワが背中から飛び上がって空中へ退避した。

 いきなりあれだけの威圧を叩きつけられたら逃げて当然だ。むしろ竦みあがって動けなくならなかっただけ上出来だと思う。


 「チッ逃げやがった。追い詰めて喰ってヤル……ヒヒッ、この毛玉を喰ったあとで――ナァ!!」


 油断はしていなかった。

 だから蛇男がいきなり飛び掛ってこようが問題なく避けられる……はずだったんだけど。


 『マティアス様っ!?』


 回避動作の終わりに大きくバックステップで蛇男との距離をとった。直後、右の肩から体に掛けて痛みが走ってドロリとした感触が体を伝ってくる。


 『いつっ……大丈夫。ちょっと切っただけだよ』


 痛って……でも、回避そのものは無駄じゃなかったかな。見た目に反して傷は大したものじゃないみたいだ。もし直撃していたらとかは考えたくない。

 とはいえ、体が小さいからこれくらいの傷でも結構な大怪我だ。さらにちょっとしたダルさと【毒耐性】が成長する感覚。腕にも毒があるらしい。

 【自動再生】と【毒耐性】がなかったらもっと深刻な事態に陥っていたはずだ。徐々に傷の痛みと体の倦怠感が消えていく。


 「へぇ……生きてるのかよ。大抵のヤツは今ので終わっちまうんだけどナァ」


 なんで避けきれなかったんだ?正直、あいつの攻撃はボクの目で捉えられないほどの速さじゃなかった。

 腕が伸びたとか?んー、多分それもあるんだろうけど、それだけじゃない気がする。


 「っていうか、俺様の毒を受けてなんで普通に動けるんダヨ。へひひっありえネー」


 いやいや、効いてるよ。普通じゃありえない速度で治っていってるだけで。


 「ンーン、なかなか旨ぇ血じゃねぇか。へひっ、もっと飲みてぇじゃねぇカァ!!」


 腕についたボクの血を舐めとりながら変なこと言うんじゃない、気持ち悪い。

 思わず鳥肌を立てているとまた蛇男が突っ込んでくる。やっぱり目で追えない程じゃない。


 今度は両腕を使って連続で攻撃してくる。動き自体は単純だから問題なく捌いていく。

 なのに、さっきほどじゃないにせよ体に傷が出来ていく。痛い……けど、なんとなく違和感の正体がわかった。


 あいつの攻撃動作には全然音がないんだ。どういう原理なのかわからないけど風を切る音すらしてなかった。


 ボクの感覚で一番強いのはやっぱり聴覚だ。なんだかんだで暗闇の洞窟内でも聴覚には頼っていたから、まず音で判断するクセがついているのかも。

 だからか、他の感覚が十全に発揮されている状態で聴覚だけが機能しないという不自然な状況。そこにヤツが腕を伸ばす攻撃を繰り出すことでボクの感覚を狂わせていたんだと思う。


 嫌な偶然が重なったもんだ。大事になる前に気づけてよかったよ。幸いなのはあいつが計算づくでやってる感じがしないところかな?

 とりあえずあいつの手札は1つ掴んだ。さらに――


 『あの男の解析が終わりました。情報をお送りします』


 ナティの言葉と同時に蛇男の情報が頭に流れ込んでくる。この戦いの役に立ちそうな情報と、それとは別の情報。

 ……へぇ、こいつは……さっきナティが言いかけてたのはこのこと(・・・・)か。



 ボクの脳裏に映ったのは大きな蛇――多分こいつの元の姿だったんだろう――がシュノワの母親より一回り大きなフクロウに襲い掛かる光景。

 その大フクロウはその不意打ちで翼や胴に傷を負いながらも必死に抵抗し大蛇と互角に戦っていた。けど、徐々に動きに精彩を欠いていき……最後には殺されて丸呑みにされた。


 恐らく食べられたフクロウはシュノワの父親だったんだろう。周囲の光景もここのような森の中だった。

 つまりこいつはシュノワから両親を奪った張本人ってことになる。


 蛇が食事の為に狩りをして、狙われたのが偶然シュノワの父親だっただけ。あれは弱肉強食の範疇で自然の摂理だ。

 それに対してボクがこいつを怨む筋合いなんてないけど、ボクはシュノワの親代わりだ。この蛇をどうにかするだけの力も持ってる。


 元々倒すつもりで行動していたのは変わらないけど、今ので心構えが大きく変わった。

 これはただの害獣駆除であり、筋違いな敵討ちであり、個人的なウサ晴らしだ。それがたまたま森やエルフの集落の平穏に繋がるだけ。


 そう決めてひとつ息を吐くと、心が冷えていく感覚。でも奥のほうに熱く煮え滾る何かを感じる。これが【殺意】ってものなのか?

 ふと、なんとなくナティビアに意識を向けたら、しっかりと目が合った。

 彼女は何も言わず小さく微笑み、優雅な一礼を残してその可憐な姿を風景に溶け込ませていく。


 ナティビアの姿が完全に見えなくなると同時に、なんとなくボクの心を暖かい何かが包み込んだような気がした。

 たったそれだけのことで、冷えた心の中に余裕が生まれてくる。……らしくもなく気負いすぎてたかな。殺意バリバリで敵に襲い掛かるなんてキャラじゃないよね。

 それじゃあ、もうちょっとボクらしく(・・・・・)やるとしますかっ。


 「へひっ、次はその鬱陶しい脚を切り落として喰ってや――グゥッ!?」


 はいはい、お喋りなんかしてると自慢のよく回る舌を噛んじゃうぞ?っと、もう遅いか。

 余裕をかまして滑らかに動く下顎を頭突きで閉じてやる。その衝撃で二枚の舌先が宙を舞う。


 「ガファッ!テベェ……俺様に傷をつけやがっダナ!!」


 蛇男は逆上して再度襲い掛かってくる。その力と速さはかなりのものだけど、やっぱり動きは雑だ。

 むしろ頭に血が上った分、余計に単調になってるから避けるのが簡単になった。

 相手の苦し紛れの反撃をしっかり避ける。ちゃんと対策を打ったので今度こそ避け損なわない。


 超音波によるエコーロケーションを利用して音で正確な距離を測る方針に切り替えた。

 音が無いならこっちから出してやればいい。手品の種さえわかっちゃえばそれなりに対処方法は考え付くもんだ。


 腕を振り切って無防備な横腹を伸ばした爪で斬りつける。

 傷口から血が噴き出したが、体を覆っている鱗のせいで深くは斬れなかった。ちっ、硬い……

 蛇男はさらにキレて喚きながら襲い掛かってくる。駄々っ子かよ。


 蛇男の攻撃をあるいは躱し、あるいは脚で弾いてやり過ごす。

 ただ、隙を見て反撃をするものの、硬い鱗に覆われているせいでこっちの爪や打撃は効果が薄い。だったら――


 ――魔法ならどうかな?


 「グァアアア!!熱ッアァアアア!?!?」


 動きながら放った魔法の炎が蛇男の顔面を包み込んだ。のたうちまわるくらいには効いたみたいだね。

 洞窟から出て以来、魔法を使う機会が多かったから今では動きながら魔法を放つことも可能になっている。


 とはいえ、動きながら使う魔法はまだ簡単なもの――人族が使うような単純な属性魔術みたいなやつ――しか使えないし威力もまだまだ物足りない。


 炎が消えると顔面の一部が少し爛れた蛇男が鬼のような形相でこっちを睨みつけてくる。今までとは別のベクトルで気持ち悪い。やったのボクだけど。

 それにしても、爪よりはダメージがあるみたいだけど挑発くらいにしかなってない。頑丈すぎるだろこいつ……


 「クソクソクソクソクソ……クソがっ!食いモンの分際で俺様をコケにしやがって……グチャグチャに潰してから喰ってヤル!」


 睨みながら小さくぶつぶつとつぶやいている。しっかり聞こえてるけどさ。


 「調子こいてんじゃネェゾ。俺様が苦戦してんのはこの体の所為ダ。この体は面白ぇが動きにくいんダヨ。だから元に戻っちまえばテメェなんざ……」


 そうつぶやいた瞬間、蛇男に異変が起こった。体から黒いモヤのようなものが出てきて蛇男を包みだし、どんどん大きく広がっていく。

 モヤが蛇男を包み隠しきる前に、ヤツの比較的人間寄りだった顔が鱗に覆われていくのが見えた。


 「テメェなんざ、テメェなんざテメェなんざテメェなんざテメェなんざテメェなんざ……テメェナンザアアアァァァァァァアアアア!!!!」


 呪詛のような言葉の羅列が獣の咆哮のように変わった直後、急速にモヤが晴れていき、中から巨大な蛇が現れた。

 蛇男は獣人。爬虫類だけど獣人ったら獣人。爬虫人族とか語呂悪いし、種族を分けすぎても管理しきれないのです……


 自力で人型化しただけあって身体スペックは高いものの、まだ人の体に慣れていないのでいまいち動きが雑です。

 手足の一切ない蛇からの進化したのですし、そんなもんじゃないかなーと。


 恐らくもっと時間が経ってから出会っていたら別の結果になっていたかも……マティ君がもっと強くなってて瞬殺劇になってた?ハハ、マサカー。


 ※活動報告にも書いておりましたが、リアルの事情で投稿が不定期になります。ご了承くださいませ。

 でもさっさと蛇戦は終わらせたいですね……早く可愛いところが書きたいです。

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