【第十八羽】
ちょっと時間が足りなくて技能欄がまとめ切れていないので、後日変更があるかもしれません。ご了承くださいませ。
週間にも5位にランクインさせていただきました!
皆様のおかげです、いつもありがとうございます★
2016/1/13:寝ぼけて忘れていた雛との食事シーンを追記しました。本編には多分影響ありません(笑)
エルフ達に別れを告げ、戦場跡で蛮族の【魂核結晶】を回収したあと、ボク達はそのまま森の中を進んだ。
予定では森を抜けて草原に出られるのは、今のペースならあと2日といったところらしい。
エルフの集落も森のそこそこ深い場所にあるはずなんだけど、それでも2日だ。この森も結構広いね。プティスの身ではなおさらだ。
で、今は昨夜の蛮族襲撃で碌に眠ることもできず結構疲労していたので、ちょっと早めのランチタイム中だ。
本日のメニューは猛獣の返り討ち肉 森の香草なんちゃってタルタルステーキでございます。もちろんこだわりの100%レアでいただきます。
別名は蛮族風ステーキ。先の件への皮肉がバッチリ効いた自慢の一品だ。
たしか本来は馬肉を使った料理でヨーロッパあたりが起源だったはず。ユッケの元になった料理なんだよね。
とりあえず、お肉を挽肉にして香草を練り込んだ分、まだ文明的になったと思おう。
生肉に香辛料や香草を練り込んでそのまま食べるなんてメニュー、一体誰が考えたんだろうね?
どうにか臭みが抜けないかなー?と思いつきでやってみるボクもボクだけど。
ちなみに雛フクロウは血抜きばっちり味付けなしの普通の生肉である。
ボクは味見もしてない謎料理を家族に振舞うメシマズキャラじゃないからね。
まぁ、ちょっと雛にはあげれない理由もあるんだけどさ。
挽肉にした分、もにもにした食感が面白い食べ物だった。味はまぁ……生をそのままよりは美味しかったかな?香辛料を使ってないんだから仕方がない。
ちなみに蛮族や返り討ちにした猛獣の【魂核結晶】を吸収した今のステータスがこちら。
【基本情報】
名前:マティアス 年齢:0歳(生後47日)
種族:ノーブレス・プティス種 性別:オス
【基本能力値】
筋力: 82003(+63607)
耐久: 74137(+55972)
魔導: 45112(+28304)
精神: 60397(+38872)
器用: 80346(+59801)
敏捷: 57349(+32867)
感覚: 58333(+28673)
幸運:537690(+51)
【特殊技能】
もふもふ:Lv25(Lv2UP)
かみつき:Lv18(Lv3UP)
ひっかき:Lv15(Lv3UP)
うさうさ拳法:Lv10(Lv3UP)
強撃:Lv5(New)
酸生成:Lv12(Lv1UP)
水鉄砲:Lv9(Lv2UP)
超音波:Lv12
千里眼:Lv2(Lv1UP)
解体:Lv5(Lv2UP)
木登り:Lv2
【特殊能力】
美味しそう:Lv46(Lv3UP)
雑食:Lv10(Lv2UP)
騎獣:Lv3(Lv2UP)
魔導の理:Lv6(Lv3UP)
体温調節:Lv7(Lv1UP)
剛脚:Lv9(Lv2UP)
暗視:Lv11(Lv1UP)
強感覚:Lv12
熱源感知:Lv10(Lv1UP)
音波感知:Lv12
気配察知:Lv13(Lv1UP)
抗菌:Lv12
毒耐性:Lv5(Lv3UP)
酸耐性:Lv12(Lv1UP)
火炎耐性:Lv1
音波耐性:Lv12
魅惑耐性:Lv5(Lv4UP)
苦痛耐性:Lv2(Lv1UP)
自動再生:Lv3(Lv2UP)
魂核吸収:Lv6(Lv1UP)
神の英知:Lv‐Ex
適応進化:Lv‐Ex
【特異能力】
領地経営:Lv1(New)
領主の号令:Lv1(New)
領主の庇護:Lv1(New)
高貴なる血:Lv-Ex(New)
なんというか、成長2倍の恐ろしさよ。強かった個体を選りすぐったとはいえ、26体しか食べてないんだけどな……
「ぴちちちっぴちちちちっ」
ん?なんか雛フクロウがちょっと離れた場所でご飯食べたいの合図をしてる?
なんだろうと思いながら肉を持って近づいたらあぐあぐされた。でも肉は食べた。
『んー?雛は何がしたいんだ?』
『もしかしてお肉を投げて食べさせて欲しいのでは?』
『あー……って、え?なんで?』
『フィリトゥリさんにやってもらったのでしょう』
なるほど……あの人にすでに仕込まれてたのか……そういえば楽しかったとか言ってたね。
「ぴちちちっぴちちちちっ」
ああ、はいはい。やってあげるからちょっと待ってね?
両前足で挟んだお肉を雛のほうにアンダースローでゆっくり投げてやる。すると……
ととととっ――ひょいっぱくっ
おおー完璧なジャンピングキャッチだ!肉を飲み込んだあとに褒めてーって駆け寄ってくる姿も最強にチャーミングだね。つい褒めちゃうよ――
――ってどういう仕込み方したんだあの人!?
何が恐ろしいってたった一晩でここまで出来るようにしてるのが恐ろしいよ。
動物の調教師かなんかだとしたらもの凄い才能の持ち主だ。フィリトゥリさん、おそろしい子!
その後、もう2、3回やらされたけど、満足したのか残りは普通に食べてくれた。
さてお腹も膨れたことだし、ここからが本題。そのものずばり――雛フクロウの名づけだ。
昨晩は思いっきり邪魔されて延びちゃったからね。もったいぶらず今から決めよう。
『というわけで、第一回。雛フクロウの名前を決める会議を始めたいと思います!』
『かしこまりまし……え?1回で決まらないんですか?』
『ごめん、つい勢いで』
『そうですか……こほん、マティアス様は何か案はございますか?』
とりあえずナティはボクの案から聞く姿勢のようだ。多分良い案だったらそれに同意するつもりなんだろう。
『んー、そうだねぇ……フクロウだし、【福太郎】とか?』
『フクタロー……何となく素朴な可愛いさを感じますが、雛ちゃんは女の子でございますよ?』
『え?マジで?』
そういえば雛フクロウの性別とか全然気にしてなかった。
そもそも鳥の雛の性別鑑定ってプロでも難しいって話をどこかで聞いたことがあった気がする。当然そんなものボクには無理だ。
こんなことでも改めてナティの凄さに驚かされつつ、序盤に考えた第5案までは全部却下だな。さらば太郎シリーズ。
『それじゃあナティは何かある?』
『えっと、それでは……【ヒナちゃん】などいかがでしょう?』
『雛だしわかりやすいね。たしかに可愛いし女の子っぽい響きなんだけど、ちょっと独自性に欠けるのが気になるな』
『あの、まずはフクタローに独自性が存在するのかを議論する必要があるのでしょうか?』
『うんごめん。1案目のジャブだからって手抜きすぎた。じゃあ【福子】とか――』
『たしかにフクタローよりは女の子の名前になりましたね。でしたらそのまま【フクちゃん】でも――』
こんな感じでナティとあーでもない、こーでもないと名付け会議を進めていく。これはこれで楽しいひと時だね。
ちなみに、当の雛フクロウはボクを枕にしてシエスタである。邪魔をしてはいけない。
『――というわけで会議の結果、雛フクロウの名前は【シュノワ】で決定ってことでいいかな?』
『はい、意味も響きも可愛らしさも申し分ない素晴らしい名前だと思います!』
シュノワという名前の経緯は、前世のフランス語で【フクロウ】と【黒】を意味する単語を繋げて縮めたものだ。
さらにナティ曰く、こっちの世界の古代語で【安らぎ】を意味する言葉がシュノワというらしい。
安らぎの黒フクロウ、シュノワ。うん、さすがナティと一緒に考えた名前だ。きっと雛フクロウも気に入ってくれると思う。
「くぁぁっ――…………ぴちちっ」
おっ、タイミングよくシエスタが終わったみたいだ。さっそく起きた雛フクロウに名前を教えてあげようっと。
「きゅっきゅゆ。きゅゆーん」
「ぴち?ちちちちっぴちちちちっ」
「きゅゆきゅゆっきゅ!」
「ぴちちっぴちちちちっちちちちっ」
……しまったー!雛に名前を伝える手段がない!なんだろうデジャヴを感じる。
うーん、雛に直接名前を書き込むわけにはいかないしな……ん?
そうだ!意味はないかもしれないけど、光の文字を応用して魔法で雛フクロウの体に名前を書いてみよう。それなら伝わるかもしれないし、痕も残らない。
キミの名前はシュノワだよーという思いを魔法に篭めて雛フクロウ――シュノワに送り込む。
淡く光る文字はシュノワの体に触れるとスゥっと溶けるように消えていく。完全に文字が消えたその直後――
「ぴちちち?ぴちち、ぴぴぴぴ!」
唐突にカッとシュノワが光り輝いた。これは……進化!?
『マティアス様の魔力と名付け効果で進化するようでございます』
『生まれて2日で進化か……さすがうちの子だ!』
『もう完全にパパですね、マティアス様』
『君もね、ママ』
『はぅ……』
そんなやりとりをしている間に進化の光が弱まっていく。一体どんな進化をしたのやら。フクロウじゃなくなってたりしてね。……付けた名前的にそれはやめて欲しいなー。
「クゥ?クゥルルルっ」
完全に光が収まると、そこには一回り大きくなり、艶やかな濡れ羽色の羽が生え揃った――よりフクロウらしくなったシュノワがいた。麗しい金の瞳がよく映えている。
何故か頭の飾り羽っぽい部分――羽角っていうらしいよ――がウサギの耳みたいな形になってる。なんか、ちゃんとボクを親だと思ってくれている証みたいで嬉しくなっちゃうね。
キョロキョロしたり羽を広げてみたりウサ耳羽をぴこぴこ――そこ動くの!?――していたシュノワは、一通り確認し終わったのかボクに擦り寄ってくる。喉がクルクル鳴ってて可愛い。
思わずボクからもすりすりしてしまう。しないわけがない。せざるを得ないね!
『シュノワ――シュノちゃん、大きくなって……』
『うんうん、立派に成長したね。生後2日だけど』
ちなみに体長はボクと同じくらいになってる。つまり30cm前後だね。
これからどんどん大きくなると思うと嬉しい反面ちょっと寂しい。いつかこの子はボク達の元を巣立っていってしまうのだろうか?
まぁ、そんな未来のことは一旦置いて置こう。
シュノワとのすりすり合戦を思う存分堪能したあと――徐に離れた木の枝を魔法で斬り飛ばす。
数秒してボトリと落ちてきた木の枝には太い縄上のモノが巻きついている。まったく、あんな杜撰な隠れ方でボクが見つけられないとでも思ったのかな?
枝が地面に落ちて数秒の沈黙のあと、ボクを囲うように3箇所から枝に巻きついていたようなモノがボタボタと落ちてきた。
――そう、蛇だ。まだら模様のツヤ光した鱗を持つ蛇が合計で4匹くらい、隠れてこちらを観察していたんだ。
蛇といえば10日くらい前に蛮族達を追い出したとかいう蛇使いの男のことが浮かぶ。というか、間違いなく関係してるだろ。蛇の行動が人為的過ぎる。
本当にうちの家族団らんの時間を邪魔するのが好きなやつだね……ボクとは相性とか合わないみたいだし、さっさと潰しちゃおう。
そんなことを考えてるのを察知したのかどうかは知らないけど、四方の蛇は一斉にボクとシュノワに襲い掛かってくる。
ボクは問題ないとしてシュノワは――って、飛んだ!シュノワが飛んだ!?
凄いな進化……生後2日で空も飛べるとか……
進化って白いもふもふが増えたり、肉きゅうが出来たり、耳がもっと動くようになったりするようなものだとばっかり思ってたよ。
……なんだよ、シュノワのあれこそ進化って感じじゃないか。体も大きくなってるし。贔屓か。進化さんのエコヒイキー!
なんて考えてたら4匹の蛇に次々と噛み付かれる。うわー大変だー!……なんてね。
蛇と戦うことなんて最初からわかってたから毒草入りタルタルステーキ――割と毒性の高い草詰め合わせ――なんて食べて【毒耐性】を上げてたわけだし。
……そんな毒入り料理なのに、今までで食べた何よりも文明的で割と美味しかったというのがちょっと悲しくなってくる。
人型になれるようになったら、ちゃんと料理の勉強もしてもっと美味しいものを食べよう。うん。
さて、こいつらどうしよ――
ズドンッ!
「――キシャっ!?」
急に襲ってきた音と衝撃にちょっとびくっとしてしまう。急に大きな音が鳴ったらびくってなるよね?……ならない?
見れば、ボクに噛み付いてきた蛇の1匹が黒い何かによって地面に縫い付けられていた。
「クゥルルルルゥ!!」
黒い何かはシュノワだった。空中から蛇の1匹に飛び掛ったらしい。
フクロウというか、猛禽類の足の握力は非常に強い。その力は獲物を瞬時に圧殺してしまうほどだ。現にシュノワが押さえつけてる部分が潰れてるし。
それにしてもやっぱり――
『なんか、シュノワの進化はボクより全然進化っぽいね』
『いえ、どちらかというと……なるほど、わかりました。シュノちゃんは【領主の庇護】の効果を得ています!』
へ?なんで?ボクまだ領地なんて築いてないよ?
『つまり、シュノちゃんがマティアス様の家族であると正式に認められているのでございます♪』
『あれ?【領主の庇護】ってそういう効果だったっけ?』
【領主の庇護】の効果をよくよく思い出してみよう。
領民がボクの近くか領地にいるとボクの能力値の5%の恩恵を受ける。
でもまだ領地が無いから領民設定も効果がないはず。
でも、ボクの親族だけは恩恵が……あ。
もしかして、親族って別に血の繋がりがなくてもいけるってこと?
たしかにシュノワは(多分)母フクロウから託されてるし、本人もボクを(多分)親だと認めてくれてる。当然ボクはシュノワを家族だって思ってる。
ようするに養子縁組みたいな関係が成立してるってこと?おぉぉ……
「きゅゆゆー!」
「キュルルルゥ!」
つい喚起の雄たけびが出ちゃったよ。いやぁ、家族の絆みたいなものが、こうして形として現れてくれると嬉しいもんだね。
それじゃあ、シュノワが確保してくれた1匹だけ残して親分のところに案内してもらいましょうかね?
ようやく雛フクロウに名前をつけることができました。
名前の案をくださった方々。ご協力ありがとうございました!
進化後の見た目のイメージはウサギフクロウとなっております。まさにこの作品にぴったりな可愛い子です!
これからも日々成長するシュノワともどもよろしくお願いします★
最近は生食は危険とかでユッケが食べられるお店がほとんどなくなりましたね。
みなさんも食べ物に当たってお腹を壊さないようにご注意くださいませ。




