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ボクがウサギで異世界転生  作者: 似星
1章:洞窟脱出編
12/30

【第十羽】

 できたてほやほやです★(2016年1月3日9時53分現在)

 ちょっと話の進み具合も文字数も中途半端なのが気がかりですが……


 おかげさまで10000PV達成しました!ありがとうございます★

 何故か地下洞窟にいる巨大なフクロウ。こいつから瘴気とかボクを食い殺す意思みたいなものをビシビシと感じる。こいつが瘴気の主で間違いないはずだ。


 その巨大フクロウは、未だにボクを襲おうと狭い通路に首を突っ込んで暴れている。その目は血走ってて激しく鳴き叫ぶクチバシからは唾液が飛び散ってる。

 かなり狂気じみててめちゃくちゃ怖い。出口がこいつの後ろになければ速攻で引き返してたと思う。


 『あれは、フォレスト・キングアウルという猛禽類でございます。少々様子がおかしいようですが』


 『フォレスト……ってことは森に住んでそうなんだけど、なんでこんなトコにいるのさ?』


 『産卵のためでしょう。産卵の時期になるとキングアウルのつがいは洞穴(ほらあな)などの地下を好んで巣穴とし、オスはメスの為に食料を運び、メスはその食料を食べながら2月ほど卵を温め続けます』


 『ということは、こいつはその産卵期のメスってことか?今回たまたまこの洞窟内を巣穴にして卵を温めているところにボクが現れたものだから怒ってるのか』


 前世でもよくある話だ。卵や子供の世話をしている最中の動物のメスは非常に気が立っていて、近づくのは危険だからね。

 でも、ボクのその考えをナビは否定する。


 『いえ、この様子や顔のやつれ具合を見ると長いこと食事を取っていないのでしょう。それこそ何十日という長期間に渡ってです』


 『え?オスがこのメスの為に食料を狩って運んでくるんだろ?』


 『憶測になりますが、このキングアウルのつがいのオスは外で別の何かに狩られてしまったのでしょう。珍しい事例ですが、全く無いわけではありません。

 空腹を紛らわそうにも自身の出す瘴気で獲物から近づいてくることはほぼありません。マスターがその例外でございます』


 つまり、何日も飲まず食わずでこのフクロウは卵を温め続けてきたのか。卵の元を離れるわけにもいかず、ギリギリ空腹に耐えてたところにボクがやってきたと。

 さらにボクには【美味しそう】だなんてふざけた能力がある。しかも最近Lv30の大台を超えたものが。そんなものが効果を切ることもできず常時垂れ流しだ。

 限界までお腹を空かせた状態でそんな美味しそうなプティスがうろちょろしていたから、このフクロウは理性を吹っ飛ばしてしまったんだろう。


 『ボクが来たからか……』


 別に故意に悪事を働いたわけじゃない。けど、やっぱり自分の所為だと思うと胸のあたりがもやもやした気分になる。

 だからって食われてやるわけにも行かない。ボクにだって生き延びて、強くなってやらなきゃならないことがあるんだから。


 『たとえマスターが訪れていなくても結果は変わらなかったでしょう。空腹に耐えられなくなったメスは高い確率で今まで暖めていた卵を食べてしまいますから』


 『せっかく耐えて暖めてきた卵を食べちゃうのか?……いや、もし飢え死に寸前まで追い詰められたら自分の卵でもご馳走に見えちゃうかもしれない、か』


 ボクもなんだかんだで酷い目には遭っているけど、能力のおかげもあって、なんだかんだで飢餓という状態を経験したことはない。

 前世の食生活なんて、今と比べたら極楽浄土もいいとこなので言わずもがなだ。むしろ思い出したら今の食生活が辛くなるので出来れば忘れてしまいたい。


 『気は進まないけど、元々コイツは倒すつもりでここまで来たんだ。見方を変えればこれはチャンスだよね?』


 『そうですね。フォレスト・キングアウルは個体によっては上級の魔物すら捕食の対象になります。この個体はそこまでではないようですが、マスターでも苦戦を強いられていたでしょう』


 負けるとは言わないあたり、ボクを立ててくれているのか負けず嫌いなのか。とにかくナビとのやりとりでちょっと罪悪感が消えてくれた。

 それじゃあこのフクロウには悪いけど、今回は弱肉強食の掟ってことでここで楽になってもらおう。



 とはいっても、ボクよりも何倍もの巨体な上にあんな状態の猛禽類に近づくのはちょっと厳しいものがある。

 なので今回はせっかく覚えた魔法を主体にして遠距離から戦わせてもらおうと思う。


 巨大フクロウは未だ通路に頭を突っ込んでボクに喰らいつこうと暴れている。多少周囲が削れて土砂になってはいるものの、通路を崩すほどではない。

 そんなことも理解できなくなっているくらい正気を失っているのか……本来なら壁を掘り崩すくらい余裕なのに、それすらできなくなっているくらい弱っているのか。


 割と動物は好きなほうだったのもあって、たとえボクを食おうとしているヤツでも飢えて暴れている状態の生き物というのはあまり見ていたいものじゃない。……できるだけ一発で済むように気合を入れよう。


 この世界の本来の【魔法】には、人族の【魔術】のように属性という括りなんて存在しない。あえて属性をつけることはできるけど。

 魔法の根源はこの世界の魔神の力だ。その魔神が一体何の為に魔法を用いてきたか?それはこの世界の創造だ。つまりその気になれば、ここの魔法は世界の創造の範疇でなんでもできる……はずなんだ。


 はず。というのも、この世界で生き物が魔法を発現させてから現在に至るまで、魔神と同等レベルの魔法が使われた例は一つたりとも存在しないからだ。

 さらにボクが今知っているのはそんな魔法の初歩だけだし、覚えたのはつい数時間前だ。そんな状態でも十分なくらい使い勝手がいいのだから末恐ろしい。


 魔法の基礎知識――当然のように現代では遺失している――としてその力の根源が創造である。ということは知っているけど、初歩の段階では「想像したものに限りなく近いものを実在する現象で代用する」というのが精一杯だ。

 多分これを聞いた前世の日本人は「それ十分チートだろ」という感想を持つと思う。ボクもそう思ったもん。……ボクの感性が未だ現代人寄りかどうかはわからないけど。



 今回ボクが使おうとしているのは高圧電流……に近い何かだ。一瞬で脳を焼き切り、心臓を止めるほどの一撃。そのくらいしか洞窟内の安全を確保しつつ一瞬で命を刈り取るイメージが咄嗟に浮かばなかったとも言う。


 一応アンペアだのボルトだのジュールだのという現代知識は学生レベルで知ってはいるけど、正直なところ電気のことなんてそこまで詳しくはない。パソコン使ってた割には機械オンチだし……これは関係ないか。

 それじゃあまともに電気なんて使えないんじゃないかというと実はそうでもない。この世界の住人(主に魔人)は火や水や電気を操る魔法を使えるけど、現代人チックな科学知識を持っているわけじゃない。


 前世で読んでいた作品(ラノベ)のひとつに、異世界の魔法を前世の現代知識で非常に強力なものにアレンジして大活躍する。という感じの作品を読んだことがある。

 日本のオタクっていうのは意外と【科学的根拠】ってヤツが大好物なので、その作品も結構人気があった。かくいう自分も創作活動の過程でそういう知識を検索してたクチだ。あんまり身につかなかったけどさ!


 この世界でそれに近い性質があるのは【魔術】のほうだ。あっちは構成から発現までの工程を術式で半ばオートマチックにしているらしいから。世界の理を正しく理解して術式を構築したほうがより効果的に、効率的に使うことができるんだと思う。


 ただ、正しい魔法(・・・・・)はその辺の知識が曖昧でも世界のほうからある程度効率のいい形に整えてくれるという、魔術の研究者が聞いたら卒倒するであろう仕組みになっているだけだ。


 魔法についてのあれこれを反芻しながら、出来る限りの速度で魔素を取り込み魔力を練る。練った魔力の行き着く先を想像(イメージ)していく。

 今のボクの技量だと、発動するまでが長すぎてこんな状況でもなければとても使えない。魔法は知識があればすぐに上手く扱えるというものでもないことはさっきの練習で確認済みだ。


 魔法の工程には知識だけではどうにもならないものがいくつかある。それも今後の課題だね。っとと、そろそろ集中力を上げないと。【魔術】に比べて強力な分、色々とマニュアル操作だから気をつけないとね。


 だいたい1分は掛かっていないくらいで最終工程までこぎつけられた。今のボクにしてはなかなかの好タイムだ。今のところしっかり立ち止まってないと魔力が練れないし実戦で使える速さでもないけど。あとは照準を定めて撃――あれ?


 確実に魔法を当てるために改めて巨大フクロウを視界に納めていざ発動!という時になって、こいつからなんとも言えない違和感のようなものを感じた。

 うん、あいつは間違いなくボクを食い殺そうとしか思っていない。それに間違いはない。ないんだけど……ああ、そうか。こいつは――


 『……マスター?一体何を……!?まさか、発動直前の魔法構成を改変しているのですか!?』


 ナビが何か言っている気がするけど、今集中を切らすわけにはいかない。失敗したら感覚的にきっとヤバイことになるだろう。

 なんとなくそれがわかってはいるけど、手を加えた時点でもう途中でやめられる段階じゃなくなってる。

 大丈夫。【魔導の理】の効果も手伝って、そこまで無謀っていう感じでもない。あとは気合でやりきるだけだ!



 そして――その魔法は発現した。

 何も無い空間から青白い光を放つ雷撃が巨大フクロウめがけて殺到していく。

 遮二無二通路を崩そうとしていたフクロウは避ける間もなく、その猛る雷の群れに蹂躙されていく。

 フォレスト・キングアウルは「キフィッ――」という詰まった声を漏らし、一瞬ビクンッと痙攣したその体を後ろによろめかせ、力尽きるようにその場で崩れ落ちた。



 『マスター!ご無事ですか!?どこか痛くありませんか!?体に異常はありませんか!?』


 フクロウが倒れるのを確認した直後、ナビがとても切羽詰まった口調で声をかけてくる。さっきのでかなり心配させちゃったみたいだ。

 ナビはボクの体調くらい簡単に把握できるだろうに。それを忘れて取り乱すくらいのことだったか。しっかり反省しないと。


 『うん。今のところ特に異常はないよ。心配させてごめん』


 『もうっもうっ本当に心配したんですから!発現寸前の魔法の構成を改変するなんてもっと先の段階なんですからね!』


 『本当にごめん。もうこんな無茶なやりかたはしないよ』


 『いえ……マスターがご無事ならなによりでございます。それより、何故急にあのような無茶(こと)をなさったのですか?』


 ナビの言葉に、今回の無茶の成果を確かめに行く。倒したフクロウのところだ。

 ……うん、なんとか間に合ったみたいだ。こいつはちゃんと生きている(・・・・・)


 今回は発動寸前だったから、この魔法の基礎である「電撃」という部分をいじることは出来なかった。だからその電撃がもたらす効果と威力の調整を改変したんだ。


 生き物の体というのは大体脳からの命令を電気信号という形で流して体を動かしている。だからこの魔法の電撃を対象の電気信号を遮断して麻痺させるという効果に変えた。多分効果が解ければ普通に動けるようにもなる、はずだ。

 ……調整が甘かったのか、気絶もしちゃったみたいだけど。


 『このフクロウさ、ボクを殺そうとしてたのは間違いないんだけど。理性がなくなってるはずのあいつの目がさ、なんというか、誰かの為に行動してるやつの目に見えたからさ』


 『こちらのフォレスト・キングアウルが、飢餓状態であるにも関わらず、誰かのためにマスターを狩ろうとしていたと?』


 『うん。だからそれを確かめるまで、こいつを殺すのは保留しようと思ったんだ』


 ボクの考えが正しかったら、このフクロウは尊敬に値する凄いやつだ。それを確かめるため、こいつの巣に向かおうと思う。

 主人公はちょっと派手な状態異常(麻痺)魔法を覚えた!


 厳密に言うと【高圧電流】という言葉は誤用みたいなもの(電流なのに圧ってなんだよ的な感じ)らしいのですが、そこまで電気に詳しい主人公じゃないし、こっちのほうが伝わりやすいからいいかなーと(笑


 次回は流石に10時更新できないかもしれません……

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