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ボクがウサギで異世界転生  作者: 似星
序章:こんな経緯で転生編
1/30

プロローグ

 本日初投稿させていただきます[似星](にぼし)と申します。

 今回は投稿テストとしてプロローグを投稿しますが、本格的な更新は正月明けからになると思われます。多少は前後するかもしれません。

 それ以降もあまり更新速度は速くない(基本長時間労働なうえに仕事中に執筆とかできる環境でもない。おまけに遅筆。)ので早く書けても3日に1回くらいの更新になります。

 そんな本作ですが、よろしくお願いします。

 普段座る安物の椅子よりはそこそこ柔らかいと感じる座席。

 絶妙にゆるくもしっかりと締められたシートベルト。

 そして――激しくランダムに揺れる空飛ぶ乗り物の内部。


 そう、ここはとあるジャンボジェット機の内部。

 ただいま高度10000mの高空から現在進行形で落下中である。

 初めて乗った飛行機でいきなり墜落事故とか、本当に勘弁してほしい。

 今まで特に不幸体質ってわけじゃなかったはずなんだけどなぁ……実は今までが最高に幸せな環境で、そのツケだったりするとか?


 できるだけ乗客達の不安をあおらないように平静を装った機内アナウンスが英語と日本語で同じ注意を繰り返す。

 もう何度同じ言葉を繰り返しているだろう?無限ループって逆に不安になるよね。

 なんて不謹慎なことを考えていたら一際激しい振動が起こり、ふと窓の外に目を向けてみた。

 すると、今まで航空機の翼として職務を全うしていた鉄の塊が動力エンジンを道連れに殉職だか飛び降り自殺だかしている光景が飛び込んでくる。なかなかアクロバティックで見事な回転だなぁ。

 いやはや、普通の墜落事故ではそうそうお目にかかれないと思われる絶望的な景色だね、こりゃ。


 「ああ、こりゃ不時着も難しそうだ」


 なんとなく誰も聞いてやしないのに、つい口に出してしまった。

 ただでさえ安定していない機内がさらに不安定になり、そこかしこから悲鳴や怒声が響く。

 元翼だった場所から我先にと離脱していく黒煙と、未だ脱出どころか席を立つことすらままならない乗客たち。

 こういうのを阿鼻叫喚の地獄絵図って表現したらいいんだろうか?


 『ザザッ……乗客の皆様はあわてずライフジャケットの着用を………』


 どうでもいいけど、こういう緊急アナウンスって録音されたものなんだっけ?

 そりゃ周りがあわててる中で、冷静に同じセリフを同じペースで繰り返せるわけだ。


 え?お前が一番あわててるように見えないって?

 そりゃまぁ、翼の真横にある窓際の席に座っててさ、窓から見えてた翼が豪快にパージする光景なんか見ちゃったらさ。諦めもつくってもんでしょうよ。

 今の僕にできるのはアナウンスの指示に従ってライフジャケットを着込んで、不時着の衝撃から生き残っちゃった場合パターンに備えて軽症で済みそうな姿勢を模索することだけだ。

 もしも生き残ったとして、運よくどこかに流れ着いたとして、骨折や大怪我なんてしてたらまず間違いなく救助前に力尽きるだろうし。


 「30年か、短いようで……やっぱり短かったかなぁ」


 一人暮らしをして、好きなものを食べて、好きなものを着て、好きな本を読んで、好きな音楽を聞いて、好きなゲームをする。

 適当に生活するために毎月適当に生活できるだけの稼ぎを得るため仕方なく好きでもない仕事を繰り返す日々。

 一度社畜に挑戦してみたものの、立派な歯車(しょうもうひん)になりきれなかったから、永遠のアルバイト戦士――いわゆる社会の底辺人生――を楽しんでいた。

 それも毎月25日以上働くのが面倒くさくなって副収入目的で同人ゲーム製作とかラノベ執筆とか挑戦してみた時期もあったっけ。……あの頃は若かったね。

 

 個人的には悪くない人生だったと思う。でも、学校も就職先も好きにはなれなかったな。

 恋人なんてものはついに二次元のみの存在でしかなかったけど、それなりに仲良く喋ったり遊びに行ったりできる女友達には何人か出会えた。

 まぁ、そんなお友達も彼氏作って結婚して、どんどん疎遠になっていったけどさ。……寂しくなんてないやい。


 運動も勉強も並だったけど、足の速さだけは少し自慢だった。

 100m走で陸上部員に勝利するミラクルだって起こしたこともある。いわゆる動けるオタクってやつだね。デブではない。

 それを機に、とある男子生徒達からイジメを受けるなんて経験もしたけど、正直なところもう相手の顔も名前も覚えていない。


 そんな高校生活を卒業後、先のイジメの所為かその場のノリか、なんとなく学生生活に嫌気がさしていたので高卒で就職することになったものの……

 就職先の大手二歩手前くらいのその会社は黒かった。ああ黒かったなぁ。3年間も続けられた自分を褒めてやりたいくらい真っ黒黒助だった。

 詳細はわざわざ思い出してまで語りたくはない。毎月――酷い時は毎週レベル――社員が誰かしら()めていって、どこからか新たな子羊(生贄)が連れてこられる環境といえばわかってもらえるだろうか?

 あれはきっと黒魔術の一種だったに違いない。おかげで人並の贅沢――社員クラスの月給――なんてなくても幸せはあるんだな~。なんて謎の悟りを開けたんだからあの体験も悪くないことだったのかね?そうだったと思い込もう。


 その後のアルバイト生活が天国のように感じたもんな。普通の店舗、普通の同僚、普通の店長、普通……やや安い給料。日常というものはなんて素晴らしいものだったんだ!

 とか考えながらも数年後には月25日の労働がだんだん面倒くさくなっていくわけですが。あー、僕はだらだらするのが大好きなダメ人間だったんだー。


 それはさておき、お世辞にも良い人生だったとは自分でも全く思えないけど、そこまで悪くもなかったんじゃないかと思える。

 そもそも3食好きなものが食べれて、寝床があって、短いながらも趣味の時間まで確保できてて、これで不幸もクソもないよね。


 その趣味の一環とやらでつい勢い余って「無駄に貯まった貯金で海外旅行しよう!」などというバカな計画を立てたうえに実行しなければもう少し長く生きられたのだろうか?

 だってそんな考えを実行しなかったら今頃この飛行機に乗ってないしね。人生初のパスポートを手に入れてニヤニヤしてた過去の自分を殴ってやりたい。


 そもそもなんで外国行こうって思ったんだよ、大して英会話もできないクセに。

 これが若気の至りってやつか。今をときめく30歳だもんな、ハメのひとつも外すか。

 しかも海外行きの目的がとある国で開催される超クオリティが高いコスプレイヤーが集うコスプレサミットに参加――当然撮影目的だけど――するためとか。格好つかないなぁ。


 さすがの僕も萌え~な絵が何枚も描かれたスケッチブックに遺書を書くのもなんだかなーと思うので、心の中で先立つ不幸を詫びるだけで許してもらおう。

 はぁ、持ち主が死んだら自動的に爆発するHDDハードディスクドライブとか開発しとけばよかった。もし生き延びて家に帰れたら本気で研究してみよう。




 さて、気のせいかな?さっきから「ゴガンッ!」とか「バゴンッ!」とか普通の墜落事故ではおそらくありえないであろう音を立てながらこの飛行機かんおけ、滅茶苦茶揺れてるんですけど。

 なんだかすぐそこの壁がギシギシ音を立てているような気がする……というかむしろギシギシどころかメキメキって音が鳴ってるよな。

 ……え?マジですか?だんだんこの機体ひしゃげていってませんか?なんなんですか?死ぬんですか?

 いやいやいや、普通エンジントラブルくらいじゃこんな状況にならないでしょ?

 おいアナウンス、黙ってないで何とか状況説明しやがってください。いや、「ザー……」じゃなくてさ……。


 流石に目の前で墜落どうこう以前の普通じゃありえない光景を目の当たりにしたら、悠長にアホなこと考えてる場合じゃないとわかる。

 わかるけど……こんなもんどうしろっていうんだよ!?


 反射的に外に目を向ける。いつの間にか高気圧にも耐えられる的な素敵な窓に亀裂が入っていた。

 だいぶ高度が落ちてきたのか、現在は厚くやや暗い雲の真っ只中だった。

 そんな状態でも機内よりは情報が得られるような気がして濃霧のような雲を見つめていた。その時。


 「なんだ?あれ……?」


 雲以外何も無いはずの濁った視界の中で、何か黒と白が斑に歪んだなにかが見えた…気が……した………



★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 



 う…んん……


 あれ?いつの間にか寝ちゃってた?何で寝てたか覚えてないんだけど。

 いや、むしろ気を失ってた?なんだ、久しぶりに徹夜でゲームでもやってたかな?


 んー、視界がやたらと低い。というか薄暗い。今はうつぶせで寝てる感じな状況かね?

 落ち着いて深く呼吸をすると土の香りが広がる。

 いや、なんで土臭いのさ。ボクの徹夜でゲームで寝落ち論がいきなり破綻したぞ。


 外で寝てた割に体のどこかが痛むわけでもない。まったくどんな状況だったか覚えていない。

 ボクは確か……なんだっけ?あれあれ?


 もっこもっこ


 まあ待て落ち着け。ゆっくりと思い出してみよう。

 まずは自分の名前から、ボクの名前は……あ、ダメだこれ。最初の一歩から思い出せない。

 じゃあ年齢は?来月で30歳になるかならないか、まだ20代だった……らいいなぁ。

 性別は男……のはず。むしろボクみたいな女とか自分で嫌だ。

 血液型はAB型……あれ、B型だっけ?そもそも自分の血液型とか気にしたことあったっけ?

 好きなタイプはロングヘアのおっとり系お姉さん――ポニテだとなおよし――だ。


 えぇいっ、すごい曖昧じゃないか!好きなタイプだけ無駄に具体的な断言口調なのがなお腹立たしいわ!


 もっさもっさ


 趣味は読書とゲームと音楽鑑賞。特技はこれといって……あ、足が速いこととか。

 将来の夢もこれといってなかったはず。いやきっと思い出せないだけだ、そうに違いない!……いや無いわ。

 未来の予定はいい歳こいてまったくの未定。引きこもりではないがやや情けない人生を送っている。


 これはあれだね。典型的な真面目系クズってやつだね。

 少なくとも正義の味方のつもりはない。だからって悪の権化を気取る予定もないけど。


 もっふもっふ


 つい最近、夏の思い出づくりに……どこかに行こうとしてたんだよ。うん。どこだったっけ?

 むむむ、ところどころすっぽり抜け落ちたかのように思い出せない。凄い不思議で新鮮な感覚。

 一体何が起こったんだ?とりあえず一時的な記憶障害的なやつってことなんだろうか?


 無理に思い出そうとして頭痛に見舞われる……なんてことはないなぁ。

 というか逆に、今まで相当悩まされてきた慢性的な頭痛を感じない。えらくスッキリしてる。

 それは非常に嬉しいことだけど置いといて、まさか自分が記憶喪失なんてものになるとは思わなかったな。これも貴重な人生経験ってやつだね。


 ふっわふっわ


 で、だ……さっきからボクの視界の端にもこもこで、もふもふで、ふわふわな物体が映るのはなんなのだろう?

 いや、視界の端どころか両隣に密着してるんだけどさ。不快感はない、むしろ気持ちいい肌触り。しかも暖かい。

 決して悪いものじゃないんだろうけど、何故だろう。なぜだか凄く認識しちゃいけない予感がする。

 でもそれを含めて状況確認しないことには先に進まないだろうから不吉な予感を押しのけて横を向いてみよう。チラリ。


 ……巨大な毛玉がそこにありました。いやいやまてまて、ボクと同じくらいの大きさの毛玉ってなんだよ。

 しかもこの毛玉、なんと生きてるっぽいのですが。規則正しく少し膨らんだりしぼんだりしてます。やっぱり呼吸してるよね?

 さらに視線を上に持っていくとまるでウサギの耳みたいなものが伸びてます。時折ひこひこ動いてて無性に可愛いです。というかウサギの耳です。



 ってウサギだコレ!?



 いやデカすぎだろウサギ。一体何メートルあるんだよ。いやボクと同じくらいだから170センチ前後?

 でも横顔をよく観察してみると、小学校の飼育小屋で見た子供のウサギに近い幼い顔立ちな感じがする。

 え?こいつら人間様と同等のサイズで仔ウサギ気取るつもりなの?

 あ、目が合った。「どうしたの?」って感じに小首をかしげるお隣さん……えぇいくそう。可愛い!


 よく見ると毛玉と地面の間からちょこんと覗いてる前足っぽいものがいーちにーいさーんしーいごーろーく……ろく?

 いやいや、今のボクの状況は巨大な仔ウサギに左右1羽ずつ挟まれてて、なら見えるうさぎの前足は2対で4本のはず……あれれ~?お~かし~いぞ~?

 ……なんだか猛烈に嫌な予感がするなぁ……確認したくないなぁ……チラッ


 あー、うん。何故だかボクの顔の真下にもお隣さんと同様のもこもこした可愛らしいウサギのおててがありますねぇ。しかも自分の意思で動かせますねぇ。

 なんということでしょう。これではまるでこの可愛らしいウサギのおててがボク自身の手のようではありませんか。



 ってウサギだオレ!?!?

主人公は似非クール

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