水精姫とクラブ勧誘
五天星の顔合わせから、およそ一週間が経過した頃。
午後の講義の終わりを告げる鐘の音が、学園の広大な敷地に響き渡る。
生徒たちが解放感と共に教室から溢れ出し、廊下はたちまち活気に満ちた喧騒に包まれた。
マリエルは同室のセリアと並んで石造りの廊下をのんびりと歩いていた。
窓から差し込む傾きかけた太陽の光が、二人の歩く床に長くオレンジ色の影を落としている。
「今日はどうする? 図書館で復習? それとも中庭で少し息抜きしていく?」
セリアが、伸びをしながら快活な声で尋ねる。
「そうだなあ。特に行きたい場所もないし、寮に戻ってゆっくりするのもいいかもね」
マリエルは穏やかに微笑みながら答えた。
彼女の表情には一週間前まで色濃く張り付いていた疲労感が、いくらか薄れているように見える。
それもそのはず。
マリエルが五天星の第五位の座に就いてからというもの、毎日のように殺到していた無謀な挑戦者たちの数が、ここ数日で劇的に減少したのだ。
理由は単純明快。
彼女の持つ底知れぬ実力と容赦のなさが学園中に正確に知れ渡ったからだ。
初級魔法である水球を極限まで圧縮し、五天星の一角であったローランドを無傷のまま氷漬けにして一撃で沈めたという事実。
さらに、その後も挑みかかってくる貴族の自信家たちを一歩も退くことなく、あるいは視線すら向けずに次々と魔法で壁に叩きつけ、あるいは水球で窒息寸前まで追い込んで昏倒させるという、圧倒的かつ作業的なまでの返り討ちの連続。
「まぐれ」や「相性の問題」などという都合の良い解釈は、冷酷な現実の前に粉々に打ち砕かれた。
今や学園の生徒たちは『水精姫』という可憐な二つ名の裏に潜む深淵のような魔力と技量の持ち主に、本能的な恐怖と畏敬の念を抱くようになっていたのである。
よほどの命知らずか、あるいは確固たる勝算を持つ超一流の実力者でもない限りマリエルに戦いを挑もうとする者はいなくなったのだ。
セリアがホッとしたように言う。
「挑戦者が減って、本当に良かったよねえ。マリエル、毎日すごく疲れてたし」
「うん。お陰でやっと、放課後に自分の時間が持てるようになったよ」
二人がそんな和やかな会話を交わしながら歩を進めていると、前方の角から一人の男子生徒が現れ、真っ直ぐにこちらへと向かってきた。
仕立ての良い制服に水色の石が嵌め込まれた高価そうな杖。
身なりからして貴族クラスの生徒であることは明白だ。
生徒はマリエルの前で立ち止まり、芝居がかった手つきで恭しく一礼をした。
「すまない。君が『水精姫』のマリエルさんだね?」
「そうですけど……何かご用ですか?」
マリエルは僅かに眉をひそめ、警戒心を露わにする。
挑戦者ではないにしても、貴族の生徒から声をかけられてろくな目に遭った記憶がない。
「私は『水魔法造形クラブ』の代表を務めている者だ。単刀直入に言おう。我がクラブに興味はないだろうか!」
(出たよ、勧誘……)
マリエルは内心で深いため息を吐いた。
クリストフが言っていた通りだ。
挑戦者が減った途端、今度は各クラブからの熾烈な引き抜き合戦が始まってしまったのである。
相手の生徒はマリエルの迷惑そうな態度など意に介する様子もなく、言葉を淀みなく紡ぎ続ける。
「我がクラブは、学園内でも有数の伝統を誇る名門でね。部員も二十名を超える大所帯だ。各種コンクールでの実績もあるし、何より先生たちからの覚えもめでたい。ここに所属していれば、将来的には宮廷魔術師団の水撃部隊や、高位貴族の専属としての道も約束されたようなものだ。君のような優秀な人材を、我がクラブは全力で歓迎する用意がある!」
言葉巧みにメリットを並べ立てるが、その瞳の奥にある打算は隠しきれていない。
五天星の第五位という最強の広告塔をクラブに迎え入れることで組織の格を上げ、学園内での発言力を強化したいという野心が見え透いていた。
「あー、すいません。ちょっとあまり、そういう大人数の集まりは得意ではなくて……」
マリエルは当たり障りのない理由を述べて、やんわりと拒絶を示す。
だが、相手も引き下がる気配はない。
「最初は皆そう言うものだ! だが安心してほしい。君には特別顧問のような立場で自由に施設を使ってもらって構わない。ただ名前を連ねてくれるだけで……」
セリアは隣でオロオロと視線を彷徨わせていた。
マリエルが心底嫌がっているのは、その微細な表情の変化から痛いほど伝わってくる。
だが、話しかけてきている相手は上級貴族の生徒であり、しかもクラブの代表という顔役だ。
平民であるセリアが「嫌がっているからやめてください」と強引に間に割って入り、相手を引きぺがすような真似をすれば、後でどんな報復を受けるかわからない。
どうやってこの場を切り抜けようか。
マリエルが冷ややかな視線で相手を黙らせるべきかと考え始めた、まさにその時。
「マリエル嬢」
凛とした、そして心地よく耳に響く低い声が、少し離れた場所から掛けられた。
「あ、ルカ君」
マリエルが声のした方へ顔を向けると、そこには銀糸の刺繍が施された制服を完璧に着こなした黒髪の少年が立っていた。
五天星の第三位『闇の貴公子』ルカ・レグナスが、長い脚で迷いのない足取りでこちらへと歩み寄ってくる。
「や、『闇の貴公子』!? 何故、こんなところに……」
勧誘をしていた貴族の生徒が、驚愕に目を見開いてうろたえる。
それもそのはずだ。
ルカは普段、限られた一部のエリート層としか交流を持たず、放課後は一人で図書館や専用の訓練場に籠もっていることが多い。
こんな一般の生徒が行き交う廊下に、彼のようなトップクラスの貴族がふらりと姿を現すこと自体が珍しいのだ。
しかも、その生徒をさらに困惑させたのはルカの「表情」であった。
ルカはマリエルの姿を見つけた途端、普段の彼からは想像もつかないほどに表情を柔らかく解きほぐし、明らかに嬉しそうな、晴れやかな笑みを浮かべていたのだ。
周囲を威圧するような冷徹なオーラはどこへやら、それはただの目的の相手を見つけて喜ぶ少年の顔だ。
そのあまりのギャップに勧誘の生徒は言葉を失っている。
「マリエル嬢。セリア嬢も、昨日ぶりだな」
ルカは二人の前に立ち止まると、穏やかな声で挨拶をした。
「ええ、こんにちは、ルカ君」
「こんにちはー」
マリエルが自然に返し、セリアも会釈をする。
そしてルカの漆黒の瞳が知的好奇心と熱意にキラキラと輝いている。
「それでマリエル嬢。先日君から聞いた概念を元に構築していた精神治療系の術式において、新しい発見があったんだ。理論の矛盾点が一つ解消されそうでね。悪いが、ちょっと見てくれないだろうか」
「いいよ。ちょうど手も空いていたところだし」
マリエルは微笑んで頷く。
あの魔法談義からしばらく、マリエルは何度か魔法研究の相談に乗っているが、ルカの持ち込んでくる術式の構築は神界の理論を下界の法則に落とし込むためのパズルのようで、彼女にとっても良い息抜きになっていた。
「助かる。では、第一図書館の……」
「あ、あの……!」
ルカがマリエルを連れ立って歩き出そうとしたところへ、蚊の鳴くような声で勧誘の生徒が待ったをかけた。
ルカはその声に気づき、ゆっくりと振り返る。
「すまない。彼女と新しい術式のことで少し話したくてね。君は……彼女に何か緊急の用事だったのだろうか」
丁寧な口調ではある。
だが、その言葉の裏には「俺たちの高度な魔法談義の邪魔をするほどの、価値のある用件なのか?」という、強烈な威圧と牽制が込められていた。
「い、いやあ……そ、そういうわけでは……」
「そうか。では、マリエル嬢は借りるぞ。悪いな」
ルカはそれ以上相手にすることなく、短く告げて踵を返した。
マリエルとセリアも、足早に彼に続いてその場を離れる。
残された生徒は冷や汗を流しながら、三人の背中が廊下の角を曲がって見えなくなるまで、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
三人が去った後の廊下では、遠巻きに事の顛末を見ていた生徒たちの間で瞬く間にヒソヒソ話が広がっていた。
「おい、見たかよ今の……。『闇の貴公子』と『水精姫』、すっごく仲が良いのか?」
「絵になるわよね、あの二人。銀髪の可憐な少女と黒髪のクールな貴公子……物語から抜け出てきたみたい」
「でもマリエルは平民だぞ? レグナス家の嫡男が平民の女子とあんなに親しげに話すなんて……」
「身分はそうだけど実力は凄いじゃないか。筆記も実技も学年トップの二人だ。天才同士通じ合うものがあるんだろうさ」
「それにしてもルカ様があんなに優しい笑顔を見せるなんて、入学してから初めて見たぞ。……これはひょっとして、本当にそういう関係なんじゃ……?」
尾鰭に背鰭までついて二人の関係性を面白おかしく脚色した噂が学園中を駆け巡っていく。
貴族と平民の壁を越えた天才同士のロマンス。
退屈な学園生活において、これほど生徒たちの好奇心を刺激する極上のゴシップはない。
そんな噂が瞬く間に広まっていくのは、もはや避けようのない自然の摂理であった。
◆◆◆◆
一方、そんな外野の騒ぎなど知る由もない三人は中庭を抜け、貴族棟へと続く静かな並木道を歩いていた。
木漏れ日が石畳の上にまだら模様を描いている。
「すまない。少し強引だっただろうか」
ルカが歩きながら、隣のマリエルを気遣うように顔を向けた。
「そんなことないよー。むしろ、すっごく助かった! ねえ、マリエル」
セリアがホッとしたように胸を撫で下ろしながらマリエルに同意を求め、マリエルも素直に感謝を口にする。
「まあ、そうだね。正直どうやって断ろうか困ってたところだったし。助けてくれてありがとう、ルカ君」
「そう言ってもらえると助かる」
ルカはふわりと、またあの柔らかな笑みを浮かべた。
今まで他者に対して氷のように冷たく、ほとんど笑顔を見せることのなかった『闇の貴公子』。
彼がマリエルに対してのみ、このように心を許した笑みを見せるようになったことは先ほどの生徒たちだけでなく、教師陣の間でも密かに話題になっていた。
いつの間にか『冷徹な闇の貴公子が清らかな水精姫の美しさに完全に絆された』という、ロマンチックな噂すら実しやかに囁かれているほどだ。
(……これは、目立たずにどうにか平穏な学園生活を送るっていう目標は、完全に無理そうだな……)
マリエルは隣を歩くルカの横顔を眺めながら、心の中で白旗を掲げた。
あの図書館での出来事以降、マリエルに闇魔法の基礎概念――特に『内側』という性質を利用した空間操作の理論を教わったルカは、人が変わったように研究に没頭し始めた。
そして術式の構築で新たな進捗があるたびに、こうして嬉しそうに平民棟のマリエルを訪ねては結果を報告しに来るようになったのだ。
最初は戸惑っていたマリエルだが、彼の魔法に対する純粋な情熱と真摯な態度は嫌いではない。
彼が来るたびに自然と一緒にいるセリアとも言葉を交わすようになり、いつしかこうして三人で行動することが増えていったのである。
目立つことにはなってしまったが、悪いことばかりではない。
今日のように面倒なクラブの勧誘や身の程知らずの貴族生徒からの絡みを、ルカがその圧倒的な権威と威圧感で弾き飛ばしてくれるのは非常にありがたい。
今更、彼との付き合いを放棄してまで、孤独で目立たない生活に戻るつもりはない。
マリエルは普通の学園生活の遂行をあっさりと諦め、この少しだけ騒がしい日常を受け入れることにした。
「そういえば二人とも、クラブはまだ入っていないのか?」
並木道を歩きながら、ルカがふと話題を切り出した。
先ほどの勧誘騒動を思い出したのだろう。
セリアが両腕を頭の後ろで組みながら、のんびりと答える。
「入ってないねー。どこもピンとこなくって」
「セリア、まだ入ってなかったんだ」
マリエルが少し驚いたように言う。
セリアのように活発な性格なら、どこかのクラブに所属して友人を作っていそうなものだが。
「私の適性、身体能力強化だしねえ。魔法学園でそういう肉体系のクラブって少ないし、かといって普通のスポーツクラブに入るのもなんだし……」
「スポーツ系のクラブは原則として魔法の使用が禁止されているからな」
ルカが補足する。
当然の措置だ。
身体能力強化の魔法を使った生徒がスポーツに参加すれば百メートルを数秒で走り抜け、鉄球を素手で打ち返すような、人外じみた競技になってしまう。
純粋な肉体の競い合いであるスポーツにおいて魔法は単なる反則行為でしかないのだ。
「ルカ君はどうなの? どっかに入ってる?」
マリエルが尋ねる。
「俺も、今は闇魔法の空間系の研究で忙しくて、どこにも入っていないな」
「そうなの? 五天星なのに勧誘とか酷くなかった?」
「最初は色々と声をかけられたが……興味がないと突っぱねていたら、気が付いたら誰からも勧誘されなくなっていたな。不思議なものだ」
ルカは本当に理由がわからないといった様子で首を傾げる。
(……不思議でもなんでもなくない?)
マリエルとセリアは、心の中で同時にツッコミを入れた。
あの近寄りがたいオーラで「興味がない」と冷たく見下されれば、どんなに熱心な勧誘者でも心がポッキリと折れるだろう。
彼らが諦めたのはルカの放つ威圧感に耐えられなかったからに他ならない。
だが状況は変わった。
今はマリエル限定とはいえ、ルカは頻繁に柔らかな笑顔を見せるようになっている。
その姿を見た他の生徒たちが「あれ、今のレグナス様なら案外誘えばいけるのでは?」と勘違いし、勧誘熱が再燃する可能性は十分にあった。
「でもルカ君をクラブに勧誘できたら、ルカ君の実家からの多額の支援金も期待できそうだしねえ……。狙ってるクラブは多そうだよね」
セリアが、少しだけ現実的な大人の事情を口にする。
「実家? 有名な家なの?」
「あれ、マリエル知らないの?」
マリエルの言葉にセリアは驚いたように目を丸くし、ルカの顔をチラリと見てから解説を始めた。
「ルカ君の実家は『レグナス魔法伯家』っていうんだよ。伯爵の『伯』って付いてるけど、辺境伯みたいに王家から特別な権限を与えられている普通の伯爵より一段上の名家でね。代々優秀な魔法使いを数多く輩出してきた、この国でも指折りの魔法名門一族なんだよ」
「へえー、そうなんだ」
マリエルは感心したように相槌を打つ。
道理で術式開発ができるレベルで魔法の基礎理論から高度な術式まで、幅広い知識を持っているわけだ。
「……古いだけの形式ばった面倒な家だ。しきたりなんかも色々と煩わしくてな」
当のルカ本人は自分の家柄を誇るどころか、うんざりしたようにため息をついた。
「どういうしきたりなの?」
「例えば婚姻関係だ。レグナス家に連なる者……特に跡取りとなる者の婚約者は、ただ身分が高いだけでは認められない。最低条件として強力な魔力量を持っていること。そして何より魔法という技術に対して深い知識と理解がないとダメだという厳しい家訓があってな」
ルカはウンザリとした顔で、自身の抱える重圧を語る。
「だから俺は、親から『この魔法学園にいる間にお前の研究を理解し、支えられるだけの能力を持った良い嫁を探して来い』と、耳にタコができるほど言われているんだ」
「うわあ、それは大変だね……。それで誰か当てはあるの?」
「無いな」
マリエルが同情しながら尋ねが、ルカは即答した。
「魔法の実力だけで言えば同じ五天星のリーズリット嬢あたりが妥当なのだろうが、彼女にはすでに家同士で決められた婚約者がいるからな。他の貴族令嬢たちは俺の闇魔法の研究を話しても気味悪がるか、理解できない顔をするばかりだ。……まあ、在学中に適当に探してみるさ。最悪、一生独身で研究に没頭するのも悪くない」
ルカが自嘲気味に笑った、その時。
「…………」
隣を歩いていたセリアの足取りが、ふと遅くなった。
彼女の頭の中で、今ルカが提示した『レグナス家が求める婚約者の絶対条件』と、目の前にいる親友のスペックが、カチリと音を立てて見事に組み合わさったのだ。
(あれ……?)
セリアは、マリエルをじっと見つめる。
強大な魔力量。
これは五天星であるマリエルなら文句なしにクリアしている。
魔法に対する深い知識と理解。
これもルカ自身が彼女の理論に感銘を受けて教えを乞うているのだから、これ以上ないほど完璧に満たしている。
(それってつまり、マリエルがルカ君の嫁になれば、全て丸く収まるってことじゃない……?)
家柄こそ平民だが実力至上主義のレグナス家であれば、そこは強引に突破できる可能性が高い。
それに無意識なのかはわからないが、ルカは明らかにマリエルに対して特別な好意と敬意を抱いているし、マリエルもルカの真面目な性格を嫌ってはいない。
二人の相性も決して悪くなさそうだ。
(いやいや、待て待て私。マリエルがどう思ってるか全然わかんないし、勝手にそんなこと妄想するのは良くないよね。一旦置いておこう)
セリアはブンブンと頭を振って、己の暴走する思考を落ち着かせようとする。
だが。
(でも……もし本当にそうなったら身分差を越えた天才魔法使い同士の結婚! すごいロマンチックだし、めっちゃ面白いかも……!)
妄想の炎は一度燃え上がると、そう簡単には消えてくれない。
セリアの顔が無意識のうちにだらしなく緩み、ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべてしまっていた。
「セリア、何ニヤついてるの? ちょっと怖いんだけど」
マリエルが怪訝な顔でセリアの顔を覗き込む。
「な、なんでもないよー! 今日の夕飯、何かなーって考えてただけ!」
セリアは慌てて両手を振り、顔を赤くして誤魔化した。
「……話を戻すが」
ルカが咳払いをして、本題へと軌道を修正する。
「クラブの勧誘を避けるという目的なら、俺たちのような目立つ存在は、どこか活動実態の少ない、人数の少ない弱小クラブに籍だけ置かせてもらうか……あるいはいっそ自分たちで新しいクラブを作ってしまうのもアリだな。そうすれば上級生や他の派閥からあれこれと横槍を入れられずに済む」
「なるほど、自分たちで立ち上げるのは良い案だね」
マリエルもその提案に賛同する。
自分たちのペースで、自由に時間を遣えるのは魅力的だ。
「でも、新しく作るって……どんなテーマにするの?」
「そこが一番の問題だな……」
ルカが顎に手を当てて唸る。
学園に申請を通すためには、それなりに説得力のある研究に資するテーマを掲げなければならない。
「クラブ活動に相応しくて、私たちがやってて楽しいテーマかあ……」
セリアも腕を組み、空を見上げて考える。
闇魔法の復権を目指す貴族の天才。
強大な力と知識を隠し持つ、元神人の少女。
そして、身体能力強化に特化した平民の少女。
この全く噛み合わない三人が、共通して取り組める魔法のテーマとは一体何なのか。
「うーむ……」
三人は揃って考え込みながら、夕日が沈みゆく放課後の並木道を、ゆっくりと歩いていくのであった――。




