焦がれる夜明け
あの日から夜明けが待ち遠しかった。
5年前、僕は軍人になった。
理由は当時、僕は護国をと願うただの子供だったから。だからこの夕焼けは夢が叶ったと思っていた。
幼馴染も友達も一緒に入軍した。含めて同期は二百数十人いて同じ訓練所になった同期は合わせて数十人程度だった。何故か皆んな護国をと謳っていた。
けれど、またあの頃に戻りたいと思う程、幸せだった。
訓練の度にバカをして教官に叱られた友。皆んなして笑っていたら連帯責任として訓練内容を増やされてしまった。それでも皆んな笑いながら、取り組んでいた。
バカをしてた友は今も………で人を笑わせているのだろうか?
隊対抗戦で模擬戦闘をした時があった。作戦を立てる際、同じ隊になった友と意見が分かれ喧嘩した。結局、無策で戦うことになったが、何故か勝ってしまった思い出。無策で勝ってしまって、喧嘩がしたのが馬鹿らしくなって仲直りした。
後で話を聞いてみると、僕達が戦闘開始したや否や、猪突猛進で突っ切って来たからか相手チームは立てた作戦が意味のないものになってしまったらしい。
あの日仲直りした友にまた会いに行けるといいが、今度、遊ぶ時は迎えに来てくれるかもしれないな。………から来てくれた時は御礼を言わないと。
実戦に出るようになってからは皆んなで集まることは少なくなってしまったけれど、時折集まっては、パーティーをして近況や自慢話をしたり、中には同期に公開告白する友もいた。
あの日に出来たカップルは………で元気にしているだろうか?
親戚の幼馴染は僕の心の拠り所だった。幼い時から一緒にいた。だから幼馴染とこれからもずっと一緒になるために努力は怠らなかった。
軍人になるのも一族からは戦闘訓練を受けていた兄と僕だけの予定だった。兄は軍の創設者の一人だ。軍の中で一族の影響力を強めるために弟の僕が投入される、ただそれだけのはずだった。
幼馴染は僕が何かと心配だからと、一緒に入軍することになった。ただ彼女が訓練を受けていたのは護身術程度だったのが心配だった。
僕や幼馴染が入軍すると聞いて、親友も一緒に入軍してくれた。彼は僕が心配で入軍するのではなく、自分の成長のためだと言い張っていたが僕は嬉しかった。反面、何処か悲しかった。
幼馴染は戦闘部隊の僕や親友と違って後方支援隊にいることが多かった。だからちょっとは安心だった。少なくとも僕よりかは安全な場所にいるから。
入軍して1年経つと同期の2割が殉職していた。けれど、僕の周りは全員が戦い抜けるように切磋琢磨していたから負傷者は他より多かったけど殉職者は出ていなかった。
この年、戦友が増えた。創設者の一人の兄達が1期生、僕らが2期生とするならば新しい戦友達は3期生だ。
去年、僕らを教えていた教官の立場を今度は僕らが担当することになった。
3期生もまた1日1日を充実した日としていた。
僕は3期生を厳しく、時には優しく指導した。1年前の僕らがそうだったように。
そうしてまた順調に1年が過ぎるはずだった。軍は、僕らは、僕は大きな傷を負った。日が落ち、夜が来たように目の前が見えなくなった。1年が過ぎた。
入軍して2年過ぎて、また新たに4期生が入軍してくることになった。教官の役割は3期生が担う。
僕ら2期生は、軍の主力として各地を飛び回っていた。たくさんの戦場を経験した。経験する度に強くなった。僕も親友も。僕らは強くなった。けれど、戦友も失っていった。
去年に幼馴染と一緒に面倒を見ていた3期生の一人が最近、死にかけたことを知った。僕は周りが死んでほしくなかったからその3期生を弟子にし、僕の技術を全て教えていくことにした。
入軍して3年が過ぎる頃には同期は5割、殉職していた。悲しかったけど、もう悲しくはなかった。いつか再会できるから。この年、5期生が入軍した。教官は4期生が担当した。
僕らは同期でパーティーをすることがなくなった。集まる度に誰かがいなくなっていたからだ。それが耐えきれなくていつのまにか誰も集まらなくなって自然消滅した。
僕らはひたすら戦い抜いた。それが先に散った戦友への手向けでもあった。
入軍して4年が過ぎた。今年で5年目。同期で生き残った戦友は4割を下回る。
この年、6期生が入軍した。5期生が教官をした。
入軍して4年が過ぎて、たくさんの戦友が先に散った。バカをやって教官に叱られた友も、喧嘩した友も、カップルになった友達も、皆んな先に向こうに逝ってしまった。
幼馴染も散った。基地が襲撃されたと知らせが来る前に戦場から抜け出して駆けつけたけど、間に合わなかった。なんであれ、守れなかった自分を責めた。幼馴染が死んで約3年が経ったけど僕は暗闇に囚われているままだ。
僕の夜明けはいつ来るのか。
僕は護国が夢だと謳っていたのにいつしか先に散った戦友に再会することが夢になっていた。僕は入軍したことで幸せを掴んだ。あの幸せを形作ってくれた戦友達に再会するために、同じように国を護って死ななければ彼らには会えないだろう。勝手に自死するようなことをすれば戦友達に、幼馴染に怒られるに決まっている。
だから僕は護国のためにこの命を捧げる。
[この日記を発見した人へ]
僕はこれから護国のために命を捨てにいく。そして戦友達に、幼馴染に再会することだろう。
ただ、親友には悪いことをしたと思っている。これから特攻するのは僕だけではなく1、2期生の8割であるから。
2割として残ることになった親友は置いてかれたと感じてしまうかもしれない。
でも生き延びてほしい。
身勝手だけど一緒に入軍してくれたあの日から同じことを願っているんだ。
幼馴染と一緒に面倒を見ていた弟子はもう教えることなんてないほど、立派に成長した。
弟子は僕の変化を、近くで見ていたから、僕が死にに行ったなんてことを知ったら、止めに来ようとすると思う。
でも安心して欲しい。最後まで足掻くし、簡単には死ぬつもりはない。それは先に散った戦友もした事だしね。
今思えば、護国のためと僕らは謳っていたが、それは自分の意思ではないのだろう。一族のため、家のために僕らは護国と謳った。
でも、そのおかげであの幸福だった年月があったのであれば、十分お釣りが出ている。
少なくとも僕はそう思っているよ。
僕の机の引き出しに入れたこの日記と手紙を見つけるのが一体誰になるかは分からない。おそらく親友か弟子か…、そのあたりだろう。
夜を彷徨っていた僕にようやく夜明けが訪れたんだ。
こんなにも晴れやかになれた。悲しむ必要はないと言っておくよ。
そろそろ時間だ。最後の戦いなんだ。しっかり準備して征ってくる。
一人の軍人の最後の記録です。
この物語は元々、長編のローファンタジーとして投稿するつもりでしたが、一旦、別視点の短編として投稿しました。
そう遠くない内に、元々のローファンタジーも投稿しよう考えているので読んで頂けると嬉しいです。
誤字脱字等ありましたら、指摘お願いします。
もし気に入って頂けたり、面白いと思って頂けたなら、
励みになるのでブクマや下の☆☆☆☆☆で評価、お願いします。




