第1章 #5 『痛い痛い痛い』
ですですですわ〜(謎)5話投稿しました。
はぁはぁ!
北地区へ走るミナト
あたりは残骸だらけで騎士らしき人物も見受けられる。
ズゥゥゥゥーン!
ズゥゥゥゥーン!
また爆発
しかもかなり大きい
「あっっ!」
熱風が汗で湿った肌を襲う
「頼むから無事でいてくれよ……」
八百屋が見えてきた。あたりは誰もいない。ヴァル爺も逃げていて欲しいが。
「ヴァル爺!」
「あぁ?だぁれですかぁ?って……違うでしょうにぃ。普通そこは戦える騎士さんが来るもんでしょぉがぁよぉ。おおん?急に来たと思ったら騎士でもなければ魔術師でとなぁい。場違いのこねずみちゃんですかァ。興ざめですよぉ。これじぁ強いやつと戦うために来たのにぃ。雇われ損じゃないですかぁ!何しに来たんですかぁ?用がないならァ……」
「ヴァル爺!」
ドアを開けた先にいたのは倒れたヴァル爺とそれを踏みつけこちらを見ている謎の男
「ヴァル爺ってぇこいつのことですかぁ?こいつを助けに来たってんならぁ、もう手遅れだと思いますよォ?腹刺してから時間たってますからねぇ……このクソじじぃときたらァこの地区に一番詳しいくせしてなんの情報もだしやがりませんでしたからねぇ。役たたずですよぉ。」
「てめぇ……好き勝手やった挙句、俺の恩人に好き勝手言いやがって……そこ退きやがれ!」
「…………」
怒りを込め言葉を放ち睨みつけると相手はフードを外しこちらを蛇のような目で睨みつけてきた
「……初対面にいきなり命令ですかぁ……好き勝手?
てめぇはわかってねぇなぁ。好き勝手されんのはてめぇらの力不足が原因だろうがぁ。あぁん?力ないものが好き勝手されても文句は言えねぇでしょうが?うぅん?不満があるなら力を示せ……力がないなら強者に従え。そんなこともぉ……分からねぇんですかぁ?あぁん?」
「分かった。分かったから…退いてくれ…」
戦う術を持たない自分は下手に動く訳には行かず怒りを押し殺しお願いする。
「ほぉら、結局言い負かされれば弱いやつはそうやってぇ懇願するしかないんですよォ。戦えないやつってほぉんと虫唾が走りますよねぇ!」
話終わると同時に左手に持つ剣を大きく振る
「!?」
反射的に避けた結果幸運なことに腕をかすめる程度に済んだが
「痛ってぇ!うぁぁぁぁぁ!!っっ」
掠めただけなのにとても痛い。転んで擦りむいたとか包丁で指を軽く切ったとかそんなものの比じゃない。
「ふぅん……よけたんですかぁ。運が良い奴なようですねぇ」
運がいい全くその通りだ。今のはたまたま避けられたが次は確実に当たるだろう
「……飛ぶ斬撃かよ………クソっ……痛ってぇ……」
飛ぶ斬撃……異世界らしい常識外れな現象。一体
どういう原理なのだろうか。
「ちょっと面白そうなのでぇ……誰か骨のあるそうなやつが来るまで痛めつけて遊んでやりますかぁ」
ニヤニヤしながらそうつぶやく男は近ずいてくると大きく足を振りかぶり蹴りを入れる。
「いっ!?」
蹴られただけのはずが自身の体は隣の建物まで飛ばされていく。
「……ただの……蹴りだろ……痛ぇ……」
元いた世界では考えられないとび方骨はもちろんイッてしまっているだろう。切られたところに木くずだろうものが刺さって痛い
「意識あるんだァ。弱い癖にぃ。やっぱぁ、殺りがいのないやつを痛めつけてもぉ面白くないのでぇ、死んでいいですよォ〜。」
そう言うと男は剣を振りこちらに斬撃を飛ばしてくる。避けられない。激痛を超えた痛みでそれどころでなかった。終わった。そう思った刹那……
「兄貴ッ!」
「!!」
聞き馴染みのある声がしたのと同時に斬撃が弾かれる。痛むからだを無理やり起こすとそこに居たのはルイだった、
「わりぃ。ちとおくれちまったなぁ。あとは任せてくれや…」
そう言うと足を振りかぶり男に蹴りかかる。その蹴りはしっかりと男を捉えていた。
「おっとぉ!?いい蹴りですねぇ。でも感心できませんねぇ。会ったばかりの人に挨拶もせず、急に蹴りですかぁ?教育はどうなっているんですかァ?てか、そいつもそうですけどあんたたちから来たならまず名乗りましょうよォ。うぅん?あぁん?」
蹴りの連撃を避けながらペラペラと言ってくる男。
それに対し
「あぁ?教育?知るかよ!クソがぁ!」
そう言うとルイは男に対し回し蹴りをお見舞する
「はっ!名乗れだァ?いいぜ!俺の名前はルイ!ルイ・シルヴァだ!覚えて逝け!」
「あぁ……痛いですねぇ……加護持ちなんですねぇ……ルイ……えぇしっかりと覚えておきますよォ。では……私の方も名乗りましょうかぁ………魔罪組織『無』の用心棒……二面奏のカルマ……以後お見知り置きを……」
一礼するカルマ。それと同時ににルイは蹴りに掛る。
「オラァ!」
「甘い……」
さっきまでのふざけた雰囲気とはうってかわり声のトーンは低くなり目は鋭くなる。
ブーーン
「あ゙ぁ゙?」
風を斬る音がしたのと同時にルイの足に切り傷ができる。
「交わしざまに斬らせて頂きましたが……なんとぉ、加護のおかげで落とさずに済んだようですね…」
「てめぇ……今何した?」
避けただけに見えた相手の行動に「斬る」という行為はみえなかった。
「なに?て……蹴りかかってきたところに斬撃を入れただげですがァ…」
気づかなかったんですかぁ?と煽ってくるカルマ
口元は笑っているが目が笑っていない。
「気持ちわりぃなお前……」
「褒め言葉として取っておきますよぉ…」
その言葉の交し合い直後激しい攻防が始まる。
その攻防はさすが異世界と言わしめる程の戦闘…目では追い切れないすばやさ。彼らの暴れたところは破壊されていく。
そんな中自分はと言うと、やっとのこと体を起こすことに成功し、状況を確認する。前方では2人が激しい戦闘を。その他には生死不明のヴァル爺。以外は特にない。
「そうだ……俺だって……」
自分が吹き飛ばされた時に違う方向へ飛ばされた荷物の所へ行く。
「あった……剣……」
ミナトは小学校の頃から剣道をしていた。
異世界でこれが通用するかはさておき、自分も戦わなければ見ているだけは後悔が多いのが人生だ。それだけは絶対避ける。
「ルイ!頼む隙作ってくれ!」
「え?兄貴!?戦うつもりか!?」
目を丸くして驚くルイ。
「頼む!俺は集中する!」
少し困惑していたが納得してくれたみたいで
「わ、分かった!隙作ればいいんだなッ!任せろ!」
「隙ってぇ……言っときますがァ…ルイさんと戦ってはいますけどぉ、あなたの方にも手を出せるほど余裕がぁ……あるんですよぉぉ!」
「!?」
懐から短剣を二、三本取りだしこちらへ飛ばしてくる
『アン・ウォーン』
突如としてミナトの前に土の壁が形成される。
その壁がミナトの命を刈り取らんとする短剣の動きを止める
「初級土魔法ですかぁ…余計な真似をぉ……」
悪ぃ!とこっちに謝罪するルイ
だが、おかけで
「ふぅ………集中は出来た。」
痛みは残っている。が、集中している間は問題ないだろう。人はひとつの事に集中している間他の事を気にしなくなる。剣道をしていた時も雑念を消すために集中していた。
「うぉぉぉ!」
勢いよく斬りにかかる。そのスピードはやはり常人。隙ができても当の相手には届かないだろう。
「遅いですねぇ……」
「よそ見すんじゃねぇよ!」
何とかルイがこっちを見ろと気を引く。ルイには傷が増えていく。
-頼む!当たってくれ!
そう願うばかり
「突っ込んでくる覚悟は認めますがァ、貴方は自分で死にに来てることもう少し理解した方がァ…いいかもですねぇ…2人ともこの位置なら殺れますよぉ?」
そう言ってカルマはどこから出したのか二本目の剣をこちらに振りかざす。
――まずい!
2人がそう感じたその時だった
『ハイ・サージ』
「上級水魔法....!?」
カルマの足元から渦をまくように水が湧き出し動きを封じる。
「全く………また無茶をしたようだな……ルイ。加護に傷が着くぞ…」
「悪ぃ姉貴……俺…」
「謝らなくていい。ひとまずミナトと下がっててくれ。それと、ミナト…」
「はい。」
キリッとした顔がこちらを見る。
「とんだ災難だったな。後で治療を施す。少し待っていてくれ。」
「……」
柔らかい声色でそう言う彼女に無言で頷き下がる
バァシャン!
水流がかき消されカルマが出てくる。その表情には獣が宿っているようだった。
「余計な真似するやつ多いですねぇ…ほんと………」
「それは悪かったな。お詫びとしてはあれだが、ここからは私が相手をしよう。」
その場は静まり返りお互いが手に持つ剣を構える
沈黙と緊張が走る
「改めて…魔罪組織『無』の用心棒……二面奏のカルマ……いや…カルマ・アンヴァ……行くよぉ…」
「………『美水の剣』アリス・シルヴァ…行かせてもらう。」
2人と剣劇は美しくそして……恐ろしいものだった




