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帰宅とこれから(4)

 「ところで、君は記憶喪失ってユウナから聞いたけどいつどうして記憶を失ったの?」

 カナタ先輩は俺に対して純粋な質問をぶつける。さらにマフユ先輩も似たようなことを聞いてくる。

 「私も……それ知りたいです……。ハルトさんがいつ記憶を失ったのか……。そうしたら何かが分かるかも……。」

 俺は何か詮索されてるようで本当に嫌だけど、記憶探しに協力してくれるなら嬉しい気持ちもある。正直、記憶について何もかも疑いたくなる気分が本当に根強い。自分が何なのかというと、「何も無い」人間だった。

 「俺が記憶を失ったのは4/25のことだ。普通に火事による心因性の記憶喪失と聞いたが、周りのやつは俺のことを何も知らない。唯一残っていた戸籍から『久遠ハルト』だとわかったというのは、病院で聞いたけど本当にそれだけ。両親が死んでるからどこの学校に通っていたとか全くわからない。」

 俺はそう言うと、二人はふーんとした顔をする。聞いて悪かったと若干暗いような雰囲気を醸し出していた。

 「ごめん、君には悪いことを聞いたね。正直トラウマでしょ、名前さえ思い出せないなんて。」

 「ごめんなさい……ハルトさん……。」

 カナタ先輩とマフユ先輩が申し訳無さそうに謝罪をする。デリカシーがないとは思うけれど、寧ろ疑問に思われないほうが不自然だからと納得する。

 「別にいいですよ。ところで今日ここに来て、俺もここにずっといたい、ここで活動したいと思いました。こうして褒められることは悪いことではない、それどころか嬉しいことだって。それに、最初から俺のことをちゃんと分かってくれてありがたかったです。流石にクラスメイトは俺の記憶喪失のことを知らないみたいで」

 「入るの!?本当に!?私の部活、ラジオに出るってなった時に嫌な顔してたから入らないかなって思ってたから、本当に嬉しいよ〜。アリサちゃんに続いてハルくんも入ってくれるなんて今後が楽しみになるねー。」

 「よろしくな。」

 「よろしくね。」

 「よろしく……お願いします……。」

 「ハルト、これから頑張ろうね。」

 「こちらこそどうも、これからよろしくお願いします。」

 「じゃあ、早速だけど放課後にここに来てね、企画会議をやるから。」

 そう言うと、俺達は一同解散となった。



 授業の時間、アリサは俺のことをずっと見ている。正直、俺のことに構わず授業に集中して欲しいと思うが、入院中から俺のことを気にかけているように見えた。

 さっきの部活の時間も、俺を放送部に入部させるために誘導してたわけだし、アリサなりに気にかけてくれているようだけど。入院中に俺が塞ぎ込んでいたから本気で心配してるんだなって何気ない行動から分かってくれているんだなって思うと少し嬉しい。

 あっという間に一日が終わり、ユウナ先輩は俺のことを呼んでいたことを思い出し、急ぎ足で放送部室に向かう。

 「先輩方、早いですね。今日は正直慣れてない遅れてしまったんですが。」

 俺はそう挨拶して、先輩たちへ話を降る。企画会議なのか、実際何なのかがよくわからないけれど。

 「俺は何をやればいいですか?初めてなのでよくわからないですけど何をやれば。」

 「私とショウくんとアリサちゃんでローテで企画を考えて、カナちゃんが作曲や選曲をプラス、マフちゃんがセッティング、調整にプラスで二人共午後の活動は私達と一緒に企画の調査。あと欲しい人員ってサイト作成とかその辺かな?」

 ユウナ先輩は俺にサイト作成をやらせたいみたいだけど、未経験なのにそこにぶっこむのか、と思う

 「ちょっとユウナ!ハルトはまだ初心者なんだからまずは企画会議に参加させてあげたら?」

 カナタ先輩はもっともらしいことを言う。実際企画会議に参加しないと、どの作業がいるのか、どういうことをするのがわからない。

 「あーそっか。じゃあみんな、来週の企画と配信企画決めよっか。来週の企画書はショウくんだね。」

 「来週、ゲスト回だろ?誰を呼ぶんだ?」

 ゲスト回ってなんなんだ、と思ったがローテで企画立案をするのではあるけど来週はショウ先輩が企画書を作るとのことだった。

 「ゲスト回?」

 「そうゲスト回。いろんな部活の子を呼んだり、とか色々。宣伝のためだけど面倒だから出たがらないんだよね。」

 「それ本来なら生徒会とか先生方の役割じゃ?そもそも紙面やWEBサイトで公開すれば問題ないのでは?」

 「それだと保護者向けになってしまってアタシ達生徒向けにならないからね。だからアタシたちが率先してやるのが存続の条件になってる。」

 「そもそも……好き勝手に喋ることは学校じゃなくてもできるしね……ユウナが普段やってるみたいに……。」

 「どっかで大会とかやってないのか?どこかの部活がやってるのならまた別の話になるんだけれど。ただまぁ運動部なんて大会は割と多いからなぁ。」

 先輩達が白熱した議論をしている中、俺は正直部活の宣伝に使われるのはもったいないものだと感じていた。というより、本来ならWEBに載せるだけでいい、それだけで良いのに活動報告を一々放送部室に呼ばれてしなくちゃいけないのはどうなのと思っていた。だけど割り込む勇気がわかない

 「私は思いつかないのなら普段の企画を拡張したものにしたらと思います。」

 アリサは1年の身でありながら、勇気を振り絞った。

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