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帰宅とこれから(3)

 (放送部に俺強制的に入れられるパターンか?だとしたら毎日こんなことやるようになって面倒だなぁ。)

 俺はそう思いながら走り続ける。こんな足が棒になってもおかしくないくらいに走らされている俺は、朝遅刻しなければよかったと後悔の感情の渦に飲まれかかっていた。

 放送室に到着すると、先輩達が今にでも飛び出しそうな勢いで俺のことを見つめてくる。その中には朝出会った白髪の女の子もいた。

 「うん、君が転校生?」

 水色の髪をした女子の先輩が俺のことを見つめてくる。正直言ってちょっと怖い。

 「ねぇ、カナーちょっと怖がってるから辞めて上げようよ。」

 「カナタ、いつもお前そうだろ。だから新入生がユウナが誘った一人しか入ってこなかったじゃねーか。」

 「カナタ……それ辞めたほうが良いと思うよ……。」

 アリサから放送部の先輩には伝えていたらしく、だからこそ俺は認知されていたようだった。正直、嬉しかった。見知らぬ人がいて緊張が走ったけど、俺のことをアリサが伝えてくれていた。

 「ちょっと遅くなったね、私は桜ユウナ♪。で、この部活の部長です。よろしく~。」

 「同じく、アタシは副部長の星空カナタ。音楽担当を務めてるわ。」

 「さっきもあったね……私は……白野マフユ。放送部のセッティング担当……。」

 「俺は風鳴ショウヤ。放送部の企画担当、よろしく頼む。」

 「俺は久遠ハルトです。先輩方よろしくお願いします。それで俺は何を?」

 俺はよくわからないまんまこの放送室に連れて行かれた。マジでよくわからないまま俺はそこにいる。ただ、ここにいても邪魔にしかならないだろうに俺が呼ばれた。

 「うちの部活は来る者拒まず、だ。これは部長が決めた方針でな。俺やカナタは反対寄りではあったが、アリサのようにユウナに熱意のあるファンが来るようになって方針を変えたんだ。」

 「そう、アタシ達は元々、みんなでワイワイやれる部活を目指してた。だからアリサのような子が来てくれることはとても嬉しいことなんだよね。ただ君はアリサに無理矢理連れていかれたように見えちゃってさ。だからさっきはごめん。」

 ショウヤ先輩がユウナ先輩のことをかなり褒めてるけど、ユウナ先輩の話し方を考えると、「不思議と慕われる」先輩なんだろうなぁって感じだ。実際、俺には熱意がない。けど俺のことを理解してくれそうなそんな感じがする。

 「お話はそこまで!今日は私との『トーク』にハルトにも参加してもらいます!勿論新入部員としてね。」

 「また……アリサのときもそれやったよね……?」

 ユウナ先輩の発言にマフユ先輩が反応する。どうもアリサのときにも俺のように新入部員デビューラジオをやったらしい。新人の子には馴らすためにまずユウナ先輩と即興でトークをしてもらうとのこと、それでうちの部活ではトーク力を鍛えることになると言うことであった。



 「こんにちわ、聖マリアンヌラジオの時間がやってまいりました!司会の桜ユウナです。今日はゲストをご用意しております、本日転校してきた1年C組久遠ハルト君です!」

 「どうも、久遠ハルトです。」

 「今日から転校してきたのですが、どんなお気持ちでしょうか。」

 いきなりユウナ先輩から答えづらい質問が来た。どう答えれば良いんだと俺は思っていた。記憶がないのがバレるかもしれないから。

 「そうですね。新鮮な気分です。前の学校ではこういう放送部であったり、放送室を自由に使わせてもらえなかったので。」

 ユウナ先輩は俺の発言を聞いて、こいつアドリブ上手いな、という感じの雰囲気を発している。ただ、普通分かっているなら聞かないだろ、と。少なくともユウナ先輩はアリサから事情を聞いていたはずだ。

 「では、前いた学校ではどんな部活に入っていたんですか? 運動部〜それとも文化部はたまた帰宅部〜?」

 まーた俺が答えづらい質問を選んでくる。的確に俺の弱みを握ってくるユウナ先輩に対して、俺は頭をフル回転させる。どうにもこうにも答えられないし、そもそも一年生で4月くらいで部活決めるかなって感じだが。

 「まぁ帰宅部ですね。理由は学生の本分である勉強に専念できるからです。」

 俺はそう言うしか無かった。全部俺の発言アドリブなんだが、なんとか乗り切れそうだと感じだが、次はどう出る。

 「残り時間僅かなので音楽を流しましょう。」

 こう言ってユウナ先輩はラジオを一区切りする。俺は正直なんとかアドリブで乗り切ることができたが正直恐怖で感情が埋まっていた。いきなり学校の恥さらしになってしまう。そしたら雲が地面に足元に来るという感じでいきなり急転落下して自分の高校生活が終りを迎えるようなものだ。



 「今日も聖マリアンヌラジオの時間はおしまいです。また来週同じ時間にお聞きいただけたらと思います。では皆さんさようなら~。」

 ユウナ先輩は俺に対して、よくやれたねみたいな感じの雰囲気を出しているが、俺はよく話せたという自信がない。

 「よくやれたね、ハルト。初めてにしては本当に。」

 ユウナ先輩が俺に対して、褒め称えている。こういう何気ない言葉でさえ、俺には励みに思えてくる。自信がなさそうな顔をしていた俺への気遣いも慕われる要素だと思う。

 「ユウナの言う通り、よくやれていたと思うよアタシは。アタシの初放送なんて素が漏れていたし。君が記憶喪失ってのは昨日LINEで聞いていたから、大丈夫かなって思っていたんだけど、ユウナがフォローしなくても大丈夫そうだね。」

 カナタ先輩も俺のことをかなり褒めているようだった。具体的に、どこが良かったのかを褒めてくれてやる気が出てくるような感じだった。

 「やっぱりユウナの思った通りだ。最初はいきなり抜擢するなんて、と思ったが。まるでそんなこと思わなくなるくらいにやれていたな。」

 「初配信……お疲れ様でした……。」

 やっぱり先輩方に褒められるとやる気も出る。だけど、このまま普段の生活と魔法師の生活を続けるとパンクしそうと思えてしまう。

 「じゃあ飯食ったら一度解散ということで」

 そう言って俺達は食事を取り出した。

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