始まりの日
こんな時期に投稿するのはアレだと思ったんですけど申し訳ないです。
正直投稿するかどうかは迷いました。
けれどもこんなご時世だからこそ普段通りの暮らしをすることが前提と思って投稿いたしました
その日は俺が生きる意味を見つける日だった。2025年4月25日、俺はすべてを失った。それがすべての始まりだった。
「なんでここにいるのだろう」
俺はそう思って、その場所に留まっていた。眼の前で焼け落ちた街。崩れ落ちる街並み。そして俺には記憶がない、今までなにをやっていたのか、誰と一緒にいたのか分からない。どうすれば良いのか今にも頭がパンクしそうだ。
「おい、そこの君。どうしたんだ、反応しろ」
俺に話しかける声にも気づかず、俺はただそこに居るだけの棒人間でしか無かった。正直言って怖い。
「おい、返事しろ。なんでも良いから。」
救助隊の人は、俺に懸命に話しかける。だけどどう話せば良いのかわからない。記憶がない、なにがあったのか理解できないと言えばいいのか、それで俺はどうなるのか。そんなことばかり頭によぎってしまう。
「今何が起きてるのかわからないんです。見たら焼け野原で。それで……。」
俺は正直どうすれば良いのか分からない。どうやれば良いのか分からない。この景色が夢であるように願っている。だけど、それは違う、現実なのだと必死に飲み込む。
「記憶がないんです、今日だけでなく今までのことすべて思い出せないんです。」
俺は勇気を出して記憶がないことを伝えた。それに、恐らく家族が全員件の災害で亡くなったのだと救助隊の人は察していたのか、そのまま病院に連れて行かれたのだった。
幸いにも俺は軽症とのことではあったが記憶喪失になっていることから、近くの病院ではなく、遠くの大学病院に入院することとなった。ただ、そこでも記憶がない上に名前すら忘却してしまったことから、他の人と馴染めないだろうとして個室の病室に入院することとなった。
ただ先生にもよくわからないことが多いみたいだし、保険証などの記録もなく、お金すらないわけだからどう生きれば良いのかという切実な問題であった。
俺が病院に入院してから数日後、銀髪の男の人が俺の眼の前に現れてきた。
「君が久遠ハルト君か?」
俺の名前らしきものを俺に伝えたその人は、俺の困惑する表情を見て、記憶喪失だけでなく根本的に知識以外の記憶が飛んでるのを察しているようだった。
「僕の名前は赤羽零士、この病院の先生から呼ばれたS級魔法師さ。本当は君以外にも用があったんだが、この様子からすると記憶喪失は本当なんだな。」
正直、魔法と聞いて漠然としない。理解を拒むような感覚に襲われていた。
「魔法ってなんですか?って顔をしているね。魔法ってのは要は科学的に説明できない力の総称だよ。僕は魔法を使って、魔法にまつわる災害だったり諸々を追うことが仕事なんだよ。」
正直、この「災害」やら魔法やらがよくわからない俺は聞き流していた。漠然としないし。
「ああ、僕はもう帰るから続きは明日にしよう。」
そういって赤羽さんは帰っていった。
俺は今日漠然としない感情で生きていた。赤羽さんの言っていたこと、それがうまく消化できない。どうしてどうしてと自問自答を4時間も5時間も続けていた。
そんな中喉が渇いたので病棟の中の休憩室に向かっていた。正直午後数日で起きたことがでかすぎてなんとも言えない感情、まるで案山子が歩き出すように、太陽が落ちてくるようなそんな驚きが渦巻いて歩くのも遅くなるほどだった。
「ねぇ?」
後ろから元気そうな女の子の声がする。
「赤羽さんが話していた男の子って君?」
振り向くと黒髪のボブヘアーの女の子が俺に嫉妬の感情を向けながらカリカリとした声で話しかけてくる。
「え、なんで、分かったんだ?」
「私のカン。ちょっと遅くなったけど私は名瀬アリサ。よろしくね、久遠さん。」
「ハルトでいいよ。」
なんか俺にとっては強引だったけど少し救われたような気がする。
「私もそろそろ退院できそうだしいつかは一緒に赤羽さんの家に住み込みで暮らせたらいいね。じゃあね。」
アリサはそういうと俺と別れた。まだ赤羽さんの家に住むと決まったわけじゃないし、そもそも身寄りがいないわけだが。ただこういってくれる存在は本当に助かるなぁと感じた。何せ俺はメンタル的に味方すらいない絶望的な状況だったからだ。
色々俺はよくわからない、そんな中で翌日を迎える。
赤羽さんは笑顔でこういう。
「君を保護して、魔法師として鍛え上げる。」
「は?」
正直理由がわからなくて、困惑するようなそんな感情に襲われるのだった。