ねこの日 音楽はねこじゃらし
ルイがユスティーナの部屋の前を通り掛かったとき、彼女の部屋から笑い声が聞こえた。
「ふふふ、くすぐったいわよ」
ご友人がいらっしゃるとは聞いていない。他の執事は菓子や紅茶を出してくれただろうか、と気を揉んでいると、「にゃあ」と愛らしい鳴き声が聞こえ、ルイは目を丸くする。
ノックすると、「はあい!」と嬉しそうなユスティーナの返事。
扉を開ける。ユスティーナは床にぺたりと座っていて、たくさんのねこに囲まれていた。
「ルイ、聞いて。ピアノを弾いていたらね、この子たちが窓の外に集まってきたの」
「きっとユスティーナさまの弾くピアノの音色が心地良かったのでしょう。言うなれば、ねこじゃらしです」
「ねこじゃらし? ねこちゃんたちが遊ぶ、ふさふさしたあれかしら?」
笑いながら、指をぺろぺろと舐めているねこたちを順に撫でる。
くすぐったいと繰り返し、無邪気に笑うユスティーナを見ているうち、ルイの表情も緩みきっていた。
「可愛いですね」
「でしょう? ねこちゃんたちふわふわなのよ」
ユスティーナはなんだか自慢げだったが、ルイは彼女も含めた全景を“可愛い”と形容した。ねこに囲まれたユスティーナは、心から可愛いと思った。
「ユスティーナさまの周囲が心なしか輝いて見えますね」
「ふふ、何を言ってるのよ。ほらルイも触って」
「本当ですね。柔らかくて温かいです」
二人の指に抱きつくように、ねこが遊んでいる。
ねこの日。いつもと変わらず忙しない城で、二人はひそひそと笑い合い、ねこを精いっぱい愛でて、ゆったりと時が流れた。
ねこの日にしか書けない短編を書きたくて駆け込みました。
ねこに囲まれるユスティーナを可愛いなと思うルイ。