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お味噌汁をあなたに

作者: 夕日色の鳥
掲載日:2021/12/01

「俺のために毎日味噌汁を作ってくれ!」


 あんた、そんなプロポーズしたんだよね。

 覚えてるかい?


 いつの時代よって、思わず笑っちゃったよね。


 あんたはむくれてたけど、指輪を受け取ってあげたら、喜びすぎて転んでたよね。


 まったく、その頃からそそっかしかったんだから。




 でも、その日から、本当に毎日お味噌汁を作ってやったね。


 私も意地だったよ。


 そういえば、初めてあんたに作ってあげたのも、お味噌汁付きの和食だったね。


 あれはね、私の母親が胃袋をつかんでやれって言って、死ぬほど練習したんだよ。


 うまかっただろ?


 あんたはまんまと胃袋をつかまれてたね。


 そんな古くさいことって思ってたけど、母親を信じてみて良かったよ。








「あっちに行ったら、もうおまえの味噌汁を飲めなくなるのか……」


 なんて、あんたは病院のベッドでそんなことを言ってたっけね。


「安心しな。

私もいつかそっちに行ったら、また毎日飲ませてやるよ」


 って言ったら、


「そうか、それは楽しみだ」


 って笑ってたね。








「ほら、あんた。

今日の分だよ」


 仏壇にいつも通り味噌汁を供える。


 あの人の好きだった、豆腐とワカメのシンプルなやつだ。


 なんでこんな面白みのないもんが好きなんだと聞いたら、


「おまえが最初に作ってくれたから」


 なんて、バカみたいなことを言ってたね。



 あ、そうそう。


 私ね、由紀のとこで一緒に住むことになったんだよ。


 我が娘ながら、気の強い子だけど、情には厚い子だからね。


 1人でいてもつまらないし、お言葉に甘えることにしたんだ。


 まあ、孫の世話係が欲しいっていう魂胆に、まんまとのってやることにするよ。


 孫はかわいいしね。


 旦那の義之さんも、自分は次男だから、お義母さんの面倒は見させてくれだなんて、あんたみたいなこと言ってたよ。



 だから、安心しな。


 私はこれからも、あんたのとこに行くまで楽しくやるからさ。


 また会ったら、その時はお互いに土産話でもしようじゃないか。


 あ、由紀たちが来たね。


 迎えに行ってくるよ。







 優しい微笑みの写真が飾られた仏壇には、微笑んでいるかのような温かい湯気がいつまでも揺蕩っていた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] <交差点>でも感じましたが、<主人公>のバックグラウンドを大事になさいますな。 [一言] <恋>、<愛>を超えるものがあるとすれば、<共に歩んだ道のり>でしょうな。 嫌な事も当然あったでし…
[良い点]  同じ味噌を使っても、同じ味にはならない。 親子でもね。 唯一の存在、無二のあじ ですね。 [一言]  いいお話でした。  ……。 感想と夕日さんのやり取りを見て、また涙が~。 なるほど、…
[良い点] 味噌汁を通して一つの愛の形が見えました。 どんな高級料理にも引けを取らない、彼だけの逸品。 私もそんな料理に出会いたいものです。
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