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その後王女殿下がいらっしゃる予定のリベルナ・ガーデンの中のテーブルにお菓子を運んだ。このガーデンは花がお好きだった前王妃リベルナ様のために前国王が建てられた花園である。
この国は基本的にいつでも穏やかな気候なのだが暖かいハリム、涼しいアクリムという季節があり、それぞれの時期にガーデンは全く違う顔をみせる。この国の女性が皆憧れると言われており、ここを見たいがために入宮する人もいるぐらいだ。
そうして少しガーデンに見惚れているとグスン、グスン,,,とガーデンの奥から鳴き声が聞こえた。こんな昼間に幽霊なんか出ないはず。怖いけど無視するわけにもいかない。私は心を決めて奥に足を運んだ。
そこにはふわふわの黄金の髪、空を写したような青い瞳からポロポロと大粒の涙を流す天使がいた。
「どうしたの?!」
私は女の子に駆け寄り、ハンカチを差し出した。
「,,,あのね,,,フィー、お兄様さまにおこられたの,,,。フィーがわるいけど,,,わるいけど,,,うわああん」
「えっと、泣かないで,,,お姉ちゃんまで悲しくなる。」
「お姉ちゃんまで?」
「うん」
「じゃあ泣くのとめるね。」
そう言ってしばらくして泣き止んだ少女はポツポツと泣いていた理由を話し出した。
「フィーのお母さまもお父さまもお兄さまもおしごとがいそがしくてあそんでくれないの。でもいたずらしたらみんな会いに来てくれるから今日もしたらお兄さまにおこられたの。」
泣き止んだはずの目にまた涙が溜まりはじめた。この子は寂しくて構ってほしかっただけなんだ。私は故郷の両親や姉、兄のことを思い出した。皆忙しかったはずなのに十分すぎるくらい構ってくれた。とても恵まれていたんだなと家族に改めて感謝した。
「あなたお友達は?」
「フィー、お友達いないの,,,。」
格好的に結構高位な貴族の娘に違いない。貴族がこの年で友達がいないのは珍しいが私自身も友達が少ない。そんな寂しそうな様子を見て私は提案してしまった。
「そっか、じゃあ、お姉ちゃんと友達になってくれない?」
「え!!いいの?」
「うん!お姉ちゃんお友達ほしかったんだ。」
これは本音だ。一年ほど勤めても相変わらずここには友達がいない。あまり人と関わらない仕事場だからだろうか。少し歳の差はあるが、話し相手ぐらいにはなってあげられるだろう。
「お姉ちゃんのお名前きくのわすれてた!お名前はなんていうの?」
「サラよ。サラって呼んでほしいな。」
「フィーもフィーってよんでほしい!」
こうして私にも晴れてお友達ができた。とっても可愛らしいお友達が。
「サラ!このあといっしょにお菓子たべよーよ!」
「ごめんね。私この後用事があるの。」
フィーと遊んであげたいが、このあとハイン様と約束がある。
「えー。じゃあ次はいつあえるの?」
「明日のお昼はどうかな。」
「うん!一緒にお茶しようね!」
そういって小さなお友達と別れハイン様との待ち合わせ場所に向かった。