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海でぐー/現代ファンタジーシリーズ

こんな昔話は嫌だ!

作者: 海でぐー

777チャレンジの一環で投稿する短編、三本のうち最後の三本目です。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


暇つぶしにご活用ください。

内容には期待しないでくださいw




 むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがくらしていました。

 おじいさんは山へシバカリに、おばあさんは川へ洗濯に。毎日せっせと働きます。


 ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、おばあさんの目の前を大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと川下から流れてきました。


「イーッヒッヒッヒ、こりゃ見事な桃だねぇ」


 おばあさんは老魔女のような笑い声をあげると、その桃を鷲掴みにし、片腕で持ち上げました。

 右腕に桃、左腕に洗濯物を装備して、おばあさんは家に帰ります。


 すると夕方になり、おじいさんが山から帰ってきました。


「おかえり、おじいさん。今日はシバ(という種類の魔物)狩れたかい?」


「今日はそこそこの成果じゃな……って、その桃はどうしたんじゃ?」


「川で洗濯をしていたらね、川下からどんぶらこ、どんぶらこと流れてきたんですよ」


「ほほう、川下からかい……川下!?」


「ねえ、根性ある桃でしょう? 川を遡るだなんて」


 二人は、産卵期の鮭のようなタフネスを見せたその桃に、伝説の鮭の名と、偉大な王の名と、勇敢な神の名と、桃だからという理由を合わせて「桃太郎」という名を付けました。


「ぼく、まだ生まれてないよねーーっ!? あと鮭と王と神の名はどこ行ったぁ!?」


 すると、夫婦のボケに我慢できなくなったのか、桃が二つに割れて中から元気な赤子が飛び出してきたではありませんか。


「おお、桃太郎。おめでとう」

「おめでとう、桃太郎。今夜はあなたの好きなキムチ鍋よ」


「もっと驚けや!! あと生まれたての赤子にキムチ鍋食わせんな!!」


 そのツッコミでフィーリングが合うなと感じたおじいさんとおばあさんは、二人で桃太郎を育てることに決めました。





 ……

 ……




 おじいさんとおばあさんから愛情いっぱいに育てられた桃太郎はすくすくと成長し、二人の言うことをよく聞く良い子に育ちました。


「サー! イエッサー!!」


「ホッホッホッ。桃太郎は命令に従う素晴らしい兵……もとい良い子に育ちましたな、おばあさんや」

「ええそうですね、おじいさん。でも、イエッサーの声が小さかったので、腕立て伏せ百回とランニング10キロ追加しましょうか?」


「あんたらは鬼や!!」


 すると、鬼という単語を聞いたおじいさんとおばあさんは、真剣な面持ちで桃太郎に鬼の話をし始めます。


「かくかくしかじか、というわけで悪い鬼がおってな。ワシらがあと20歳若ければ懲らしめてやれるんじゃが」


「いや、あんたらは今でも充分やれると思うよ?」


「あたしも、あと15歳若ければ水着姿のブロマイドを売って売って売りまくって荒稼ぎできたんじゃがのぅ?」


「そっちは半世紀若くても無理だよ!! あと、今の人はブロマイドって言っても分からないから!!」


 そんな掛け合いが日常になった老夫婦と桃太郎でしたが、人々が鬼に困っている現状を見過ごせず、桃太郎は15歳の成人を機に鬼退治のため旅立つことに。


「いや、ぼくは平和にのんびり暮らしてたい……」


「明日から毎日の訓練のテーマが「桃太郎をとっても強くしよう」から「桃太郎を死ぬギリギリまで追い込んで地獄を垣間見せよう」になるのと鬼退治に行くの、どっちがい……」


「ぼく行きます!! めっちゃ行きます!! なんなら今すぐにでも行きまっす!!」


 自ら鬼退治に名乗りをあげた桃太郎は、おじいさんとおばあさんから解放され……もとい二人の下を離れ、鬼の住処へと向かうことにしました。


「それで、鬼はいったい何処に住んでいるのですか?」


「たしか、三丁目のタバコ屋の角を曲がって少し行ったとこだね」


「意外と近所!? そして昭和だな!! 今時なかなかタバコ屋って無いよ!?」


「世知辛い世の中ですね、おじいさん。ヨヨヨ……」


「ほんとじゃな、おばあさんや。これも鬼の影響か……」


「鬼関係あるかな!? たぶん時代の流れじゃない!? コンビニで買えるし!」



 それから、鬼の住処が海を渡った先にある鬼ヶ島だと教えてもらった桃太郎は、おばあさんからお弁当として吉備団子をもらいます。


「ワシら秘伝のレシピで作った美味しい美味しい吉備団子じゃよ。一粒で三日三晩は余裕で戦えるはずじゃ」


「絶対ヤバいやつでしょ、それの材料」


「コンビニで買って食べてもいいじゃろうけど、おまえの健康のことが心配でなぁ。昨日の晩から寝ずに作ったんじゃよ」


「そう言われると断り辛いなぁ……。あと、今日になってから鬼退治の話したのに、なんで昨夜から仕込んでるんだろうね? 時を駆けるババアなのかな?」


 そんな暴言もスルーされ、桃太郎は旅立ちます。

 そしてこのあと、彼は出会うのです。頼もしい仲間たちに。





 ……

 ……





 そして――――数か月後。



「フハハハハ! 待っておったぞ、桃太郎!」


「いや、なんでぼくのこと知ってんだよ⁉ 勇者を待つ魔王か!」


「貴様に絶望を与えてやろう。もしくは世界の半分を与えてやろう」


「それ負けそうになった時に言うやつ! 早い早い早い早い!」


 遂に鬼が島に辿り着いた桃太郎は、恐ろしい形相の鬼と対面を果たします。

 なんだかおかしなノリの鬼と掛け合いを繰り広げつつも、桃太郎はその強大な気配に冷や汗が止まりませんでした。


「クックックッ。たかが人間とお供ごときで、我々が御せるとでも思ったか?」


「な⁉ 何故お供のことまで……」


「貴様のおじいさんとやらが、電話で「うちの可愛い桃太郎という子が、お供を三体くらい引き連れて退治に行くと思うので、何卒夜露死苦(ヨロシク)ゥ‼」と言っておったからな」


「あんのジジイ‼ 余計な真似を‼」


 すると間もなく、その鬼の後方に無数の仲間の鬼たちが現れます。

 どの鬼も筋骨隆々で、一体だけでも桃太郎より遥かに強そうです。


「貴様がどれほど強いか分からんが、俺たち鬼は一体で人間一万を屠れる力を持つのだ。今土下座するなら、帰してやってもいいぞ」


「くっ……!」


「あと、今なら記念品として鬼の金棒と洗剤もお付けして、さらには全員での見送りのサービスもあるのだぞ」


「なんで厚待遇なんだよ⁉ そんで金棒あげちゃうの⁉ いや、帰らないからね⁉」


 そう言って鬼の提案を跳ね退けた桃太郎は、じりじりと鬼との間合いを詰めていきます。

 鬼たちの周囲は大きな囲いで覆われており、とても逃げ出せそうにはありません。


「――――行くぞっ‼」


「うおおおおおおおぉぉぉぉーーーーっ‼」


 そして、遂に鬼と桃太郎の闘いが始まります。


 ぶつかり合った二人は大気を揺らし、地を割り、互いの闘気を撃ち出します。

 目にも止まらぬ速さで繰り出される拳を、互いに一歩も譲らず受け流し、相手の隙を窺います。


「いや、格闘漫画かっ‼」


「クックックッ! まさかここまでやれるとはな! 俺様もドラ〇ンボールで予習しておいて正解だったわ‼」


「やっぱり格闘漫画かっ‼ つーか読んだだけなのに凄いなお前⁉」


「まだまだ行くぞっ‼ ハアアアアァァ‼」


 そんなツッコミも虚しく、徐々に桃太郎は押されていきます。

 いくら強くても、桃太郎はまだ15歳。歴戦の猛者である鬼とは経験値が違い過ぎました。


「クハハハハ! この程度か桃太郎‼」


「鬼ってこんな強かったのか⁉ えいっとかポカッとかやってるイメージだったのに、全然違う……つーか流石におかしくね⁉」


「そぉれ、隙ありだ!」


「ぐああああーーっ⁉」


 そして遂に、桃太郎のボディに鋭い一撃が入ります。

 ノックダウンした桃太郎は、そのまま後方へと吹き飛ばされ、背後にあった巨大な岩山へ衝突してしまいました。


「クク、クハハハハ‼ 全く相手にならんな、桃太郎よ」


「ぐ、うう……」


「さあ、それでは――――さらなる絶望を与えてやろう!」


 その鬼の声に呼応するように、周囲を取り囲んでいた無数の鬼たちが一斉に桃太郎の方へ駆け出します。

 精一杯の力で立ち上がった桃太郎でしたが、とてもその数と闘える力など残っていません。


「「「ワアアアアァァ‼」」」


「ククク、終わりだ桃太郎よ。呆気無いものだな」


「「「ワアアアアァァ‼」」」


「儚い、儚いぞ。好敵手となるかと期待していたのだが……」


「「「ワアアアアァァーーッ!?」」」


「……ん?」


 その時、鬼は周囲の異変に気付きました。

 桃太郎に向かって駆け出した鬼たちが、何故か桃太郎をスルーしてあちらこちらに走り回っているではありませんか。


「な、何をしておるのだ、お前たち……」


 すると間もなく、鬼は彼らが逃げ惑っていることに気付きます。

 何かとてつもない脅威から逃れるように、右往左往していたのです。


「い、いったい何が……?」


 困惑した鬼は、刹那……ようやっと気付いたのです。

 先ほどから周囲に集まってきた仲間の鬼たちは、別に桃太郎を取り囲もうとやって来ていたわけではなかったということに。


 彼らは、初めから()()()()()()()のです。

 彼らの……さらに周囲を取り囲む、巨大な「壁」から。


「……あ、あれは何なのだ……?」


 島の周囲を囲む壁。

 それは、鬼ヶ島に最初からあったものではありませんでした。


 桃太郎が上陸した直後から出現し、徐々にその範囲を絞っていたのです。


「き、き、貴様っ‼ いったい何をした⁉」


「……いやぁ、持つべきものは仲間だよね」


「な、仲間だとぅ!? そ、そういえば貴様、お供の者たちとやらはどうした⁉」


「あー、やっとそれ聞いちゃう? もう手遅れだと思うけどね~」


「な、なにィ⁉」


 戸惑う鬼の視界を、巨大な影が横切ります。

 それで、鬼はようやく()()の存在に気が付いたのでした。


 上空を見上げた鬼。

 その視線の先にいたものは――――



「ド、ドラゴン……だと……」



 ――――巨大な(ドラゴン)が、無数の鬼たちを蹴散らして大地に降り立ちます。


 その雄大な両翼を閉じたドラゴンは、大地を揺るがすほどの咆哮をあげると、鬼の仲間たちに次々と襲いかかって行きます。


「ば、馬鹿な……」


「大将‼ か、壁がァァ!! ヒイイィ⁉」


「壁、だと……⁉」


 そう言われて鬼が周囲を見渡すと、今度は巨大な壁がどんどんと迫ってきているではありませんか。

 それが何なのか考えていた鬼は、遂にその正体を突き止めます。


「あれは――――伝説の大蛇、ヨルムンガンドかっ‼」


「ご名答」


 そう言い放った桃太郎は、ニヤリと笑って背後の岩山に手を当てます。


 すると、それを合図に巨大な岩山が()()()()()()のです。


「なんだとっ!? そ、それは……いや、()()()は何だっ!?」


「……フフフッ。ぼくの()()だよ。この、巨大海亀(アスピドケロン)もね」


 そう呼ばれた海亀が、岩山の巨大な穴から首を出します。

 その頭は鬼よりも遥かに大きく、ひと飲みで鬼を平らげてしまえそうなほど。


「ば、ば、馬鹿なっ!? いったいどうやって、そんなやつらを仲間に……⁉」


「なんか、きびだんごあげたら付いて来た」


「そんなわけあるかっ‼ どんな吉備団子だよっ‼」


「まあ、ぼくも驚いたけどね。本当にヤバい代物だったみたいでさ、自分で食べなくてよかったよ」


 ちなみに、桃太郎の旅の道中のお弁当は、吉備団子ではなく結局各地のコンビニ弁当だったのだとか。

 よく考えたら、長い長い旅なのだから、コンビニ弁当の方が賞味期限的には正解なのかもしれない。吉備団子が数か月も持つとは思えないから。


「まあ、出会うまでが超大変だったんだけどね。でも、おじいさんとおばあさんの伝手でなんとか」


「どんな伝手だよ⁉ やけに遅いなと思ってたら、そういうことか⁉」


「おじいさんが山で出会った竜に、おばあさんが川で洗濯……のついでに世界の海をまたにかけて大冒険してた時に知り合った巨大海亀、それに伝説の大蛇も」


「どんなジジババだよっ⁉」


「それは俺も同感。でもまあ、これで勝負あったよね?」


「……」


 改めて周囲を見回した鬼は、阿鼻叫喚の地獄と化した鬼ヶ島の様子に絶望し、大きな溜め息を吐いてガクリと項垂れます。


「分かった、降参だ」


「やった! これで、一件落着だね」


「貴様は鬼か……」


「いや、お前に言われたくないわ。あと、真の鬼は我が家にいるよ」


 そんな会話を繰り広げた桃太郎と鬼は、その後、互いに盟約を結びます。


 その内容は、鬼の一人を人質とすることで、鬼ヶ島の鬼の仲間たちに人間を襲うのを止めさせるというもの。

 もしも盟約を破れば、その時は人質の鬼の命運はおろか、再びお供の者たちが鬼ヶ島にやって来るという内容です。


 これには、流石の鬼たちも従うしかありません。


 そして――――



「……金銀財宝より、俺様が一番の宝物ってことか」


「何を上手くまとめようとしてるの⁉ 違うよ⁉」


「今後とも、末永くよろしく頼むぞ? マイダーリン」


「なんでだよっ!? つかお前、女だったのかよ⁉」


「俺様っ娘だ。貴様が俺様より強くなれるよう、毎日鍛えてやるからな? ガハハハハハハッ!!」


「まさかの鬼が増えたっ!? もう、闘いの日々は懲り懲りだよォ!!」



 こうして、桃太郎の苦難の日々は続いて行くのでした。


 めでたし、めでたし。





                    ――Fin――



いかがでしたでしょうか?

とーってもくだらなかったでしょう?(笑)


これは元々プロットを作ってあったのですが、最近アニメ化された「某昔話のifストーリー」的なやつを見て、感化されて仕上げました。悪ノリで書いたやつなので、世界観にファンタジーが混ざりまくりですが。


もしお楽しみいただけた方がいたなら、幸いです。


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