第零話 《ガーディアン》
またこれから少しずつ投稿しようと思います。
読んでいただけたら幸いです。
力なんて要らなかった...
俺はただ、精霊とずっと謳っていたかっただけなのに.....
「な、なぁルート。お前の兄ちゃん...勇者パーティへの勧誘断って【ガイオスフォボス】に幽閉されてるって本当か?」
「あぁ.....明日、公開処刑されるよ。勇者様の手によって、斬首されるんだ」
「マジで!?俺も見に行かなきゃ!!」
「そうだな。あんな臆病者は死んで当然なんだよ」
【ガイオスフォボス】とは入ったら最後.....主にA級からS級犯罪者を収容する難攻不落の海底刑務所である。そんな刑務所の更に奥深くにルートの兄『ライン・ドネクス』は収容されてから5年間、MPポーションを無限供給され魔力を吸われ続けていた。
「この死刑囚何したんですっけ?」
「この刑務所内で知らねぇのお前だけだぞ。コイツはなぁ、勇者様こと第一王子の『リーランド・ゼノン・ファイ・グィネヴィス殿下』の率いる魔王討伐パーティへの勧誘を断り続け、国王様の怒り触れちゃってここに収監されたんだよ」
「うわー、最悪っすねコイツ」
「(まぁ、本当にヤバいのはその国王様と第一王子なんだけどな)」
「何か言いました、先輩?」
「いや何も...」
リーランド王子はコレを理由に鍛錬もせず魔王討伐を辞め、夜な夜な遊び歩いている。そしてその魔王討伐は第二、第三王子へと任が代わるも悉く失敗し、冒険者への最優先クエストとされており、冒険者たちは怒り、そして疲弊しきっている。勿論冒険者たちはその怒りをラインに向けている。ラインはこの国、いやこの世界で嫌われ者として明日この世を去る。
国民の誰もが皆そう、思っていた。
ライン本人を除いては.....
翌日。
雲一つない青空とは裏腹に雷雲と大雨の激しい音が交差する中、城下の処刑台でラインは断頭台に身体を固定されていた。そんな光景を国民のほぼ全てが集結し雨に打たれながらその時を待つ。
「このまま雨に殺されるのを待つのも悪くないが、リーランドよ.....それではお前の気が治らぬだろう?」
「はい、父上。この者の所為で未だに魔王を討てておりません。この罪人は我が手で葬ると致しましょう」
国民や兵士はラインへの怒号を雷雨が掻き消し、王子リーランドは国王ザインドを連れ兵士からナイフを受け取り断頭台の横に立つ。
「国民よ!!これより刑を執行する!!!!瞬きせずによく見ておくが良い.....これが罪人、いや.....世界を見捨てた裏切り者の末路だ!!!!!!!」
リーランドはナイフで縄を斬り、刃を落とす。
が、と同時にラインは詠唱を終え小さく微笑む。
「やっと謳えたよ.....」
5年もの間、ラインはただ生かされていただけでは無い。魔力を供給され続けた結果、神の如き力を.....ついにその完全詠唱魔法を解き放つ。
ーーー【ガーディアン】ーーー
ライン以外の時が、止まる。
空から雷雲を吹き飛ばす程の2本光の柱が現れ、断頭台からラインを救い出す。
国王ザインドと第一王子リーランドは怒りを帯びた巨大な何かに握り潰され、ラインは優しき何かに抱かれる。
そのままラインと2つの何かは何処かへと消え、空は雲一つ無い蒼が広がる。
そしてまた、時が動き出すーー-。
この日、人々は神の如き一瞬の出来事に神罰が下ったとし、神を崇めた。
それから数年後、この世界は魔王に支配され、滅び.....そして、五千年が経過した。
「ラインにはもっと謳って欲しい、僕らと一緒に」
物語はここから始まる。
読んで頂きありがとうございます。