雷蜘蛛
白く染まった視界が戻ってきた。
班員が床に倒れている。
あの特徴的な音と光り、雷。
土蜘蛛というより【雷蜘蛛】だ。
能力を使うのはB級以上。
雷蜘蛛が倒れている班員を糸で引っ張り口の中へと放り込み咀嚼音を鳴らす。
「みんな奴から距離をとれ!絶対にあの糸に触れるな!」
「あの人達が一階に着くまで耐えるんだ」
漣さんが言う。
しかし一瞬で仲間を失い、自分も死ぬかもしれないと言う恐怖が三班の人を支配し、理性を奪う。
残っている四人の一人が俺達を通り越して西の方へと逃げ始める。
「おい待て!」
目を逸らしてしまった。
雷蜘蛛は……
跳んだ。
俺たちの頭上を通過し逃げてった班員の前に着地する。
大きな着地音とともに床が少し揺れる。
班員は腰を抜かして動けなくなった、そこを無慈悲にも振り下ろされた鎌が串刺しにする。
そしてまた口の中へ入れようとした。
「もうやめて!」
その時、白い桜が刃となって飛んでいき鎌に亀裂が入る。
衝撃で班員が鎌から床に抜け落ちる。
「あいつを助ける。美咲は……を頼む」
「うん」
「俺も行くぜ大輝」
「糸は私が防ぎます」
走り出す。
雷蜘蛛がこちらに反応して糸を放ってくる。
それを氷のトンネルが防ぐ。
班員は雷蜘蛛の足元、鎌が届く範囲だ。
あの鎌は氷では防ぎきれない。
かといって漣さんの衝撃波も細い鎌には効果がない。
俺はもちろん論外である。
雷蜘蛛が鎌を振り上げる。
「美咲今だ!」
美咲の白桜はとてつもなく硬い。それを槍状にすることによって威力と速さが上がる。
それを鎌の亀裂に当てることが出来れば砕くことができるかもしれない。
白い槍が放たれる。
振り上がった鎌の側面、亀裂に当たり鎌が粉々に砕ける。
鎌を砕かれたことで雷蜘蛛の動きが一瞬止まる。
その間に班員を回収して下がる。
今すぐにでも下に降りて回復してもらわなければ命が危ない。
3班の人へと班員を渡す。
「俺らが奴を止める。下に行ってそいつの回復と応援呼んで来い」
「頼みましたよ」
「絶対に死なせないで」
『はい』
雷蜘蛛が鎌を生やす。
ベルブは魔力がなくなるまで再生できる。
訓練中に魔鋼棒にテストしていたがB3%しか削ることが出来なかった。
さっきの様な作戦が2度通用するとは思えない。
当然だが能力の精度は本人の集中力に依存する。
30回以上も繰り返すなんて、はっきり言って無理だろう。
近づかなければ鎌を食らうことはない。
糸も氷の壁で防げる。
ここは耐えるしかない。
互いに睨め合う。
すると突然雷蜘蛛が窓の方へと歩き出す。
外に出てそのまま壁を下に降りていく。
不味い。下にはたくさんの人がいる。
「急いで下に向かうぞ」
読んでくださりありがとうございます。
どうも作者のFuleviaです。
今回は主人公の大輝より、ヒロインの美咲の方が活躍して大輝の立場が危うくなりました。
大輝君、もうちょっと頑張ろう。
この物語が面白いと思ったらブクマ、高評価、コメントお願いします。