急襲
亀裂の中から出てきたのは怪物だった。
ぱっと見は大きめの犬のようだが毛が無く、黒く分厚い皮膚に覆われている。
決定的に違うのは足の生え方だ、トカゲのように体の横から足が生えている。
怪物は一番近くにいる生徒の方へ飛びつき、押し倒すとそのまま首を噛み千切った。
怪物は鳴き声を上げるとそのまま食べ始める。
亀裂の中から次々と怪物が出てくる。
今度こそ全体がパニックになり、生徒たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
しかし化け物の方が早く逃げきれず生徒がどんどん食われていく。
(俺も逃げないと、でも校舎までは遠いこのままじゃ追いつかれて食われる)
そう考えてるときに……
「早くこっちに来るんだ!」
校庭にある倉庫の中から呼んでいる。
(あそこなら行ける)
倉庫へと走る。
やっとの思いで倉庫に着く。
まだ後ろで襲われた生徒の声が聞こえが耳に残っている。
倉庫の中には5人ほどの生徒がいた。
さっきこちらを呼んでいた人が扉を閉める。
「なんなんですかあの怪物は?」
「わからない」
「とりあえずここで助けが来るまで待とう」
~数分後~
みんなの顔は暗く、不安の色が見える。
(ここにいるのがばれてしまったらどうしよう)
頭の中で不安がよぎる。
(いつまでここにいればいいのだろうか)
すると大きな車の音と銃声が聞こえてくる。
(なんだ?)
「救援が来たのか?」
そう言って一人が扉に手をかける。
「開けるな!怪物がいるかもしれないだろ!」
「救援が来てるなら助けてもらうんだ!」
言い争いが始まってしまった。
「静かにして!言い争ってる場合じゃないでしょ!」
桜の花びらのヘアアクセサリーを付けた女子生徒がそう言うと、言い争いが収まる。
(よかった)
静かになり足音が聞こえてきた。
扉が勢いよく壊される。
怪物が前に立っていた。
言い争いをしていた男子生徒が後ろへと下がる。
しかし言い争いを止めた女子生徒が動けずに固まってしまっている。
怪物と俺が動いたのは同時だった。
倉庫に置いてあったバットを女子生徒に飛びかかる怪物の脳天へと叩き込んだ。
ぐしゃっという気持ちの悪い感覚とともにバットが怪物の頭にめり込む。
怪物は動かなくなった。
「怪我は無いですか?」
「はい。あの、ありがとうございます」
また足音がする。
「大丈夫ですか!」
「ここは危険です。我々と避難しましょう。」
入ってきたのは銃を持った自衛隊員だった。
全員がそれぞれ喜びの言葉を言っている。
(助かった)
俺も内心ほっとする。
自衛隊に連れられて外に出るとそこはもう見慣れた学校ではなかった。
あたり一帯に生徒と怪物の死体がある。
亀裂がさらに大きくなっており、自衛隊員と怪物が戦っているのが見える。
怪物は撃たれても、すぐに回復している。
俺たちは自衛隊の車に乗った。
近くの拠点に行くらしい。
車が走ってる間、外を見ていた。
家が崩れ、燃えている。
「もうすぐ拠点に着くぞ」
運転してる人がそう言った。
そして大きな音とともに俺は浮遊感に包まれた。
意識が戻ってくる。
感覚が徐々にはっきりとしていく。
口に広がる血の味。
何かが壊れる音、誰かの悲鳴、叫び声、泣き声。
何かが焦げるにおい。
重い目を開く。
横転して燃える車がある。
(みんなであの車に乗っていたはず)
起き上がろうと体を動かす。
「うっ」
体が痛い、腹部から血も出ている。
燃える火の音に交じってぐちゃ、ぐしゃと何かを潰すような音が聞こえてくる。
(何の音だ?)
音のする方向へと目を向ける。
燃える車の奥、人よりも二回り大きい濃い深緑色の怪物がいる。
ピロリンとスマホが鳴ってしまう。
化け物がこちらをゆっくりと振り返る……
そして俺を見つけると、奇声を発しながら四足歩行でグングン近づいてくる。
(早く、早く逃げないと!)
そうは思うがうまく力が入らない。
数十メートルの距離をあっという間に詰めてきた化け物は倒れて動けない俺を前足で踏みつける。
「うっ!」
腹部の傷がさらに開き血が流れていく。
痛い。熱い。
「だれか、たす、け……」
痛みが、感覚が無くなっていく。
薄れゆく意識の中で風の音だけが聞こえた……
読んでくださりありがとうございます。
作者のFuleviaです。
今回は怪物の進行が始まる回でした。
プロローグと繋がりました。
咄嗟に女子生徒を助ける主人公かっこいいですね。
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