三題噺第21弾「動物」「メリーゴーランド」「禁じられた世界」
“メリーゴーランド”の“動物”といえば白馬が一般的だ。
しかし、ここの遊園地は白馬ではない。
では何かというと、それはパンダである。
なぜパンダになったかは不明。一説にはパンダは人気があるからとか。そんな理由。
そして現在、友人四人と遊びに来ている。
「メリーゴーランド乗ろうよ。ここのはパンダなんだよ」
「えー。メリーゴーランドとか子供っぽい」
「いいじゃん! 乗ろっ乗ろっ!」
水月に半ば強引にメリーゴーランドへと乗らされる。
メリーゴーランドに乗っていると、突然視界が歪み、世界がぐにゃりとした。
視界のぼやけが終わると、見たことがない景色──草原に立っていた。
「やぁ、“禁じられた世界”へようこそ。今から君たち四人にはこのゲームをクリアしてもらうよ。ただし、死んだらそこでおしまい。ゲームオーバーは死だよ。頑張ってクリアしてね」
目の前には小さなうさぎがしゃべっている。意味不明だ。
「ゲームをクリアしてねってどういうことだよ」
友人の一人──和樹が口をはさんだ。
「そのまんまの意味さ。ここは禁じられた世界──ゲームの中なのさ。だからゲームをクリアしてもらう。簡単な話でしょ」
ここがゲームの中? やっぱり意味不明だ。
「ゲームの中って……どうしてこんなことに……?」
友人の一人──琴美が困惑して話す。
「君たちは選ばれたんだよ。勇者一行として。クリアのルールは簡単さ。魔王シャベルニクドンを倒すこと。倒し方は自由だからね。魔王ここに呼ぶこともできるけど、呼ぶかい?」
魔王シャベルニクドンを呼んだらどうなるのだろう。どんなやつか正体がわからない以上呼ばない方が賢明かもしれない。
「ゲームクリアは早い方がいい! 呼んでもらおうぜ!」
「ちょっと待てよ。どんなやつかわからないんだ、死ぬかもしれないんだぞ!」
「まだ死にたくないよ……」
「俺がなんとかしてやるって」
和樹は血気盛んに口走る。
「じゃあ呼ぶよ。魔王シャベルニクドンのおなーり」
突然暗雲が立ち込め、雷が迸る。
「呼んだかハチベェ」
そこには大きなラーメン丼に、並々牛丼が入っている器が出てきた。おかしなことは一つ──そう、しゃべることだ。
「シャベルニクドンに挑戦するものが現れたんだよ」
「ほう、このわしに挑戦したいものが現れるとは久しいな」
いやいや、誰も挑戦したくてしたいわけじゃないっての。
「これが魔王……? なんだか拍子抜けだ」
「勝負はこのわしを完食することができるかどうかじゃ」
「えっ……食べるの?」
「食べるの……?」
「食べるだけなの……?」
皆、口々に食べるだけという言葉を口にする。死ぬことがあるとかいうから、てっきり戦うのかと思ったけど、違うようだ。
「わしを食べれるかな?」
「よーし、やってやろう」
和樹が挑戦するも、シャベルニクドンは逃げ回り、制限時間六十分の間に食べさせてもらえなかった。
「逃げるとはずるいぞ」
「食べさせてやるとは一言も言ってないのでのぉ、女の子になら食べてもらいたいのぉ」
なんだ、ただのエロじじい、もといエロ魔王だったか。
「じゃああたしが挑戦する」
水月が名乗りを上げた。
「そっちのムチムチねぇちゃんのが好みだけど、まぁよいわい」
なんだ、やっぱりエロ魔王だったか。
「制限時間六十分のうちに食えるかのぉ」
「よーいはじめ」
ハチベェといううさぎが審判役らしい。
はじめは勢いよく食べていた水月だったが、残り時間十五分のところでペースダウンした。シャベルニクドンは残り三分の一ってところだ。
「もう限界」
「終了。そこまで」
あと四分の一残った。
「なかなか食べたのぉ。次はそっちのねえちゃんかな」
「が……がんばります」
「ハンデとして、残りのままでええぞい」
「はじめっ」
唐突に始まったな。
「いただきます」
琴美は開始二十分で完食した。
「ごちそうさまでした」
「いやー、やられたわ。何が望みだ?」
「元の世界へ返してください」
「そんなことか。ではハチベェ、世は楽しめたし返してやりなさい」
「はい、シャベルニクドン様」
また視界がぐにゃりと歪む。
気づいたらメリーゴーランドのパンダの上に乗っていた。一体何だったのやら。
「帰ってこれたんだね」
「みたいだな」
「夢を見てたみたい」
その後、この遊園地にはもう来ることはなかった。
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