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転生し神の使いとなる


 魔法の道を究め、その技術を極めた。

 魔法を使う者として最高の称号である賢者と呼ばるようにもなった。

 だが、俺の知識や技術を誰かに伝えようとは思わなかった。


 きっと、理解されない。そんな時間があるのなら、新魔法の開発、既存魔法の改良に時間をあてたかった。

 変わり者と揶揄されようが、賢者ともてはやされようが、外聞を気にしたことなどなかった。


 しかし、魔法技術や知識があっても、賢者だろうがなんだろうが、不治の病にはどうも敵わないらしい。


 このときのために、密かに開発した転生魔法がある。実行するときが来たようだ。


 使わなければ、俺が築き上げたものは、誰にも知られないまま消え去ってしまう……。

 死に際になって、一人でも弟子を取っていればよかったな、とようやく思う。

 誰にも伝授しなかったことだけが心残りだった。


 転生が成功したら、次の人生では、俺の知識や技術は広く公表し、魔法界に貢献しよう。

 好きな女がいたら、結婚し、子供を作ろう。その子にすべてを伝えよう。

 それができなければ、弟子を取ろう。


 今みたいに、ベッドの周囲に誰もいないのは、やはり少し寂しいからな。


 そろそろこの肉体は限界だ。


 長年研究し開発した転生魔法を俺は発動させた。




 ……どうやら死んだらしい。

 俺は雲の上にいて、見上げれば青空と太陽がある。


 生まれ変わるための手続きか何かがあるんだろうか。


「やあ。賢者」


 声に振り返ると、中性的な顔立ちの男がいた。


「俺を知っているのか」

「もちろん。ボクは君たちニンゲンが言うところの神だから。何でもお見通しさ」

「それなら話は早い。早く転生させてくれ。すぐに生まれ変われるはずだったんだが……」


 魔法は完璧のはずだった。

 試したのは今回がはじめてなので、何か不具合でもあったんだろうか?


「ああ、うん。そうだね。その予定だけど、ちょっと君に話があって」

「話?」

「そう。偏屈で変わり者の君が、魔法について誰かに伝えたいと願うなんて、ボクは思いもよらなかった」

「そのための転生を、今、あんたに邪魔されている」

「ハハハ。そう邪険にしないでおくれ。ボクは、君の魔法技術や知識、魔法への探求心を買ってるんだ。それは場合によっては、神さえ凌ぐものだ」


 話が見えない。

 俺は先を促すように小さくうなずいた。


「君の魔法界へ貢献したいという思いに賛同した。今の世界は、想定以上に魔法技術の進歩が遅くてね。ボクはそれを憂慮していたんだ。図らずも君とは同じ志だったわけさ。だからボクたちの願いが叶えられるように、手助けとなる祝福を与えよう」


 神の祝福――。

 歴史に名を残す聖職者。

 はたまた時の権力者。

 英雄。

 時代の寵児。

 彼らは神から特別な力――祝福を得たとされている。具体的にそれが何なのかまでは不明だが、その手の人物は神の祝福を得たのだと聞く。


「前の人生では、君は歴史に名を残し、『近代魔法の父』と呼ばれ後世に語り継がれる人物になれるはずだった」

「偏屈で悪かったな」

「いや、偏屈でよかったんだ。だから探究し、極めることができた。(ボク)すら認めざるを得ない神域の魔法使いとなれた」


 神様らしき男がゆっくりと近づいてくる。

 俺の額に手をかざし、聞き取れない言葉をつぶやいた。


 何かが変わったとも思えず不思議そうにしていると、神はにこりと笑った。


「神の使いとなった君に、よき二度目の人生があらんことを」


 こうして俺は神から力を授かった使徒となり、転生し二度目の人生をスタートさせた。


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