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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第一章 仲間集め
6/150

5話 7人目デスネ! & 8人目やね

『アイリ、日本に行くの?』

『イエス! 日本にいるミーのお婆ちゃんが足を骨折してしまったネ。父親がそれを上司に言ったら、日本での仕事を任されたらしいデス』

『いいなあ、いいなあ。日本、アキバ、同人文化。私も日本に行きたいよお』

『だったら、夏休みに遊びに来ればいいデース! 一週間くらいなら泊められると思うネ』


 アメリカの友達にそう言い残し、右京・アイリーンは高校二年に上がる直前の春休み、日本行の飛行機へと乗った。


 生まれながらの金髪に、色白の肌。おおらかな性格に大きな声。

 だが名前にもある通り、右京は日本人の母とアメリカ人の父を持つ、ハーフだった。

 親の影響からか、子供の頃から日本が好きで日本語も堪能だった右京は4月2日、日本へと降り立った。

 母親が昔に通っていたと言う高校へ転入し、今日が登校初日。


「オー、桜が満開ネ!」


 アメリカでは私服だった学校生活も、新鮮な制服を身に纏い、通学路を行く。

 金髪が珍しいのか、右京はみんなからの注目の的だった。


「はい、では今日からここが皆さんのクラスとなります。で、クラス替え初日ということで自己紹介の時間を設けようと思うのだけれど、まず先生の方から一人紹介します。アメリカからの転入でやって来た子がいるの。右京さん、ちょっと前に来てもらえる?」

「イエス!」


 先生から呼ばれるや否や、勢いよく立ち上がると右京は小走りで教師の隣へと向かう。


「じゃあ軽く自己紹介をお願いね」

「かしこまりデス。ミーの名前は右京アイリーン。親しみを込めて、アイリって呼んでほしいネー! アメリカのミシガン州からやってきマシタ。お近づきの印にと思って、プレゼントを持って来たデース!」


 そう言って一度自分の机においた鞄を取りに戻ると、中から異様な色彩を持つ何かが現れた。


「えー……。それは、何かしら?」

「ディシィズ、チョコレート! ちょっと遅いバレンタインデース! 見た目はグロテスクだけど、味はべらぼうにスウィート!」


 右京はサイズもアメリカンなチョコレートを配っていく。


「うーん、ダイエット中なのですけれど、お土産とあっては仕方ないですわね。もぐもぐ」

「一之瀬さん、食べるのは休み時間中にして下さいね。……えー、まあ、この通り日本語は喋れますが、分からないことも多いと思うので、みなさん色々とサポートしてあげて下さいね」

「よろしくお頼み申すネー!」


 同じクラスとなった二宮が拍手をすると、それが教室全体に伝播していく。その震源地を見逃さなかった右京は二宮を見てにこっと笑った。そして、お返しするように二宮も笑顔を送る。

 内心は、野球部員のターゲットはあいつだと言わんばかりに。


 そして昼休み。

 転入生には基本的に人が群がるものだが、クラス替え初日とあっては皆もそんなことを気に掛ける余裕はない。


「アイリさん、一緒にお昼ご飯を食べませんこと?」


 右京の前の席に座っていた一之瀬が声をかける。


「イエス! レッツランチ!」

「……あたしも混ぜて貰っていいかなぁ?」


 そこに、弁当をもった二宮も現れる。


「オフコース! 飯を囲えばフレンズネ」


 各々持参した弁当を開ける。


「優美の弁当が大きいのはいつもの事だけど、アイリちゃんの弁当も負けず劣らず大きいねぇ」

「腹が減っては戦はできぬ、デス。ミーの大好きなおかずネ」


 弁当箱の中には、これまたアメリカンサイズな肉が、これでもかというほどすし詰めされていた。


「羨ましいですわ。そんなに食べても、アイリさんはスタイルいいですわね」

「? ユーも胸が大きくて、スタイルいいデスネ! ストレスたまると体に悪いデス、足りないなら一切れいかが?」

「し、仕方ないですわね。これも友好の証、受け取らないわけにはいきませんわ」

「おーい優美、またリバウンドしちゃうよぉ? にひひ」

「黙っていなさい、二宮」


 一之瀬は不機嫌となったが、肉を頬に含むと一瞬にして甘美な気持ちに移り変わった。


「そーいえばぁ、アイリちゃんは部活って決めたかなぁ?」

「日本には漫画研究会なるものがあると聞いたネ。ミーは漫画が大好きデス」

「うーん、美術部はありますけど、漫研はないですわね」

「!?」


 右京アイリは口に含んでいた肉を急いで噛み砕き、お茶と一緒に流し込んだ。


「リアリィ? 困ったデスネ、どうしたものデショウ」


 困った、困ったと言いつつ、右京は残っている肉を頬張る。

 そんな右京を見て、二宮はにやりと笑みを浮かべる。


「ねえアイリちゃん、入る部活に困ってるならぁ、野球部に入らない?」

「オー、ベースボール」


 右京はきょとんとした目で二宮を見返す。


「そぉそぉ、ベースボール。今年から部活を発足させようと思うんだけど、部員が足りなくてねぇ。入ってみる気ないかなぁ?」

「初代の部員ということデスネ。イエス、これも巡り合せネ。野球やったことはあまりないケド、入ってみるネ!」


 行き当たりばったりな性格なのか、右京は即答した。


「ほんとぉ? いやー嬉しいねぇ。今日も活動するけど、来れる?」

「ノン。今日はお婆ちゃんのお見舞いに行かなきゃならないネ」

「じゃあ明日からだねぇ。道具はあるけど、タオルとか水筒は持参してねぇ」

「オーケー!」


 ごちそうさまネ、と日本人のように両手を合わせ、弁当箱をしまう。


「そういえば、購買はどこにありマスカ? アイスが食べたくなってきたネ」

「あらあら、じゃあわたくしがご案内いたしますわ」

「……君たち、まだ食べるのかぁ」

「わたくしは食べるとは言ってませんわ」


 一之瀬は少し怒った風に返したが、しかしどう聞いても食べる未来しか見えない。


「はいはい、あたしは用事あるから行かないけど、腹は壊さないでよぉ」


 購買へと向かう二人を見送って、二宮は教室内を見渡す。


 二宮が目を付けたターゲットは、右京の他にももう一人いた。

 部活に入っておらず、かつ外部のクラブチームにも所属していない人物。


「ねぇ、敦子ちゃん、今暇かなぁ?」


 二宮の問いかけに、左門敦子は読んでいた本から目線を上げる。

 黒髪のボブカットで眼鏡をかけた、二宮ほどではないが小柄な女子だった。


「どうかしたん?」

「いやさぁ、敦子ちゃんって部活とか入ってないでしょ? 野球部に入らないかなぁ、と思ってねぇ」

「う、うちが運動部に……!? 無理無理ムリ。だってうち、今まで運動なんて全然せえへんかったし……」

「えー、そんなの関係ないよぉ。あたしと敦子の仲じゃん」

「仲って……確かにニノちゃんとは去年も同じクラスやったけど」


 左門は二宮の顔から視線を切り、俯いた。

 唇を噛みしめて葛藤する。


 運動に、興味がないわけではない。

 だけど、苦手だからといつも逃げてきた。その結果が今の自分であるならば、変えたいという意思もある。


 しかし、怖い。

 特にチームスポーツなんて、足を引っ張ったらどうしようという思いがあまりにも強すぎた。


「……ごめん、やっぱり、うちには無理や……」


 左門は、振り絞るように言う。

 流石に、二宮もそれ以上勧誘することは出来なかった。


「うーん、仕方ないね。まぁ、グラウンドで活動してるからぁ、もし興味が湧いたら来てよ。いつでもウェルカムだからねぇ、にひひ」




 そして翌日。


 放課後になった瞬間、右京は帽子を被り、一之瀬と二宮を引っ張っていく。


「ヘイ、早速いくデスヨ。グラウンドがミーを呼んでるネ!」

「おぉ、元気がいいねぇ」

「当たり前田のクラッカー、というやつネ。キョーコは痩せすぎデス!」

「……あの、わたくしは?」

「ユミは良い肉の付きっぷりネ!」

「……ショックですわ」


 3人がグラウンドに着くと、新入生の4人は既にグラウンド整備を終えていた。


「ニノ先輩、新しい部員ですか?」

「そうだよぉ、じゃあアイリちゃん、自己紹介お願いねぇ」

「イエース! ミーの名前は右京アイリーン、アイリと呼んでほしいネ!」

「……は、ハーフ、なのだ……」


 ブロンズの髪を見て投山が吐息を漏らす。

 ハーフ、というのが中二心の琴線に触れたのか、右京を羨ましそうに見つめる。


「サタンちゃんも相変わらずだねぇ。じゃあ、みんなも自己紹介してねぇ」


 一通り自己紹介が済んで、質問タイムに入る。


「はいはーい! アイリ先輩は、どこのお国から来たんですか?」


 友希は手を挙げて質問する。


「アメリカのミシガン州ネ。MLBでは、デトロイトレオパーズがあるところデス」

「そうだ、レオパーズと言えば、日本にも同じ名前の女子プロ野球チームがありますよ」


 小鳥遊がそう言うと、右京は目を輝かせる。


「リアリィ? せっかくだから、日本ではそのチームを応援するネ!」

「……レオパーズ。昨日の試合。完封負け。うっ、頭が……」


 そして、またしても友希は項垂れた。

 そこで、熊捕もプロ野球の会話に入って来る。


「みな贔屓のプロ野球チームがあるんじゃのう。ならわしは、実家が広島じゃけえ、レッドスナーパーを……」

「みんな酷いよ! ここは神奈川だよ? せっかく地元の野球チームがあるんだから、オーシャンズを応援しようよ! ね、ね、桜ちゃんは? 応援してるチームはある?」

「そ、そうだな、我は……」


 投山は、生まれも育ちも神奈川だが、県内ではハマスタと真逆の位置にいたため、特に応援しているチームもない。

 だが、涙目で訴える友希に、あたふたしてしまう。


「いやぁ、開幕明け直後だけどぉ、応援するなら現在首位のラビッツでしょお。ねぇ優美?」

「無論、そうですわ」

「いやいや、僕が応援してるダイナソーズは去年優勝してますし、ここはダイナソーズで」

「ユーも、ミーが応援するレオパーズにしマショウ!」


 様々な方角から応援する球団を押し付けられる投山。そして極めつけに、熊捕が肩を叩いて言った。


「バッテリー組むんじゃけえ、レッドスナーパーじゃろう?」

「……わ、分かったのだ」


 投山はそのオーラに気圧されて、熊捕に了承した。


「どーして7人もいて地元のチームを応援する人が居ないの……。もう怒りました、優美先輩もニノ先輩もアイリ先輩も、早く着替えて来てください、練習しますよ!」

「はいはーい」


 部室で着替えてきた二年生と合流して、ランニングを開始する。

 ランニングの最中、先頭を走っていた友希が、木の陰に隠れてこっちを見ていた女子生徒を見つけた。


「あれ、なんだかこっちを見てる人が居ますね」

「あの子、クラスで見た気がしマス!」

「ああ、敦子ちゃんかぁ。昨日誘ったんだけど……断られちゃってねぇ」


 しかし右京は、『断られちゃって』の部分が聞こえなかったのか、ランニングコースを大幅に外れ、左門の所へダッシュで向かっていった。


「……え、えええ!?」


 困惑しているのを無視して、右京は左門を抱えてこちらへ戻ってくる。


「ヘイ! 部室へ案内してくるので、先にランニングを済ませちゃってくだサイ!」


 それだけ言い残すと、ピューと部室の方へ駆けて行った。


「いいんですか、あれ。誘拐犯みたいになってますけど」

「まあ、犯罪にはならないと思いますわ」


 部室で何やら騒がしい声がしたかと思うと、急に静かになって扉が開いた。

 そこから出てきたのは右京と、少しぶかぶかのユニフォームを着た左門だった。何があったのか、髪はぼさぼさになり、眼鏡もずれている。


「じゃあ、早速練習デス!」


 左門はあれよあれよという間に練習に参加させられていた。

 しかし。


「あれ敦子ちゃん、こんなに大きな水筒とタオル、持ってきてたのぉ?」

「えっ、あっ、これは……一応や」


 水筒とタオルを隠すように胸に抱き、左門は恥ずかしそうに俯く。


「にひひ、なんだぁ言ってくれればよかったのにぃ」


 自己紹介を済ませて、これで部員は8名。

 グラウンドへ駆けていく少女たちには、野球部の体裁が出来上がりつつあった。


人物紹介⑦

右京・アイリーン (うきょう あいりーん)

相模南女子高等学校 2年C組

??番ライト 右投げ右打ち

167㎝ 59Kg 髪色:金髪

出身:アメリカ(デトロイト)

好きな球団:レオパーズ

好きなこと:アニメ・漫画


人物紹介⑧

左門 敦子 (さもん あつこ)

相模南女子高等学校 2年C組

??番レフト 右投げ右打ち

153㎝ 45Kg 髪色:黒

出身:大阪

好きな球団:レオパーズ

好きなこと:音楽鑑賞



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