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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第一章 仲間集め
2/150

1話 スター☆ガール!

この話の最後に載っている画像はモコショコさん(@mokosyoko12)からいただいたファンアートです

初めていただいたFA、感激です!

ちなみに私もTwitterやっているので良ければ[@str1994317](半分はDenaの応援ですが……)

「友希、遅刻するわよー」


 母親の声に反応して目を開けた。寝ぼけ眼を擦って、時計を見る。

 いつの間に目覚まし時計を止めていたのか、友希は一瞬の硬直のあと飛び起きた。


「やっばい、今日は入学式なのに!」


 急いで支度して、息を切らしながら母親のいるリビングに入る。


「先が思いやられるわね。はい、ご飯」

「ありがとっ!」


 朝ご飯をかき込んでいる友希を横目に、母親は玄関へ向かう。


「じゃあ先に行っているわよ。それとも、一緒に行った方がいいかしら?」

「えー、恥ずかしいよ。お母さんは有名人なんだから」


 元プロ野球選手である友希の母親は、近所でそれなりに顔と名前が知られている。

 反抗期ではないが、思春期ともなると恥ずかしくも思う。


「はいはい。遅刻だけはしないでね」


 母親が出て行ったあと、友希は時計と何度も目を合わせながら、出発の支度をする。


「えーと、鞄の中は昨日準備したし、携帯も持った、財布もある」


 最後に鏡の前で身支度のチェックをする。

 友希の大きな目に、自分の姿が映った。

 肩付近まで伸びた、夏の澄んだ海原のようなコバルトブルーの髪に、黄色い星型のピンを2つ。鞄には野球のストラップを付けて。


「よし、寝癖もないし、制服に皺もない!」


 廊下と玄関の電気を消して小走りで外に出る。

 その勢いのせいか、頭の上の毛がぴょこんと跳ねた。

 日影だとまだ少し肌寒いけれど、日なたに出れば暖かい。息を大きく吸い込むと、形容しがたい春の香りが胸いっぱいに感じられる。


「うーん、新しい季節、って感じだー!」


 学校に近づくにつれて、同じ制服を着た女子高生が増えてくる。

 新調されたであろう綺麗な制服や、緊張している顔色を窺えば、なんとなくだが新入生かどうかは判別がついた。


 その新入生の中に友希と同様、野球のストラップを鞄に付けた新入生を見つける。

 

「綺麗な人……」


 だが目線は鋭く、話しかけ難そうな雰囲気を出している。

 しかし、野球好きな同級生がいることを知って友希も少し嬉しくなった。


 校門には桜が咲いていて、何人かの親子が銘板の前で写真を取っている。


相模南(さがみみなみ)女子高等学校』


 これから友希が3年間通うであろう、高校の名前。

 校門を跨いで、少し入ったところで校舎を見上げる。


 入試の時や合格発表の時にも来たけれど、いざ入学してもう一度見ると、なんだか違った形に見える。


「……あれ、もしかして友希ちゃん?」


 そんな折に、友希は後ろから声をかけられた。

 家から近い高校という事もあって、同じ中学の友達も同級生に結構いる。

 だが、その声には聞き覚えがない。


 振り返って見ると、そこには空のような淡い水色の髪をショートに切りそろえた、中性的な顔立ちの新入生がこちらに手を振っていた。

 一瞬、ドキッとしてしまう。


 しかし、記憶を辿ってもその顔が誰だったか思い出せない。

 友希が必死に悩んでいる顔を見て、その女の子は恥ずかしそうに頬をかきながら自己紹介する。


「憶えてないかな。僕、小鳥遊(たかなし)みずきだよ。小学校の頃、よく遊んだんだけど……」


 ……小鳥遊、小鳥遊。

 友希は脳内で必死にその名前を検索し始めた。そして、ようやく答えに辿り着く。


「もしかして、小学校の頃によく公園でキャッチボールした、みずき?」


 いつ頃出会ったかは憶えてない。

 小学校は違ったけれど、親同士が知り合いで、家が近所なこともあってよく遊んだ友達だ。

 しかし小鳥遊が小学校の途中で引っ越してしまい疎遠になっていた。

 ……だけど。


「みずきって確か、男の子だったような……」


 目の前の子も、制服じゃなければ男の子といっても通りそうではあるが。


「あはは。よく、勘違いされるんだ。でも憶えていてくれたんだね、ありがとう」


 そういって小鳥遊は小さく笑う。

 その顔がとても眩しくて、友希は目線を逸らしそうになった。

 ここって女子高だし、バレンタインデーとか凄いことになるんじゃないかな、と友希は一緒に笑いながら思った。


「そう言えば、友希ちゃんのクラスは?」

「私は1‐Aだよ。みずきは?」

「本当? 僕も1‐Aだよ。僕、人見知りだから、友希ちゃんがいてくれてとても嬉しい」


 そう言って小鳥遊はまた微笑む。

 今度は、目線を逸らしてしまった。


 案内に従って小鳥遊と共に教室へ入ると、先ほど見た野球のストラップの女の子も同じクラスだった。しかも、友希の前の席に座っている。

 教室にいるみんなは緊張で硬い表情をしているが、前の席の女の子は緊張ではなく、氷のような目をしている。

 その鋭い目つきに、友希は少しだけ萎縮してしまった。


「嬉しいような、そうでもないような……」


 チャイムが鳴って、入ってきた担任の先生が挨拶をする。


「私がこのクラスの担任の鈴木ですよー。教室に鍵は掛けますけどー、一応貴重品は持って入学式を行う体育館へ向かってくださいねー」


 担任の鈴木先生は小柄で、スーツに着せられているような人だった。

 茶色い髪をサイドに束ね、ふわふわした表情に、おっとりとした口調で話す。

 そのおかげもあってか、クラスの緊張感はいささか和らいだ。

 それでも、友希の前の席の女の子は眉を顰めたまま。


「出席番号だとみずきは少し離れてるし……。私も人見知りなのかなあ」


 出席番号順に列を作って体育館へ向かう途中、何人かは友達同士になっていた。

 友希も後ろの女の子と自己紹介をしあったが、前の女の子とは一言も会話が出来ないまま、体育館へ着いてしまう。


 体育館へ着くと、後方に用意された親御さん用の席はびっしりと埋まっていた。

 新入生も同様に、並べられたパイプ椅子に座る。


 開会の言葉から校長先生の話へ移っていったが、友希は前日の期待と緊張で眠れなかったツケが、ここで来てしまった。

 夢の中でも、野球をしている。どこか分からないけれど、楽しい野球。


「……起きなさい」


 その最中、耳元で小さく囁かれた。

 声量が大きいわけではなかったが、なぜか跳ね上がった鼓動と共に友希は勢いよく頭を上げる。

 ようやく事態を把握して、後ろから漏れてくる小さな笑い声に友希は顔を赤くした。


「あ、あの、ありがとう」

「……別に」


 起こしてくれたのは、今は隣に座っている、野球のストラップの女の子だった。

 不機嫌なのか、それともそれがスタンダードなのか、お礼は言ったが目つきは依然変わらぬまま。

 どうやら校歌斉唱らしく、直後にみんなが立ち上がった。


 つつがなく式は進行し、生徒会からの言葉が新入生に向けて送られる。

 こういう言葉というのは先生が作るものだと思っていたが、どうやら違うらしい。

 間違っているわけではないけれど、てきとーな文章が読み上げられていく。そして。


「あーそれから、今年から野球部を設立するからぁ、みんなふるって入部してねぇ。入ってくれたら、そうだなぁ、生徒会長の特権で出来ることは全部叶えてあげる。ま、あたしが生徒会長になる来年以降の話だけどねぇ」


 本気なのか冗談なのか、本人はケラケラ笑っている。

 新入生は困惑しているが、教師も笑っているところを見るとよくあることなのだろう。

 笑いどころとしては、来年の生徒会長が自分だと確信しているところだろうか。


 しかし、友希にとって野球部ができるというのは意外なニュースだった。

 高校では部活ではなく、外部のチームで野球をしようと考えていた友希は、少し悩む。


 みずきもいるし、いま隣の女の子も野球が好きだとしたら、部員はそれなりに集まるかもしれない、と思いを巡らせる。

 入学式が終わって教室に戻り、休憩時間に小鳥遊の所へ向かった。


「ああ、野球部の話? 友希ちゃんが入るなら僕も入るよ。中学でも続けていたし、また友希ちゃんと一緒にやりたいな、野球」


 小鳥遊は爽やかに笑う。

 それにつられて、友希も口角が上がっていった。


「そうだよね、そうだよね! とりあえず明日、部活紹介があるみたいだから、放課後行ってみようよ!」


 友希は興奮して、小鳥遊の机に手を着きながらピョンピョンと跳ねる。


 その姿を、野球のストラップの女の子が、ひっそりと見ていた。

 


挿絵(By みてみん)


人物紹介①

三咲 友希 (みさき ゆき)

相模南女子高等学校 1年A組

??番サード 右投げ右打ち

162㎝ 53Kg 髪色:青

出身:神奈川

好きな球団:スターオーシャンズ

好きなこと:野球


人物紹介②

小鳥遊 みずき (たかなし みずき)

相模南女子高等学校 1年A組

??番ショート 右投げ左打ち

159㎝ 48Kg 髪色:水色

出身:神奈川、愛知

好きな球団:ダイナソーズ

好きなこと:読書


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