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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第八章 秋季大会準決勝! vs翔和女子高校 
129/150

128話 緊張をほどくのは先輩の役目だから

 焼肉の網を挟み、友希と左門が視線を合わせる。


「アイス4つはうちのもんや。友希はんが食べたい言うんなら、もちろん、譲る所存やけどなあ」

「う……」


 口はアイスを欲している。

 しかし、胃の方は全く別だ。

 これ以上入ってくるなと通行規制が入っている。


 だけど、負けてなるものか。


「友希……いきなさい」


 先ほどギブアップした真中が、かろうじて唇を動かす。


「友希ちゃんなら、いけるよ」


 俯せていた小鳥遊が少しだけ面を上げて、友希の目を見据える。


「2人とも……!」


 呼応して、友希は目を見開いた。

 そして、まるでタイミングを計ったかのように店員がアイスを運んでくる。


「はい、デザートのアイスだよ……。っと、きつそうな子がいるね」


 左門はほくそ笑み、しかし物腰柔らかに店員へ告げる。


「店員さん。この子たちはもう無理や。うちが4つ全て……」

「いえ」


 友希が、左門の発言に割り込む。


「内2つは、私の方へ」

「馬鹿な……!?」


 そのアイスは、とても美味しかった。

 口の中の油を全て洗い流すかのように、爽快感が通り抜けていく。


「私の生涯に、一片の悔い無し!」


 高々と右手を突き上げた友希に、野球部の面々どころか、周りの他の客からも拍手が起こった。


「……ふ。うちの想定が甘かったっちゅうことか」

「いい勝負でした」

 

 友希と左門ががっちりと握手を交わす。

 焼肉奉行の座はどちらも譲らなかったが、確かにそこには熱い友情が―――。




「……って、今日の敦子先輩、何か変じゃなかった?」

「確かにね。変な雰囲気に当てられて、つい自分も乗っかってしまったわ」

「でも僕は、敦子先輩の意外な一面が見れて楽しかったな」


 焼肉の後、1年生の5人でゆったりとした歩みで帰路へ着く。


「こっちのテーブルも似たようなものなのだ! 何故か優美さんVSニノさん&我の構図になっていたぞ。……2対1なのに負けたのだ」


 投山がずーんと落ち込んだ表情で項垂れると、熊捕も似たような顔で腹を擦りながら愚痴をこぼす。


「わしのテーブルは、他のテーブルよりも多く食べると言って馬鹿みたいに食わされた。もう腹が限界じゃ」


 皆も同じような反応を示すので、5人は顔を見つめあう。


「ま、楽しかったからいいけどね! こうなったら決勝も絶対勝って、監督オススメNo.1の焼き肉屋に連れてってもらおう!」

「焼肉は当分いらんがな。それに、オススメといってもどうせ酒の旨いとこじゃ。さっきテーブルで言っておった」

「お酒かあ」


 友希が感慨深そうに呟くと、周りはギョッとした顔で友希を見る。


「友希ちゃん? 優勝してもお酒は駄目だよ?」

「分かってるよ、みずき! ……将来の話。20歳過ぎて、同じメンバーで同窓会して、お酒飲めたら、美味しいのかなって」


 皆が、監督のお酒を飲む姿を想像する。

 あれほど美味しそうにお酒を飲む人を、他に知らないから。


「そうね。飲んだことはないけれど、美味しいのかもしれないわね」

「きっと美味しい。僕も、そう思うよ」


 真中と小鳥遊が同意する。

 だがそれは、次の決勝で勝てばの話だ。

 負ければ、今の高校は廃校になって、もし同窓会を開催しても苦い酒にしかならない。


「我は知っているのだ! 『魔王』というとてもおいしいお酒があると、ニノさんのお父さんが教えてくれたのだ!」

「桜は焼酎ではのうて、甘いカクテルがお似合いじゃ」

「そんなことないのだ! 我は渋く焼酎を飲むのだ!」


 5人は笑いながら、遠くに思える、しかしすぐにやってくる成人となる4年後に思いを馳せながら家へと歩みを進めていく。



 一方そのころ。


「今日のアツコは面白かったネ! あんなにボケるアツコは初めてかもしれないデス!」

「いつもはアイリちゃんがボケるからな。アイリちゃんを見てると、うちも自ら笑いをとってみたいと思うんや」

「フーン。本当にそれだけデスカ?」

「……どういうことや?」


 左門が訝し気に首をかしげる。


「別にいいネ! ミーだけが知っていれば、それでいいネ!」

「……。変なアイリちゃんやなぁ」


 準決勝に勝利し、決勝は明後日。

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