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デミウルゴスの残花  作者: 煌月 かなで
序章 【三度目の始まり】
1/2

プロローグ 【始まりの音】

前作が設定の齟齬によりエタったので

無事だった設定を踏襲しての作品になります。

ほぼ処女作です。

描写力、語彙力に乏しいとは思いますが少しでも見ていただけると嬉しいです

肌を裂くような吹雪が身を焦がした。


シンシンと雪の降る音が聞こえる様な静寂の中、深雪を踏み抜く柔らかな音だけが響く。

烟る視界に街の街頭が淡く浮かび上がり、その幽遠な景色は死後の世界のようにも感じられた。

呼吸をする度に凍てつくような空気が肺に突き刺さり、その痛みがここが現実であることを証明する。

ここは一体どこなのだろうかそんな疑問は最早浮かんですらこなかった。

薄れ行く意識と反比例するようにその身体は生存本能に従い歩みを続ける。

全身の感覚が遠ざかっていくのを感じ、遂には力なく雪の絨毯に包み込まれた。

ふと体に意識を向けると凍傷であかぎれた手が焼けるように痛んだ。


──死にたくない


そんなことは当たり前だ。

そう、誰しもが言うだろう。

しかし彼は今その言葉を真の意味で理解していた。

身体中を苦しめている痛みすら遠くなっていくのを感じる。


──このまま虫けらのようにただ意味もなく死んでいくのか。


全身の感覚が完全に終わりを告げた。

自分自身が生きていると証明するものが全て消え去り、僅かに残された意識を虚無感が支配する。

風船のように中身を感じられない体に死を実感した。


一つ影が舞い降りたのはその瞬間。


白一色の世界に浮かんだその鮮やかな色彩。

その存在に思わず目を奪われる。

それが一人の少女だと気づくよりも早くその影は口を開いた。


「私……名前はア…………貴……」


揺らぐ思考の中、その言葉が断片的に聞こえてくる。

残る力でその内容を理解しようとした時、その少女は言葉を止め、こちらに優しく手を差し出す。

少女の差し伸べたその柔らかな手の温もりを感じた瞬間、意識は微睡み、闇に飲まれた。


人生の終わりかけに訪れたこの出会いが彼の物語の新たな始まりとなった。

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