『バレンタイン』なんていらない
なまこさんこと、Gyo¥0-様に捧ぐ
条件:「ば」「ぱ」「は」「れ」「ん」「た」「だ」「い」を使用してはならない
ちょっと、待って。通り名でなく、普通の名前を教えてですって? きみって、お子様で困っちゃうわ。正直、びっくりするほどの図太さ、面の皮の厚さね。
知ってる? 悩み多きジュリエットがロミオに向かって、こう告げるのを。「名前って何? 薔薇を他のどのような名前で呼ぼうとも、同じように甘く香るわ」ってね。名前ごときに固執してどうなるの。
ね、おわかりかしら? なら、目の前の幸せを味わって。飲み干して。この店のお勧めですもの、お安くなくってよ。
もう、この分からず屋! この前と同じように、きみの好きな彼女の名前を呼びながら腰を振ってりゃすぐに終わりでしょ。踏み込み過ぎる男って、正直億劫なのよ。
ねえ、きみの前で微笑むこの柔らかな肉の持ち主ってね、その名を轟せる大嘘つきなの。きみの名前も覚えず、年の誤魔化しさえも目を瞑る。病気持ちでなくって、気前がよくて。重要なのって結局そこなの、がっかりかしら。きみもさっさと夢から覚めることね。若さゆえの出来心、よくあることよ。
なあに、この贈り物。今日が特別な日って理由で、お菓子と指輪ねえ。無益な空騒ぎ、飽きずによくやるわね。ふふ、笑っちゃうわ。
女性が菓子と宝石を好まぬわけがなかろうですって? なにそのくさすぎる台詞。ええそうね、鍍金の指輪も、甘過ぎるお菓子も、薄っぺらなきみの睦言によく似てる。何もかも甘過ぎて、脳みそがおかしくなりそうよ。
やあね、なに拗ねてるの。もう許して。ちょっとね、酔っちゃってるから、お手上げなのよ。
ねえ、実のところ、あの娘一筋で身を焦がすきみが結構好きなの。もしかして、この世の中にも、変わらぬ心があるのかもってそう思えるから。でもね、きみがあっさり心変わりをしてしまうのなら、もう終わりね。
さあ坊や、そろそろでちゅよ。このまま『おしゃべり』を続けまちゅか? おっきしてるなら、『おしゃぶり』に変えまちょうか?
あら、お帰りかしら。じゃあ、キスの代わりに。さあ、お口をあけて。うっとりするほどの甘さよ。紙のカードよりも素敵でしょ。ふふ、ありがとう。え? きみのこと、好きよ。もとよりそうに決まってるでしょ。 どうぞ、神のご加護がありますように。風邪に気をつけて。次のお越しを待ってるから、ね。
What's in a name? that which we call a rose.By any other name would smell as sweet.
シェイクスピア『ロミオとジュリエット』、ジュリエットの台詞より。




