↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リポグラム短編集〜『あい』を失った女〜  作者: 石河 翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/74

『はひふへほ』にさよならを

条件:「は」「ひ」「ふ」「へ」「ほ」「ぱ」「ぴ」「ぷ」「ぺ」「ぽ」「ば」「び」「ぶ」「べ」「ぼ」を使用してはならない

 突然(とつぜん)の別(わか)れだった。

 わたし、彼(かれ)のこと、もうそんなに好(す)きじゃないの。だって子(こ)どもみたいでしょ。ちらりと横目(よこめ)で店(みせ)の真(ま)ん中(なか)にいる彼(かれ)を見(み)ると、彼女(かのじょ)が冷淡(れいたん)にもそう言(い)ってのける。あんなに夢中(むちゅう)になっていたのが嘘(うそ)のよう。


 その男(おとこ)との付(つ)き合(あ)いの長(なが)さを考えると、余(あま)りにも酷(むご)いように思(おも)えた。なにごとにも全力(ぜんりょく)で取(と)り組(く)む真面目(まじめ)さと、何度(なんど)負(ま)けても立(た)ち上(あ)がる闘争心(とうそうしん)が、わたしから見(み)てもとても魅力的(みりょくてき)だったから。

 英雄(えいゆう)と称(たた)えられることもなく、だからこそ全身全霊(ぜんしんぜんれい)で愛(あい)していたようにも思(おも)う。彼女(かのじょ)こそが彼(かれ)の最大(さいだい)の理解者(りかいしゃ)であった。こんな蜜月(みつげつ)が永遠(えいえん)に続(つづ)くものと思(おも)っていたのに。残酷(ざんこく)な別(わか)れ文句(もんく)が宙(ちゅう)に漂(ただよ)う。


 わたしもまた彼(かれ)を見(み)る。今日(きょう)もまた、頭(あたま)に餡(あん)がつまった水(みず)や汚(よご)れに弱(よわ)い英雄(えいゆう)に、負(ま)けることになる憐(あわ)れな男(おとこ)のことを。登場(とうじょう)する時(とき)の謎(なぞ)の掛(か)け声(ごえ)もこれで聞(き)き納(おさ)めなのだろう。画面(がめん)越(ご)しに彼(かれ)と会(あ)うのもいつ以来(いらい)だろうか。常(つね)に隣(となり)にいる親(おや)だからこそ気(き)がつかないのかも知(し)れない。我(わ)が子(こ)がもうすっかりお姉(ねえ)さんになっていたなんて。


 でも知(し)ってるかい。 君(きみ)が新(あたら)しく好(す)きになったそのアニメのキャラクター、例(れい)の彼(かれ)と中(なか)の方(かた)って同(おな)じなんだよ。いつかこの事実(じじつ)に気(き)がつくだろうか。娘(むすめ)が驚(おどろ)く姿(すがた)を想像(そうぞう)して、くつくつと喉(のど)を鳴(な)らしてみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。