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夢東一家  作者: ウタゲゴ
異世界行かない第一章
4/27

4.実は石油王の嫁でしたか?

登録必須キーワードが異世界転移なのに、異世界転移の「異」の字が見え隠れするような状態ですが、しばらく異世界転移させる気はないのでもう少々お待ちください。

夜中、薺はトイレに起きた。その、部屋までの帰り、トルシスとすれ違った。


「ぁ、どうも、薺さん」

「あぁ、うん」


このときの薺は相当寝ぼけた状態だったので、このときは深く考えなかった。



***




朝、薺が赤門の名前を呼びながら体を優しくたたくようにして起こすのはいつもの起こし方なのだが、今回のは早く起きてほしいような、こちらを急かすような口調とセリフだった。


「赤門!赤門!早く起きて!大変だよ!!」

「俺がここに寝てるってことはやっぱり、トルシスは...」

「うん、いるよ。でも、それどころじゃないの!」

「おはよう」

「ぁ、うん、おはよう...って、そうじゃなくて!そうじゃないって言うのもなんか違うけど、そうじゃなくて!」

「どうしたってのさ?」

「まず、とりあえず、来て!」

「ほいほい」


ここまで急かすとは何事かと思いながら、赤門は薺について行くことにした。そして、リビングまで来て赤門は、眠気という眠気から解放された。何故なら、リビングの机には札束が縦に積んであったからだ。


「はぁー、ちょっと寝てくる」


赤門はため息をつき、現実逃避をしようとした。


「まてーい」


赤門は薺に腕をつかまれひきよせられていた。もうこうなっては赤門は動きたくなくなるので、最早この現実にたち向かうしかなくなってしまった。

机にある札束の1番上の束の1番上の紙幣が1万円であり、かつ綺麗にどの紙幣1枚はみ出ることも、ズレることも、ひっこんでいることもないことからして、全て1万円札なのだろうと予想する赤門。そして、束の数は10束、ここで考えうる最も確率が高い額は1000万円だ。


「やぁ、トルシスおはよう。朝からする質問じゃないけど、1ついいかな?」

「はい、おはようございます。なんでしょう?」

「君はいつから石油王の嫁だったんだい?」

「私はまだお付き合いしたことがある方もいません。それは私がこのお金を用意したという仮定のもとの質問ですか?」

「君ともう1人しかこんなことをする人が思いつかなくてね」

「私にはここまではできませんよ」

「『ここまでは』ってあたりが引っかかるけど、朝から疲れたくないから何も聞かないことにするから今は何も言わないでおいて」

「は、はい」


トルシスの返事は少し苦笑混じりだった。


誰だってそうだろう。朝から頭を使うような、理解が追いつかないないような話をしたいとは思わないはずだ!

と赤門は思っていた。


「送り主に返してしまうということはできるのか?」

「無理でしょう。その反応を知った上で、これをお二人に贈られてきたのでしょうから」

「昨日は正直面倒だったから聞かなかったけど、結局観測主代理ってのは何者なの?あと、観測主ってのは何なの?」

「申し訳ないのですが、それらの質問に正確な答えをもっていません。

まず1つ目の質問のほうですが、観測主代理は私の予想通りの方なら、という前提でいままでは『観測主代理』という方への疑問にお答えしてきました。その前提でも問題ないほど他の方の可能性がないからです。

ですが、その決定的証拠となりうる物が存在しないために正確にはお答えできません。その決定的証拠となりうる物が存在しないこと自体が証拠とも言えますが...」

「なるほど、なるほど、面倒な。で、じゃー、その予想している方と言うのはどんな方?」

「はい、それは...私がもともといた場所では全知全能と噂されている方です」

「うーん、聞きたくなかった。聞いた身で言うのは申し訳ないが、聞きたくなかった。つまり、俺達は全知全能かもしれない方に目を付けられたと...?」

「うわ...」


心底嫌そうに、赤門に同調する薺と、これまた苦笑いを混ぜた返事をするトルシス。

そして、同時に先程トルシスの言った「証拠となりうる物がないことこそが証拠と言えなくはない」ということを理解する二人だった。


「捉え方はともかく、そういうことにとっていただいても間違いはないかと」

「じゃー、観測主ってのは?」

「そちらの方は全く何も一切分からないのです」

「まぁ、そりゃそうなるよな...全知全能に代理役をさせるなんて、まぁ、まず想像もつかないもんな...」

「はい、そうなのです」

「それなら、この札束はいつからあるかは分かる?」

「それなら、3時以降にここに贈られた物と思います」

「根拠は?」

「トイレに起きた際に、薺さんとすれ違ったのですが、そのときの時間が3時すぎでしたので」

「ぁ!たしかにすれ違った気がする」


と、思い出したように言う薺だったのだが...


「今考えてみると、よく私だったこととか、時間とか分かったよね?」


と聞かずにはいられなかった。


「ええ、夜目はきく方なので」

「えーと、もしかして、まさか、私が寝る直前にしてた表情っていうのは...」

「ええ、まぁ、みえてました。お二人とも本当に仲がよろしいようで羨ましい限りです」


顔を赤くしながら言いづらそうに聞く薺と、これまたさらに苦笑いをしながら返すトルシスだった。

それと同時に薺に腕を解放された赤門は、それはそれは名残惜しそうにしていた。


「夜目がきく理由ってのは?」


と、どうにかこうにか、きりかえて赤門は聞くが答えは予想していた通りだった。


「制限で答えられないです」

「そうだよな...じゃー、トルシスがもともといたって言うところは?」

「それは─」

「けど、やっぱりいいっ!」


トルシスの言いかけた続きを遮り言う赤門。

これまでの短時間で少しの謎が解け、新たな謎が多くできたこの現状を考えて、赤門はトルシスのもといた場所というところに希望と期待をよせるのだった。


「悪いね、俺が聞いといて。朝からありがとう、ご苦労様でした」

「いえ、苦労なんて、そんなことは!こちらもお力になれず...」

「トルシスは優しいんだね」


薺はトルシスを気遣うように言う。


「そうで、しょうか...?」

「うんうん、少なくとも私も赤門もそう思ってるよ」

「そう、ですか、ありがとうございます!」


トルシスは嬉しそうに言うのだった。

今回は、読者の皆様には謎の塊のような存在であってほしい観測主代理について掘り下げてみました。おそらく次回は楽しい楽しいお買い物回だと思います。8/29日

※1/7本文修正しました

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