19.ええ、もちろん、恋人つなぎですよ!!
前回の投稿まで2週間近くあいたので、その分としての今回です。
赤門と薺、クロがそれぞれの部屋に戻った後のことだ。
「赤門、無理してる?」
「無理はしてない。できることしかやってない」
「それにしては、さっきのは辛そうだったけど?」
「たしかに辛くはあったな。えげつない痛みが一瞬はしったから。あれはほんと痛かった」
「やっぱり。赤門が選んだことだし別に何か言うつもりもないけど、私だって心配になるんだよ?」
「まぁ、ごめん。心配かけた」
「はぁ...」
薺は大きなため息をついた。
この赤門たちの会話は、さっき赤門が星座に誓いをたてたときのことをいっている。
星座に誓いをたてたのだから、臓器が幾つか潰れてもおかしくはない。それは赤門も例外ではない。
だが、獅子座の力は、そうあまいものではない。
今回のことでも、赤門の臓器は幾つか潰れるはずだったが、レオの力がそれを邪魔したことにより、一瞬とてつもない痛みを伴うだけで済んでいたのだ。
「せめて今日はちゃんと寝なよ?」
「いやー、どーかなー?」
そう言って赤門は目をそらす。
「わかった。それなら赤門が寝るまで、私も寝ない」
「仕方ない。今回は俺の負け」
それから赤門は右から、薺は左からベッドにはいった。
赤門にとって、無理やり寝る程度のことは「扉」をあけるなどしなくても、造作もないことだ。
だから今は、寝る。薺が寝るまで、それまでは寝ておく。
「おやすみ、赤門」
「おやすみ、薺」
赤門が、部屋にあるマジックアイテムとでも言うべきなのだろう、明かりを灯している立方体の箱の明かりを教わったやり方でけす。
赤門の右手に温かく、柔らかいものが触れる。
よく知った温かさの、よく知った感触の、よく知った優しさの薺の手。
毛布のしたで二人は手を繋いだ。
早朝のことだ。赤門は、城のある部屋の扉が開く音とともに目を覚ました。正確には目を開けたに近い。
ベッドの周囲の警戒を一切怠らず、何か僅かでも変化が起こったならば起きられるような、そんな浅い眠りをとっていた。
たしかに、最初の1~2時間ほどは寝ていた。警戒を怠ることもせずに。
そして、警戒していたというよりも、動くのを待っていたとある部屋の扉が動いたので、赤門は起きた。
赤門は名残り惜しくも、薺と手を離しその部屋に向かった。
「おはよう、トルシス」
「おはようございます、赤門さん」
クロは特に驚いた様子もなく挨拶をする。やはり足音などは聞こえていたらしい。
クロは肩から紐を提げ、背中に昨夜赤門が渡した木の棒が入っているだろう袋を垂らしている。
二人は城の出口まで歩幅を合わせて歩いていった。
「ほんとに早朝だな。夜って言ってもいい時間だし」
「やることいっぱいあるんですよ」
「そっか、大変だな。頑張れよ!!」
「はい、ありがとうございます。
赤門さん、帰ってきたらあの未来予知みたいなこと、教えてくださいよね?」
「ああ、あれか。あれなら今でも、そんな難しいものでもないし」
「いえ、楽しみに待ってます」
「それなら、最強種のこと、帰ったら教えてくれよ」
「わかりました」
「あと、さ...一つ、用意、してもらいたい、ものが、あってさ───」
城の出口まで歩いても、時間がかかるほどのものではない。
「それじゃ、いってきますね。薺さんには、お土産楽しみにしててくださいって伝えてください」
「おう、わかった。いってらっしゃい、気をつけてな」
クロは赤門にお辞儀をして、城をあとにした。
それから赤門は部屋に戻り、ベッドにはいった。しっかり薺と手をつなぎなおす。そして、また浅い眠りにはいる。
赤門は他の者、薺と犬人以外がいるところではクロをトルシスと呼ぶ。それは薺も同じだ。薺は周りにいる者を探知できるわけではないが、赤門がクロと呼ばないときは薺もクロと呼ばない。
別に頼まれたわけではないが、赤門としては問題を極力起こさず、静かに生きていたいのだ。クロとしての記憶を、トルシスが思い出したのは最近のことであり、ならばトルシスの名で呼ぶのが自然なことなので、その選択が最も問題を起こさないと赤門は考えたからだ。
赤門の体感的に、時刻は午前3時をすぎたあたりなのだが、この城の従者さんたちはしっかり赤門とクロを監視していた。
あちこち歩きまわるより、大人しく寝ていた方が問題にもならずにいいと考えた結果に赤門は部屋に戻った。
再び赤門が目を開けたときは、薺に起こされた。
「おはよう、赤門」
「おはよう、薺」
「クロはもういっちゃった?」
「ああ、お土産楽しみにしててってさ」
「そっか、わかった。やっぱり起きてお見送りしたんだね。起こしてくれてよかったのに」
「可愛い可愛い嫁が、可愛い可愛い寝顔してるのに、起こすなんて無粋な真似できるわけないだろ!!」
「はいはい、ありがとう、ありがとう」
そう言って薺は赤門の手を取り、軽く上下させ握手をする。
それからの赤門と薺の流れは、朝食をユキたち親子とともに頂き、昼は街に出てくると伝えると「いつかわたすつもりだった」とお金をどさっとわたされた。お金、つまり金貨を1キロほどわたされたのだが、これはまだ一部らしい。
その金貨は一方の面には狐が描かれ、もう一方には雪の結晶が描かれていてデザインとしても、もらって嬉しいものだった。
「ささ、遠慮しないでくれ」
「ありがとう、ございます。ほんと、申し訳ないですけど、一文無しなのは事実ですので、遠慮なく...」
赤門も薺も、ユキの父親には悪いが、クロがいなければお金が全くないのと同じなので断ることができなかった。
物価については全くわからない二人なだけに、ある程度の物価の話をナカジマに聞いて、これで充分だろうという分の額を持って二人は街にでた。
服装は特に目立つことのないように、仕立ててもらった。
薺は黒のカットソーに杏子色のフレアスカートで、地味であっても、確実に可愛く似合っていた。
もちろん今回も赤門は、薺を大いに絶賛した。
この街の説明をするならば、名は「フォリ」この街の外周の半分以上はあの大きな壁に面している。あの壁は外側、つまり森などから危険な生き物が入ってこないようにするためのものだ。この壁はこのフォリの街だけでなく、多くの街を囲っている。
そして、そんな外側に位置するからこその恩恵もある。
壁の外へ、冒険や狩りをしにいった者や、この壁の外側からやって来た者がもたらす品を1番先に手に入れることができるということだ。その恩恵があるおかげで、外側に位置していても発達した街になっている。
この街が発達している理由は様々あるが、その理由をあげるときに外すことのできない理由の一つがこれだ。
赤門たちは街で食べ物を買って食べたり、観光したりとフォリの街を堪能した。
そして、とある店で見つけた。そのブローチは薺の目を惹き付けて離さない。そんな薺を見て赤門は言った。
「いいじゃん、薺に似合うよ。買おうか?」
「いや、でも、これから必要そうなものを買ってる途中なのに、買うのは、気がひけるというか...」
「別にいいよ。買おうか」
「うん、ありがとう...」
あまり納得していない、というか、煮え切らない様子の薺だった。
赤門としても内心驚いていた。たしかに可愛いブローチで、薺によく似合うと思った。だが、そのデザインを選んだことに対して驚いた。
そのブローチは、白百合のような、それこそ薺の花のような白い宝石のブローチだ。その宝石は別の赤い宝石の枠に嵌っている状態で、それがさらに金色の枠に嵌められてブローチになっている。その金色の枠はまさに額縁のようだった。
『一輪の白い花と、その周りに咲く赤い花』
『花びらの色が外側は赤く、内側は白い花』
などのものを、このブローチと同じような花の絵をイメージするならば思いうかべるのかもしれない。
だが、赤門はこれしか思いうかばなかった。
『一輪の白い花と、その影で咲く赤い花』
そのブローチを買い、二人はその店をでた。
店の外で薺は左胸にそのブローチをつけた。黒のカットソーに白い色はよく映えていて、とても似合っていた。
***
クロの仕事は以前から決まっていたものだ。トルシスが南の世界に帰ってきたときにする予定だったものだ。
クロはこの機会をタイミングのいい機会だと思った。
赤門と薺、二人と物理的に距離を置くことで、客観的視点で二人をみることができるのではないかと考えていた。
謎の多さで言うならば、赤門の方が多いが、謎の明解さならば赤門の方が上だ。
赤門は謎が多い分、その謎の鍵となるものが多いが、薺は謎こそ多くないが、ほぼ全く鍵がない。
だが、赤門においてもわからないことはある。
「東の世界」その名を誰も口にしていなかったはずなのに、赤門は知っていた。
19.ええ、もちろん、恋人つなぎですよ!!
最後まで読んで頂けたようで、ありがとうございます!どのシーンが恋人つなぎなのかはわかりますよね?わからないならもう1回読んでみては?(読んで欲しいだけです。)
今回の最後は、「13.」のときのことです。
ポイント評価、感想等よろしくお願いします!!




