合法的な竹島奪還㊙実録
戦闘シーンと後半かなり雑です。ごめんなさい。
2018年5月8日に行われた島根県知事選の結果が極東アジアに震撼をもたらしたのは間違いない。その原因は、当選した無所属、自由保守党推薦の元航空自衛隊航空総隊司令の新人畑源浩二にある。この畑源は島根生まれ島根育ちの生粋の島根県人なのだ。
そんな彼の公約は、島根県内の経済活性化と若者の誘致、新たな観光需要の創出であり、言ってしまえば代わり映えのしない公約であったが、新たな観光需要の創出というなかで、竹島の観光資源の有効活用という項目が入っていた。この項目に関して県知事選の公約が発表された直後に出雲市に本社を置く島根日報の記者が質問したところ、畑源陣営から「竹島を県立公園に指定し、観光用の展望台などを設置する」との回答が得られた。つまり、畑源は知事に当選した暁には竹島を取り返すと暗に示したのである。この報道に島根は大きく湧いたのであった。ここ数年、島根の経済は他県と同様に大きく停滞しており、観光客数も往時と比べると減少の一途をたどり、過疎化も進み県民は絶望に置かれていたと言っても過言ではなかった。そういう状況であったので、多くの県民は竹島を観光資源化するという公約の畑源に賭けたのであった。
これに慌てたのが韓国政府は、独島は我が国の確固たる領土であり、日本政府に強く自制を求めるという声明を発表した。
昔から日本政府と争ってはいたが、地元の自治体がここまではっきりと竹島奪還に動くと宣言したのは初めてなのだから。それとは対称的に日本政府は地元自治体が大きく声を上げたことにより、「地元の意向」という大義名分のもと、いままでよりももっと堂々と竹島奪還に向けた様々な動きを加速させることができるのだから。
そして、さっそく県知事に就任した畑源は竹島対策室を知事直轄の竹島観光推進本部に格上げし、奪還のための合法的なマスタープランと奪還後の観光資源化のマスタープランの策定を開始した。
竹島観光推進本部から県知事に「竹島の観光資源化とその準備に関するマスタープラン 第一案」が上げられたのが畑源が知事に就任してから一ヶ月後のことであった。このマスタープラン策定は、島根県中から多種多様な人物を集めて行われた。例えば島根県警本部長や入国管理局の元入国管理官、弁護士、元裁判官などである。もちろん畑源も「元航空総隊司令」という肩書でマスタープラン策定に関わっている。
このマスタープランを要約すると、まず島根県警が松江地裁に対し竹島の武装警察に対し銃砲刀剣類所持等取締法違反や刑法130条の住居侵入罪などの疑いで島根地裁に家宅捜索令状を請求。令状が取れた場合はそれに基づき家宅捜索を実施。取れなかった場合は銃砲住居侵入罪で島根県が県警に通報。この通報により県警が竹島を捜索。ここまでの手順は全く違法性のないものであるということは、マスタープラン策定に関わった元裁判官や弁護士に確認されているここまでの段階のどこかで韓国側が実力を以って反撃してくる可能性が非常に高いので、その際は島根県知事と島根県警本部長、島根県公安委員会の連名で治安出動を要請することになる。さらに、広島入国管理局松江出張所が出入国管理及び難民認定法(入管法)にもとづき島根県京の協力の下で強制捜査。ここで、韓国の武装警察などをまとめて強制収容し、竹島の韓国勢力を一掃。ここで観光資源化の準備が終了となっている。このマスタープランはもちろん部外秘となっている。各国から日本に派遣されているスパイはこの部外秘のマスタープランの内容をどうにかして確保しようとしたが、島根県は各国からノーマークでありかつ、外国人が非常に少ないという事情からエージェントを送り込めずにいた。さらに、何かしらの計画が動いているとの情報が各国のスパイの間で流れたが、就任から二ヶ月たっても大きな動きがないので各国のスパイたちは拍子抜けしていた。
そして、畑源知事はこのマスタープランを即日承認。各所に根回しを開始した。このマスタープランにおいて障害になるのが第一段階で警察官をどう竹島に送るかである。島根県警航空隊に所属する「ちどり」だけでは到底輸送力が足りない。さらに、韓国側からの激しい抵抗が予想されるものの、島根県警機動隊のみでは心もとない。この両方の問題を解決するため、島根県公安委員会経由で大阪府警と福岡県警に応援要請がなされた。この要請を受けて大阪府警からはSAT1個中隊と航空隊の「まいしま」、福岡県警からも同様にSAT1個中隊と航空隊の「とびうめ2号」が派遣されることになった。島根県警の作戦参加戦力は県警航空隊の「ちどり」と、この作戦のために刑事部内に新設されたと言ってもいい銃犯罪捜査本部の捜査官8名。これに加え、広島入国管理局松江出張所の入国管理官1名がこの作戦に参加する。
さらに、事前に陸海空の自衛隊を島根県周辺に展開させ、不測の事態を防ぐことになった。これらの根回しが全て終わったのはマスタープラン策定から二ヶ月後の8月であった。根回しが終了したという報告を受けた島根県警は、9月11日に第一段階の松江地裁に家宅捜索令状を請求。この請求は即日受理され、家宅捜索令状も発行がされた。この令状によれば捜索日時は9月18日となっている。つまりXデイは9月18日。第2次世界大戦終戦から実に73年のこの日、日韓が開戦する可能性が高くなった。
そして、9月18日を迎えた。この日は、秘密裏に、治安出動待機命令が発令された。
海上自衛隊は日本海で日米合同演習に。この演習には航空自衛隊も参加し、日米の空海合同演習となった。さらに日本海上空にはE767早期警戒管制機が展開し、常時警戒を行っていた。そして陸上自衛隊は新設された水陸機動団がこれまた新設された佐賀駐屯地で第一空挺団との合同演習を行っていた。韓国側も日米合同の演習があるとの情報を得ていたのでこの動きは特段問題にならなかった。実際は在日米軍司令官が前在韓米軍指令官で、韓国には辟易していたということも知らずに。
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06:30より行われた最終ブリーフィングで今回の家宅捜索の総指揮官である島根県警捜査一課長兼銃犯罪捜査本部長の梶山源治は、「今回の任務は危険が伴う。最悪、全員死亡という可能性だってある。しかし、それでも我々には故郷を取り戻すというこれまでにない素晴らしい任務に参加できることを誇りに思ってほしい。では、諸注意事項だが、あくまでこれは通常の家宅捜索と同様の法執行であり、極力実力行使は避けること。令状は竹島上陸後、武装警察の前で提示する。相手がこちらの指示に従わない場合は実力行使に出るそれから・・・・」
梶山の演説はこれから十分ほど続いた。
そして、08:00に出雲空港より島根県警とその応援部隊である大阪府警と福岡県警航空隊のヘリコプター計3機は巡航速度で約400km先の目的地へ向かって飛び立った。
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この日の09:00より島根県知事の緊急記者会見が開かれるという情報が入ったのは9月17日の21:00。その情報を受けて報道各社は記者を島根にどうにかして送り込んでいった。
島根県庁内にある記者会見場が開放されたのは出雲空港から銃犯罪捜査本部の合同捜査部隊が飛び立って30分後のことだった。
記者会見場内は開場直後から満席になるほど各地から記者が集まっていた。どこから聞きつけたのか中には外国系の記者もいる。前日の21:00に情報が入ったのにもかかわらずである。進行役が、まもなく時刻になりますといったら、それまでの喧騒が嘘のようにしんと静まり返った。そして、畑源の入室とともに焚かれるフラッシュの嵐。畑源は、フラッシュが落ち着くのを待ってから、「皆様遠路はるばる島根にようこそお越しくださいました。ご存知のように、島根県は竹島の観光地化に力を入れているわけではありますが、そんな中で、島根県警より見過ごせない情報が入りましたのでご報告申し上げます。詳しい情報に関しましては、島根県警本部長の高富よりお伝えいたします」
そう畑源が言うと同時に高富が記者会見場に入室してきた。彼は、畑源に一礼してから、話を始めた。
「県民の皆様におかれましては、これからお話させていただきます情報に慌てず、落ち着いて聞いてください。県内某所におきまして、不法な武装勢力が確認されております。銃犯罪捜査本部によりますと、武装勢力は多数の銃を所持しているとのことで、当県警のみでは対処できない可能性が高いため、福岡県警並びに大阪府警に応援を要請、両警察から応援が向かってきております。また、武装勢力の拠点は無人島であるとの情報を得ていますので、繰り返しますが県民の皆様はどうか落ち着いて行動してください」
高富がここまで言うと、記者から続々と手が上がったので、進行係が一人指名した。
「新日本テレビの権田と申します。無人島とのことですが、具体的な場所は?」
「隠岐郡隠岐の島町竹島です。」
この高富の返答に会場は騒然となった。
「竹島って、あの竹島ですか?」
「島根県警管轄内には竹島という名称の島は一つしかございません」
進行係が、挙手で質問するようにと言い、会場を落ち着かせる。では、そこの方。
「朝鮮経済日報のチェ・ソンヒョです。竹島の領有権は係争中では?」
「島根県警管轄内であるからこそ我々が動いているのです。松江地裁発行の家宅捜索令状もあります。」
ふむとチェは考えるしぐさをして、「外交的な判断はされたのですか?」と質問した。
この質問には畑源が答えた。
「島根県内で行うことに関してなぜ外交的な判断が必要となるのですか?では、次の人」
次に質問したのは島根日報の山本記者。
「島根日報の山本です。武装勢力とおっしゃいましたが、韓国の武装警察では?」
「その可能性も考慮しながら、慎重に捜査にあたっています。武装勢力がいかなるものであろうと、県警管轄内の不法行為は断固として認められません。以上です。」
こうして記者会見が終了した。各テレビ局は番組を中断して臨時ニュースに切り替えた。
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新日本テレビの報道を少し覗いてみよう。
「緊急速報です。島根県警が竹島に対して強制捜査を実施するとの情報が入りました。繰り返します。島根県警は竹島に対して強制捜査を実施するとのことです。あ、いま新しい情報が入りました。島根県警銃犯罪捜査本部は、竹島の韓国武装警察に対して、銃刀法違反、不法侵入などの疑いで家宅捜索令状を取得しているとのことです。村岡さん、この件、どうお考えになりますか?」
「そうですね。まず、我が国の領土である以上、島根県警の行為は全く違法性はありません。あくまで、日本国内で、犯罪行為が確認されたので、通常の警察業務の一環で、家宅捜索に踏み切ったということです。しかし、大局的見地に立ってみると、いささか強引で、外交交渉を待つといったことはできなかったのでしょうか。」
カリスマ弁護士との呼び声が高い、村岡と呼ばれた男はこう語った。
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「象の檻より緊急報告。韓国軍の通信量が平時に比べて3倍に達しています。国連軍管理下の部隊以外全てに緊急招集をかけている模様。」
航空総隊司令部は、この情報にも落ち着いて対処した。なぜならば、事前に航空総隊ひいては航空自衛隊にも島根県からの根回しが行われたのだから。その際、韓国軍が反撃に出る可能性が高いことも併せて伝えられた。
「小松のFに演習の名目で日本海側を戦闘空域哨戒させろ。ありったけの制空装備をつんでな。それから海さんと共同演習中の第三飛行隊の燃料補給のために404飛行隊を待機させとけ。」
仙石航太航空総隊指令官は部下に指示を出した。
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「第3護衛隊群、米軍との演習を中止。即応体制に入りました。第2護衛隊群、出動準備完了。現在待機中。第一輸送隊おおすみ並びにしもきた、陸自二個中隊をのせて待機中。掃海隊群、機雷戦発動準備完了。潜水艦隊、無制限潜水艦作戦準備完了。すでに釜山などの主要港近海に展開済みとのことです。さらに、第7艦隊がこちらの給油支援に当たるそうです。」
この報告を聞いた自衛艦隊司令官の北洋一海将は「ふむ、第7艦隊司令官もとうとう米太平洋艦隊司令部の米太平洋艦隊指令官にしびれを切らしたな」と、つぶやいた。そう、第7艦隊司令官のジョージ・タケバヤシは上級司令部である米太平洋艦隊司令部の司令官、オリヴィア・ワトソンのことが嫌いであった。そして、この気持は第7艦隊に所属する殆どの将官に共通するものであった。その理由は、女だからとかではなく、純粋に、無茶ぶり、オーバーワークを強いる、精神論という、大日本帝国軍も真っ青な指示をだすのである。今回も、何も手出しするなという命令が出ていたのだ。それどころか、海上自衛隊を監視し、韓国軍を攻撃するようなことがあれば、実力行使しろという命令を出していた。
米海軍、特に第7艦隊の将官たちは、70年以上前に、自分たちより圧倒的強国に喧嘩を売った日本を尊敬し、侮っていないのだ。しかも、それがあの、東郷平八郎の教え子たちなのだから。つまり、彼らは海上自衛隊を決して格下には見ず、同僚というような感覚で接しているのだ。だから彼らはプライベートでも仲が良い。ジョージと北もその一例で、しょっちゅう飲みに行っている姿が目撃されている。そんな彼らが、同僚のことを助けるな。同僚を裏切れ。などと上司に言われたらどう思うか。
このような無茶な命令が出されたからこそ、ジョージも日本側につくという決断ができたのかもしれないが。皮肉なことに。
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首相官邸では、総理が畑源知事からテレビ電話で報告を受けていた。
「まもなく、県警の捜査部隊が竹島に到達する見込みです。おそらく、激しい抵抗に合うものと思われます。現場部隊指揮官が、警察力で対処できないといった瞬間に、島根県と島根県公安委員会は自衛隊に対し、治安出動を要請します。法的には一切問題ありません。国内の問題は国内で片付ける。これだけのことなのです。」
「君の言いたいことはわかっている。このためにも、君を県知事選で推薦したのだからね。要請が入り次第直ちに自衛隊を出動させるよ。尤も、すでに大多数の部隊は出動体制を整えているが。」
「感謝します。」
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「まもなく、竹島上空に銃犯罪捜査本部の部隊が到着する見込みですが、そちらの様子はどうなっていますか。現場の槙村さーん。」
「はい、槙村です。現在私は島根県警本部前に来ているのですが、本部前は朝から厳戒態勢を敷いており、緊迫した状態となっています。」
「はいありがとうございました。現場の槙村さんでした。村岡さん、この先、どう動くと思われますか?」
「おそらく、韓国政府は日本を非難したうえで、実力行使に出るでしょう。そうすると、自衛隊が出動する可能性が高くなる。最悪の場合は。双方が冷静に、外交で対処してもらいたいものです。」
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「我が国の領土を強奪しようとする日本の帝国主義的行動に対し、強い怒りと懸念を表明し、断固たる措置をとると宣言する。」
韓国政府外交部の広報官は、この短い声明を発表した。
一方、日本政府は、島根県の記者会見を引き継ぐかのように、官房長官が後に、海老原声明と呼ばれる声明を発表する。ちなみに、この海老原は、発表した官房長官の名前からつけられている。
「竹島は我が国固有の領土であるので、法的な主権は我が国にあり、我が国の法律を純粋に運用している島根県警の行為は、一部で噂されているような、国の意向が絡んでいるなどということは一切なく、法治国家である以上、通常の法的手続きに則た、正式な捜査であり、一切問題ありません。つまりこれは、我が国の国内問題なのです。韓国政府の言うところの、日本の帝国主義的行動というような行動は一切とっておらず、勘違い甚だしく、貴国の行動こそ、法治国家としての行動を取る我が国に対する内政干渉にあたり、ここに強く遺憾の意を表明します。そして、我が国はこの問題に対して、憲法及び法律に則り、毅然として対処することを宣言します。」
この声明の後、韓国軍は全軍にデフコン1。戦時体制を発令した。
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「村岡さん、さきほどの日韓両国の声明、どう捉えられますか。」
「そうですねぇ。まず、韓国政府の声明は宣戦布告ともとれるので、慎重な対応が必要になります。対して日本政府の先ほどの発表は、日本は法治国家であるということを世界に宣言し、不安を払拭することができたのではないかと思います。いずれにせよ、非常に慎重な対応が必要となります」
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09:30、竹島から南方の上空70kmに島根県警の捜査部隊が到達した。梶山捜査一課長は無線を取ると、「総員、凡そ30分で竹島に到達する。ここはすでに韓国の制圧圏内といってもおかしくない。強く警戒し、任務にあたってほしい。以上だ。」と呼びかけた。
この無線を聞いた大阪府警から派遣されている「まいしま」に乗り込んでいたSATの姫山巡査長は、横に座っていた徳光義久巡査長に、「あの人随分張り切ってんなー」と声をかけた。
「あの人って誰だ?」
「あのほら、捜査一課長サマ」
「ああー、あの人ね。まぁ仕方ないんじゃねぇの。こんな大規模案件島根県警史上初めてかもしれんし」
「でも張り切りすぎじゃね?」
「確かにな~」
そう言いながらも、彼らは外に目を向け、警戒を怠らない。最も、機上から警戒したところで、できることは多くないのだが。
そうこう言っているうちに、竹島に到達。
「まずい。陸上から銃撃を受けている。とてもじゃないが着陸できる状況ではない。」
この機長の言葉に、まいしまの機内は大騒ぎになった。
「ちどり」でも同様の報告を機長から受けた梶山は、「機上からの反撃は可能か」と「まいしま」、「とびうめ2号」のSAT隊員に聞いた。
「機上からの銃撃は可能ですが、当たるかわかりません。狙撃手がいるわけではないので。しかも機上からの射撃は訓練でも行わなので」
「5分だけ粘ってみよう。」
「5分間、機上から反撃し、着陸可能になれば、そのまま着陸し捜査にあたる。不可能な場合は、撤退し自衛隊に引き継ぐ。こういうことですね」
「ああ。頼む」
「まいしま」、「とびうめ2号」から、地上に向けて射撃が行われる。成果はよろしくないので、そこら中に撃ちまくるという荒業に出るも、韓国側は遮蔽物に隠れるなどし、難を逃れていた。
この状況を見た梶山は、撤退の指示を出した。幸いにも、ヘリは被弾することなく、無事に撤退することができた。
ちなみに、撤退を指示する数分前に、韓国空軍の戦闘機がスクランブル発進しており、非常にギリギリのタイミングで撤収することができた。
彼は、島根県警本部と島根県県庁への直通回線にて失敗を報告。この際、知事から、出雲空港で給油の上、海上自衛隊の誘導に従い、おおすみへ向かうよう指示がなされた。
その後、直ちに島根県警本部、島根県知事、島根県公安委員長の連名で、防衛大臣に対し、自衛隊の治安出動を要請。即時受理がされた。
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【治安出動命令発令!繰り返す、治安出動命令発令。各員は、警察官職務執行法に基づき、状況に対処せよ】
「よし。全員聞いたな。上がっている各機に通達。警告射撃までは現場指揮官の判断にて許可。すべて追認する。撃墜は、警告射撃に従わない場合ならびに当該機の武器使用を確認したときのみに限定。AWACSにも通達」
「「はっ」」
勇ましい部下たちの返事に、仙石は安心した。
『こちらメタルリーダー、国籍不明機目視確認。韓国機です』
戦闘空域哨戒に出ていた小松の306飛行隊所属機からの連絡が、航空総隊司令部の日本海第二セクターに入った。
「日本海第二セクターです。国籍不明機は韓国機であることを確認したとのこと」
「一応警告させろ。警告に従わなかった場合は撃墜を許可」
『メタルリーダー、警告を実施後、指示に従わない場合、撃墜を許可する』
『了解、警告を実施後、指示に従わない場合、撃墜する』
しかし、警告を実施するまでもなく、メタルリーダーの『FOX3』の宣言が入った。『FOX3』は、機体に取り付けられているバルカン砲を発射するときに国際緊急周波数で宣言をするものとなっている。
『メタルリーダー、状況を報告せよ』
『韓国機が発砲したため、正当防衛射撃を実施しました。ターゲットキル』
『こちらアスター、シックスオクロックハイ、ツーターゲット、接近中』
『メタルリーダー了解』
アスターは、浜松基地所属のE767早期警戒管制機で、この日の朝から上空監視を実施していた。
そして、仙石はさらなる指示を出す。
「小松から応援を上げろ。百里からも向かわせろ。千歳にゼロワンスクランブル」
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「こちら槙村です。ただいま島根県警本部から緊急発表があるとのことで、再び島根県庁内の記者会見場に来ております。あ、いま高富本部長が入室してきました。後ろに見えるのは・・・畑源知事です。何があったのでしょうか。まもなく会見が始まります」
「県警銃犯罪捜査本部は、竹島への家宅捜索を試みましたが、韓国側の強い抵抗にあい、失敗しました。県警並びに県庁は、本件に関し、自衛隊法81条第1項に基づくところの、治安維持上重大な事態につきやむを得ない場合に認定し、内閣総理大臣に対し、治安出動を要請しました。要請は即時受理されました。」
この、高富本部長に続き、畑源知事が話し始めた。
「県民の皆様、どうかご安心ください。治安出動を要請したのは、当県の治安が県警のみでは維持できないと判断されたからです。治安を守るために、自衛隊に出動してもらうのです。すでに一部の部隊は行動を開始しているそうです。迅速な行動により、島根の治安は取り戻されます。」
そう言うと、二人は記者会見場から出て行った。
「なんと、島根県は治安出動を要請したとのことですが、法律的な問題などはどうなんでしょうか。スタジオにお返しします。」
「槙村さんは、法律的な問題について伺いたいとのことでしたので、まずはそこから聞いてみたいと思います。村岡さん、どうなんでしょうか」
「法律的な問題は一切ありません。すべて、合法的な手続きのもとに成り立っています。まさか島根県が伝家の宝刀ともいわれる治安出動を要請するとは思いもよりませんでしたが。」
「そうするとやはり、外交の問題ですね。」
「ええ」
「ということで、元外交官の、保本さんにお越しいただいております。保本さん、早速なんですが・・・」
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「治安出動命令発令っ」
「よし、おおすみ、しもきたが来るまで制海権を確保だ。ほーらいわんこっちゃない。早速お出ましだ。」
第3護衛隊群群司令の東栄弘毅はそう言い、「アメさんとのデータリンクは」と艦隊幕僚長の礼堂祐介に尋ねれば、「万全です」という頼もしい返事が帰ってきたので、大きく頷き、指示を出し始めた。
「全艦に通達。島根の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよだ。アメさんにも通信を送っておいてくれよな。それから、Z旗を掲げよ」
「バリーより返電。第7艦隊第15駆逐隊は貴艦隊を全力で支援す」
「じゃあ遠慮なく使わせてもらうぞ。っと、その前に空自の第3飛行隊が攻撃するんだったな。目標振り分けはその後にバリーが行う。艦隊各艦は、割り振りに従い、全力で迎撃せよ」
「目標艦隊、まもなく本艦隊の攻撃圏内です」
「目標艦隊の編制は?」
「韓国海洋警察庁の警備艦が4隻、独島級強襲揚陸艦1、世宗大王級駆逐艦1、忠武公李舜臣級駆逐艦2です」
「やっこさん本気だな。うちときたら、1個護衛隊群に1個輸送隊しか派遣してこないってのに」
「まぁまぁそうおっしゃらずに。15駆の支援が受けられるのはありがたいことですよ。それに、空自の第3飛行隊が来てますし。6機編隊が1機あたり4発ずつ、計24発発射すれば、下手すりゃうちの艦隊のお仕事なくなりますがねぇ」
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『こちらアスター、目標艦隊、攻撃可能圏内、順次攻撃を開始せよ』
『ポニー1了解、2,3,4,5,6』
コールサインポニー、三沢基地第3飛行隊所属のF2戦闘機6機が、約10mの低空から、お腹に抱えた空対艦誘導弾各4発ずつ発射した。
『ミッションコンプリート、帰投』
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「レーダー使用不能!?ECMを受けました。復旧まで数分かかりますっ」
悲鳴のような報告が世宗大王級駆逐艦のネームシップ世宗大王の艦橋に入った。
「日帝どもの攻撃か、畜生、あいつらは人じゃないのか?」
しかも、ご丁寧にポニー編隊が空対艦誘導弾を発射する直前からである。
「右舷より多数の高速飛翔体接近!」
「迎撃せよ」
「手動でですか?」
「それいがに何があるっ」
「迎撃間に合いません、衝突コース」
「衝撃にs」
韓国海軍初のイージス艦は、航空自衛隊の電波妨害と空対艦誘導弾の波状攻撃を受けてあっけなく轟沈した。一緒に行動中だった海洋警察庁の警備艦と独島もである。
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「なんか、あっさりすぎやしなか?」
「まぁ計24発の空対艦誘導弾をレーダー無しで迎撃するなんて至難の業ですから」
「てかいつの間に電子戦機展開させてたの?」
「さぁ。我々も情報を受けたのはついさっきのことですから」
こんな会話が第3護衛隊群幕僚長と群司令の間で繰り広げられたのを韓国軍は知らなかった。
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「現在、本艦に向け島根県警航空隊「まいしま」が飛行中です。もうまもなく到達する見込みです。」
「着艦誘導には細心の注意を払え。あちらさんはヘリ空母への着艦なんて初めてなんだからな」
「はっ」
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「現在までに入っている情報をまとめますと、航空自衛隊の戦闘機により、韓国海洋警察の警備艦4隻、韓国海軍の強襲揚陸艦?を一隻、駆逐艦を一隻撃沈したとのことですが、ここで軍事ジャーナリストの田造中治さんにお越しいただいています」
「はい、まず、今次作戦における戦果としては上々でしょう。こちらの作戦投入戦力はF2戦闘機が6機、F15が10機前後、YS11EB電子戦機1機、E767早期警戒管制機1機、1個護衛隊群に1個輸送隊。しかし、この護衛隊群は作戦に参加はしたものの武力は行使していない。実質的には、航空自衛隊のみで作戦を完結させてしまったと言っても過言ではない。」
「いろいろと気になりますが、まず、航空自衛隊のみで完結させてしまったということですが、一体どういうことでしょう?」
「まず、日本海上空において敵航空戦力を航空自衛隊の早期警戒管制機E767の適切な指示によって制空戦闘機であるF15が排除し、制空権を確保。その後、YS11EB電子戦機が韓国軍のレーダーに対し電波妨害を実施。現代戦においてレーダーが効かなくなったということは、目が潰されたのと同様です。ここでF2戦闘機が空対艦誘導弾を食らわせて終わりです。」
「つまり、非常に簡潔に済ませるような作戦であったということですか?」
「まぁそういうことですね」
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「まもなく竹島付近に到達する。接眼による上陸は困難なため、ヘリによる揚陸を実施する。」
「捜査本部の皆さんもそれでよろしいですね?」
「プロフェッショナルの皆さんにお任せします」
ヘリにより、西部方面普通科連隊の面々とともに竹島に上陸した島根県警銃犯罪捜査本部の捜査官8名は、彼らに続いて竹島の韓国警備隊宿舎などに突入し、家宅捜索令状を掲げ、「島根県警捜査一課だ。この場から動くな。諸君らには銃砲刀剣類所持等取締法違反、刑法130条不法侵入などの疑いもかかっている。」「あと入管法の不法滞在も追加で」
そして、韓国の竹島駐留の武装警察官らは島根県警捜査官の手により逮捕され、そのまま連行された。
こうして、竹島の実効支配を、島根県の手により「合法的に」取り戻した。
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それから数ヶ月が経ち、竹島は賑わっていた。建築業者で。
島根県の進める、県立公園化までの道程はまだ長い。